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第1部 開拓者達 第4章 武蔵編 第1話 赤城山

毛野荒刀が最初に訪れたのは、赤城山の麓でした。

 毛野荒刀は豊城入彦命にお伴して日高の郷に着いた時、東側に聳え立つ山を眺めて故郷を懐かしく思った。毛野荒刀が育ったのは紀の国名草郡大屋郷(現在の和歌山県和歌山市宇田森辺り)で、その地には紀ノ川が流れ、北側には和泉の国と紀の国を結ぶ和泉山脈の雄ノ山峠があり、南側には紀ノ川を挟んで高積山が望めました。その風景を思い出したのです。利根川が紀ノ川に見え、聳え立つ山、赤城山より高さは低いですが高積山に見えたのです。今回、毛野荒刀は豊城入彦命の指示で新天地を求めて、蒼海宮を出発し、利根川を渡り、聳え立つ山の麓に来ました。この地が豊城入彦命様の支配下になると思うと、この山をどのように名付けようかと考えていました。また、この山には桑の木が自生していて、その桑の葉を主食とするカイコが生息していた。毛野荒刀がこの山の麓に着いたとき、山から降りてくる地元の人にであった。

「何かを持って 山から降りてきたのですか」

「蚕の幼虫だよ」

「その幼虫をどうするのですか」

「山から取ってきた桑の葉を食べさせる」

「蚕の幼虫が桑の葉を食べると」

「蚕の幼虫は蛾に成虫するまで繭で体を保護するのだ その繭を糸にするのさ」

「その糸は」

「その糸を織機に掛けて 絹織物に」

 絹織物の生産起源は紀元前三千年前の中国に始まったと言われ、日本には蚕を家畜し、絹織物として衣服を作る製法が、弥生時代中期には朝鮮半島から伝わっていました。

「あなたはどこから来られた」

「日高の郷からです」

「見られないお方だ」

「大倭国から 新しい国を作るため日高の郷に」

「それでこの地も支配しようと」

「そのようにすることになると思います 今ではないですが」

「では ここで作った織物をその大倭国に」

「そのようなことも有り得ると思います 話が変わりますが この山の名前は」

「この山か 久呂保クロホの嶺と 私らはそう呼んでいる」

 古代、赤城山は黒い檜の山とされ、赤城山は阿蘇山と同じでカルデラになっていて、頂上付近にカルデラ湖、大沼があり、最高峰は黒檜山となっています。古代から黒に関係していたのです。豊城入彦命がこの地に来て、「黒」ではなく「赤」とした。古代では「黒」は日暮れ、「赤」は日の出を表していたと思われます。

「久呂保の嶺 どうも豊城入彦さまの国にある山としては相応しくない」

「久呂保の嶺はわしらの山の神 それを変えるのか」

「赤城山にしよう 赤は豊かさをもたらし 城は豊城入彦命さまの一字でもあり 紀の国に通じる」

「では 我らの神 山の神ではなくなるのか」

「それは今までの神を崇拝すればいいと思う」

 後に赤城山に神社がたてられました。その神社の主祭神は赤城大明神となっています。この神は昔から伝えられた山の神でした。


毛野荒刀は、豊城入彦命の配下になるべき土地へと。

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