ポニーテール日和
暑いので髪を括ることにしました。
冷却魔法使えばどうということのない気温でしたが、魔術書を読むのに邪魔だったこともあって。
髪を適当にひとまとめにして括ります、世間一般的にポニーテールと言われる髪型です。
包帯のない首元に風が吹き、少しだけ涼しくなったような、そうでもないような。
ぼんやりと日陰から日向を見つめると、日向は随分と明るくて、ずっとみていると目眩がしそうなほど明るくみえました。
目が痛くなってきたので目をそらしましたが、明暗の変化についてこられなかった視界が一瞬奇妙に歪み、思わず小さく声を上げてしまいました。
「どうしたの?」
「いえ……なんでも……」
日向で剣の素振りをしていた彼がこちらに視線をよこしてきたので、なんでもないと首を振りました。
首を振ると同時に後ろにまとめた髪が揺れるのがわかりました。
少し、重い。
もう少し下の方で括ればよかったかもしれません、そう思いながらも直すほどのことではないのでそのまま放置でいいでしょう。
頭を振らなければ重さも感じませんので。
目を閉じて数秒、明暗に狂った目を休ませ、暗さに慣れさせる。
目を開くと、視界は正常に戻っていました。
これでよしと魔術書に視線を戻そうとしたところで、日向の方から視線を感じました。
「どうかしましたか?」
「髪……」
「髪? ああ、暑いし邪魔なので括ったんですよ」
それがどうかしましたかと首をかしげると、彼はなんでもないと静かに首を横に振りました。
なら別にいいのですけど、そう思って私は魔術書に視線を戻しました。
というのがつい先日のこと。
その辺りから、彼がなんかおかしいのです。
会うたび会うたび、今日もいつもの髪型だねと小さくぼやいたり。
こちらを見ては時々残念そうな顔をしてみたり。
……ポニーテール、好きなのでしょうか?
いえ、それは多分、というかほぼありえないんじゃないだろうかと思います。
だって彼、そういうことには無頓着ですから。
彼の頭にあるのは自分が強くなることだけ。
だから私がどんな髪型してようが、御構い無しでしょう。
だから、今日も私はいつもの髪型で魔術書を読んでいます。
気温は高いですが、冷却魔法で周囲の空気を冷やせばそれほど問題はありません。
「休憩……あっつい……」
この気温の中、剣を振り回していたというのに、さほど汗をかいていない彼がそう言いながら日陰に入ってきました。
「お疲れ様です」
私は冷却魔法を少し強めました、ついでに風魔法も発動させ、少しでも涼しくなるように空気を循環させます。
彼はベンチのわきに置いていた水筒から水を飲み、一息ついたようです。
「ここ、涼しいね」
「はい、魔法でこのあたりの空気を冷やしてるので……」
ついでに闇魔法で日光を遮断したりもしています。
だから暑くないのか、と言われたので無言で首肯しました。
「そう……」
彼は若干残念そうに見える顔で小さく呟きました。




