終着への一歩
元の世界と変わらない。
でも......どこか......何か変で。
言い様のない不安が、胸を締め付けた。
いつもの大学、いつもの部屋。
ノックする前に確認したネームプレートに名前はなく
俺は製薬会社へ向かう事にした。
入り口は厳重に警備され、不用意に近付けず
美咲さんが出て来るのを待つしか出来なかった......。
「ここで指でもしゃぶってるつもりか?」
「お早い登場だな。」
「......隠れる必要は、もうないだろ。」
「......並行世界を渡っても、キズは治らないんだな。」
「心配か?安心しろ、お前の脳がパンクする迄は持つさ。」
こんなにゆっくり話すとは考えてもいなかった。
『アイツ』は俺で、俺は『アイツ』で、
憎むべきなのだろう、怒るべきなのだろう、
だけど、感情をどこに置けばいいのか......。
「......俺の世界......」
『アイツ』が突然喋りだした。
「俺の世界は、壊れていた......何もかもが管理され、機械の様に人が動き死んでいった......子供は補充品でしかなく、そこに愛情なんてものはなかった。」
「そんな世界だから、助けろって言うのか?」
「実験道具なんだよ......並行世界を観察する為、それが俺だ......見た事もない世界、見た事もない人々、魅了されるのは当然だった。」
「だから、世界を渡ったのか?」
「......かもな......。」
「なんだよそれ!同情でもして欲しいのか!?可哀想だねとでも言って欲しいか!?お前は、もう取り返しがつかないんだ!俺だけでなく......めぐまでも......!!」
理由なんて......聞きたくもなかった......。
入り口から出て来る人を見間違うはずがない。
俺は走って追い掛ける。
「美咲さん!!」
振り返えり俺を見るなり、彼女は......嗤った......。
「家に帰る所なの、来る?」
言われるがまま、美咲さんの後を付いて行く。
『アイツ』はいつの間にか消えていた......。
タワーマンション、見覚えがあった。
ロックスターになった世界で俺が住んでいた場所。
玄関の扉を開け、リビングのソファに座ると訊かれた。
「貴方は......どの世界から此処へ来たの?」
俺は何も喋っていない......。
美咲さんの父親の名前さえ告げていない......。
この世界は......今までとは......違う......。




