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脅威と狂喜


「この世界ではある奇病が流行っている......。」


紅茶を注ぎながら、日常会話の様に話す。


「脳死......珍しくはないかも知れないけど、その数が問題。」


美咲さんはゆっくりと落ち着いた口調で話す


俺が戸惑っているのを、落ち着かせる様に......。



「数週間前から一日に何百件もの事例が報告される様になった、まるで何かのウィルスの様に......調べた所その殆どの症例で、共通点がある事が分かった......記憶の混合......。」


カップを持った手が止まる。


「初めて会った人、体験した事ない物、行った事のない場所......それらを言い当てたの......テレビやラジオ、携帯等で知り得た情報が無意識の内に記憶され、その記憶が混ざるから、混合と言う表現をしているけど......違う......。」



..............。



「混合ではなく......統合......つまり、全てが自分自身の記憶であり体験......なら、その自分は何処に......並行世界......。」


「......なんで、俺が......別の世界って......?」



「......忘れるな......見た事も聞いた事もない風景を思い出す。そして強く、私が私自身に忘れるなと言ってる......貴方や彼を。」


「バレてたか。」


『アイツ』はソファに座り俺のカップを取ると飲み干した。



「お腹の傷は大丈夫なの?」


「渡ってもいないのに、何処まで知ってる?」


「ざっくり言えば、全部ね。」


この世界の美咲さんは今までの事を全部覚えている。


隣に座る『アイツ』さえ予想してなかったのか言葉を失っていた。



「パズルみたいな物よ、ピースを集め繋ぎ合わせた。」



「アンタなのか、俺が探していた美咲多江子は......アンタが並行世界を統合しようと決断したのか?」



並行世界の統合『アイツ』の目的は全てを一つにする......。



「傷の手当てをしましょう。」


美咲さんは立ち上がり隣の部屋へ。



「お前の目的は......世界をひとつにする事なのか?」


「......それはムリだ、俺が狙っていたのはここからだ。ここから先の世界......可能性の変わった世界。」


「どういう意味だ?」


救急箱を持った美咲さんが服をめくり銃創を見る。


「酷いわね。」


「......優しくたのむ。」


「直ぐ、楽になるわ......。」


美咲さんの手にはハサミが握られて『アイツ』の喉に刺さる。


「がぁぁぁ!!!」


「大丈夫よ、直ぐ終わるから。」




俺の顔を見て美咲さんはそう言った。


抜いた首から飛沫(しぶき)をあげて


『アイツ』の血が......俺の身体中に。



「さぁ、行きましょ。」


彼女は(わら)った






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