ヴァルトのぼうけん
そして、二人が乗る船は青い青い海の真ん中へ。
ヴァルトが空中に真っ黒な羽虫の死骸をばら撒くと、銀色の羽を生やした綺麗な魚がキラキラと集まって、黒い羽虫の死骸をパクパクと食い尽くしていきます。
黒い羽虫をたらふく喰った魚たちの腹は風船のパンパンに膨れていました。
そのうちの一匹が、更に羽虫を食べようと勢いよく水面から飛び出したその時。
ぱぁん、と小さな子供が手を叩くような音を立てて、ヘリウムガスがこれでもかと吹き込まれた風船のように、その魚は破裂してしまいました。
ホウセンカのように勢いよく飛び散った銀色の魚の破片は、弾丸のような勢いで飛び散って、周囲にいた他の魚達に勢いよくぶつかりました。
魚の破片にぶつかってしまった他の魚達も、ぱぁん、ぱぁん、と音を立てて次々と破裂していきます。
その様子にヴァルトはあっ、と声をあげました。
ヴァルトの隣に座っていたキャラメリーゼは破裂音に少しだけ目線を動かしましたが、焦点の合わない目は虚ろなままで、何を言うこともありませんでした。
波の音しか聞こえない静かな海に、小さな子供達が精一杯拍手しているような賑やかな破裂音が響いて消えていきます。
ヴァルトはその光景を見て不満げな顔をしました。
せっかく引き寄せた食材がなくなってしまったからです。
と言っても、いくらパンパンに太っていたとは言ってもその腹の中身は全て黒い羽虫でした。
まともに食べられる部分なんてほとんどなかったのかもしれません。
拍手のような音が鳴り止んだ頃、遠くの空から可愛らしい猫の鳴き声が聞こえてきました。
ヴァルトが空を見上げると、白い鳥がたくさん飛んでいました。
猫のような鳴き声はどうやらその鳥達の鳴き声であるようです。
白い鳥達は赤い肉片となった魚達の身体を嘴で器用に摘んで美味しそうに食べています。
その白い鳥のうちの一匹が、二人の乗る船の船首に止まりました。
ヴァルトはすかさず鋼色に輝く鉈を手に取り、その白い鳥を一刀両断!
綺麗に真っ二つになった鳥の羽を丁寧に綺麗に毟って、血を抜いて綺麗に洗ったあと、赤い炎でこんがり焼きました。
鶏肉がじゅうじゅうと焼ける音と匂いにヴァルトの口の中はよだれでいっぱいになって、今にもあふれそうです。
こんがり焼きあがった鳥の半分をヴァルトはキャラメリーゼの口元に運んで食べさせます。
もぐ、もぐと、ゆっくりと力なく鶏肉を食べ始めたキャラメリーゼにヴァルトはすこしだけホッと息を漏らして、自分のぶんの鶏肉にかぶりつきました。




