バレンタイン(ゴリラ)
「そういえば、アンタあの子からチョコ貰えたの?」
月の無い深夜に老人は自らの孫にそう問いかけた。
「……貰ったよ」
しかし、孫の顔は何故か浮かない。
意中の少女から念願のチョコを貰えたのというのに、全く嬉しそうな表情でなかった。
「あら、良かったじゃない」
「……頭にバナナ乗せたゴリラ型のでも?」
「……あらぁ」
孫があの少女から渡された可愛らしくラッピングされて箱を開けると、中に入っていたのはゴリラだった。
しかも頭にバナナを乗せているのだ。
箱を開けて数秒、彼は自分の部屋の中でうちひしがれていた。
貰えたこと自体はかなり嬉しかったのだが、ゴリラ型とは予想外もいいところであったのだ。
しかもやたらリアルだったのである。
なんでそんなものを寄越してきたのか、全く意味がわからない。
「あれ絶対、あの雑貨屋で知恵の輪買ったついでだ……」
彼女がよく行く雑貨屋に確かそんな感じのチョコが売ってたはずだ、と孫は思い出す。
リアルな動物の形をしたチョコレートが売っていると少し前に話題になっていた気がする。
ライオンとかシマウマとかワニとか狼とか色々あるらしい。
だが、何故よりによってそんなものを選んだんだ。
もっとまともなものだってあっただろうに。
そして何故、ゴリラ。
自分はゴリラに似ているだろうかと孫は考える。
どちらかというと孫は華奢だった。
ついでに言うと美しかった母親似でもある。
ゴリラらしさはほぼないといっていいだろう。
だとすると性格がゴリラなのだろうか?
全然心当たりがないと孫は考える。
しかし実際どうなのだろうか?
「ジバ様……僕って……ゴリラっぽい?」
「ゴリラ要素はほぼないと思うわ。あんまり深く考えない方がいいと思うわよ? 多分深い意味とかないだろうし」
だといいんだけどと孫は苦々しい顔のままそう言った。
暗殺者の孫の話でした。




