一方その頃
「邪魔、どけ。殺すぞ」
「珍しいな迦楼羅よ。侵入者は見境なく皆殺しにする貴殿が、同じ侵入者である私を無視してあの男を追おうとするなぞ」
「うるさい、黙れ」
「……何故あの男にそうも執着する?」
「あいつ、きらい。だから殺す。絶対に殺す」
理由は何となく分かるが、それでも聞いてみたいと思った。
聞かねばならないと思った。
「嫌いなのは他の侵入者もだろう?」
「うるさい、やかましい。どけ」
殺気立った迦楼羅が鉈を振り回し、そばにあった棚を切り倒した。
「何故嫌いなのか。その理由は?」
それでも問いかけはやめなかった。
「むかつくから。むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく……なのに、どうして、わたしは」
「……貴殿はおそらく……カルラの中の憎しみと怒りが凝り固まって生まれた存在なのだろう……いや、きっとそれを望んだ私の願望から生まれたのであろう」
「わけわかんない。とりあえずどけ」
「通さぬよ、ここは。……この世界の貴殿らの本体が私の世界の彼女なのか、あの男が私とは別の世界の住民なのかはわからずじまいだが……わかるはずもないが……いや本当はわかりきったことなのかもしれぬが……どちらにせよ、通さぬ」
「そうか、なら、死ね」
迦楼羅が振りあげた鉈を避けようとして……意識も体も追いつかない。
肩から腹まで、斜めに激痛が走った。
「……あ、ぐ」
痛みに呻く、それでも耐える。
この程度の痛み、自分が殺された時に比べれば……!!
足元に力を込め、迦楼羅に向かって飛びかかるような形で倒れこむ。
そして他のかるら同様、自分の母親と同様に細い迦楼羅の胴体に両腕を絡ませ、抑え込む。
「離せ」
「……断、る」
迦楼羅は舌打ちと共に暴れ出す。
それでもしがみ付いて離さない。
何となくそんな気はしていた、膂力自体は自分とそれほど変わりないのだろうとは。
「なあ……」
暴れる迦楼羅に向かって、独り言のようにつぶやいた。
「……?」
「やはり……にくんでいるのだな……とうぜんで、あろうな…………ははうえ……」
意識が薄れていく、血が流れているせいなのか寒くなってきた。
それでも伝えなくては、たとえ分身であるとはいえ、これが最後の機会なのだから。
元の世界で既に死んでいる自分に残された最後の機会なのだから。
「……お前、何を言って」
「うまれてきて、ごめんなさい……くるしませて、ごめんなさい…………ああ、やっと……いえた……」
ずっと前に言うべきだった、それでも言えなかった。
「何の話をしている……? お前は、誰だ?」
「こちらのはなしだ……きでんには……おそらくなんのかんけいも、あるまい………それでも……ずっとずっと、あやまりたかった……」
自分の出生、その背景を知ったその瞬間から、ずっと。
「だから、何の話だよ!!」
「きでんは……わたしのははではない……だが……もし、わたしのははになることになることがあるのであれば………そのまえに……ころせ」
どうしてそうしなかったのだろうと何度も口にしかけた。
結局、一度もそんな事は、聞かなかったが。
「何を言っているんだお前は!!」
「ちゅうこく、だ。わたしは……どのせかいでも、うまれるべきそんざいでは……ないからな」
わからないだろうが、少しだけ耳に入れておいいてほしい。
「だからわかるように話せよ!」
言うべき事は全て言い終わった、もう心残りはない。
ああ、でももう一つだけ。
「ああ……わたしなんて……うまれてこなければ……よかった…………ほんとうは、ほんとうに……ずっと、そうおもっていた、のに……」
――誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう。
まだ幼かったあの日にその言葉で私を雁字搦めに縛って、自己否定を囁くこの口を自ら塞ぐ羽目になったその言葉を言い放ったあの愚か者の無事が……知りたかった。
何十年も死なずに結局この世界で生き続けてきた理由は、きっとそれもあったのだろう。
もう帰る身体などないというのに。
もう二度と会えないのに。
……思えば、自分のその生まれた理由全てを知っても、それでもこの存在を必要としたのは……あいつだけだったか。
最後に迦楼羅の叫び声が聞こえた気がした。
カルラの世界のとあるシーンより抜粋。
キャラ設定っぽいものの一部がここに置いてある↓
http://gacha.work/gachas/kjfxpg




