一、紘斗と和葉
いつからだろう。
あの子を意識するようになったのは。
あぁ、そうか。初めて話した日からか。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「いいよ~。俺も終わったとこだし」
イベントデートをしたあの日以来、平日は放課後に、二人きりでいることが多くなった。
「紘斗君、最近執筆してる?」
彼女の名前は、二木和葉ちゃん。
二年生になってからのクラスメイトであり、俺と同じサイトで、ネット小説を書いている。
「最近スランプでさ、書けてないんだよね。それより和葉ちゃん。最近、女の子たちから、心配されてるよね。俺のせいで」
「気にしすぎだよ。確かに、『一ノ瀬と付き合っているとか、大丈夫なの!?』なんて言われてるけど、私は、紘斗君が好きだし、気にしてないよ」
「それならよかった」
まだお互いに『付き合っている』わけではないが、『友情の恋愛寄りのお付き合い』をしているわけなので、正確には、彼氏彼女の関係ではない。
周りの、特に俺が今までナンパした女の子たちには、直接謝罪をして、一応和葉ちゃんと付き合い始めたと説明をした。
それからだ。
和葉ちゃんへの心配の眼差しと、言葉が増えたのは。
仲良くなってすぐに、心配の言葉等々はあったらしいけど、その時以上に増えたのだそう。
「紘斗君、これからドーナツ食べに行かない? 今、夏休み前のセールをやってるみたい」
「行こっか。ドーナツ食べたら、スランプから脱け出せるかも」
***
こうして話せるなんて、あの時は思わなかった。
和葉ちゃんも俺を好きになってくれたようで、今はこうして話せている。
ドーナツのお店で、いくつか選んで。店内で食べることにした俺たち。
「それでね。和佳奈も、七松君も……。紘斗君、聞いてる?」
「えっ、あ、うん」
「聞いてなかったでしょ~。和佳奈も七松君も、私たちの関係に驚いていたんだよ」
「七松までもか。まぁ、驚かれて当然だし。それよりさ、七松と逢坂さんって、いつから付き合ってんの?」
「一年生の文化祭からだよ。私たち、一年生の時もクラス一緒だったの。文化祭で『シンデレラ』の劇をやったんだけど、シンデレラと王子様役に、和佳奈と七松君が選ばれて。打ち上げで、七松君がクラスメイトの前で告白したの」
マジか。七松、大胆過ぎるだろ。
そっか~。そんなことをしていたのか~。
うーん。俺には、そんな大胆なことできないわ~。
とか言いつつ、ナンパしまくってたけどさ。
「和葉ちゃんはさ、憧れの告白シチュある? まぁ、今度は和葉ちゃんからの告白になるけど」
「告白シチュ……。考えたことないかな。小説の中なら、考えちゃうけど」
「純粋だよね~。和葉ちゃんは」
今日も思う。
俺の彼女は、和葉ちゃんで良かった。って。




