絶対安静生活~リューイとバカンス
絶対安静生活中。
だいぶ体は良くなってきた。
動いてもほとんど痛みを感じない。
でも、過去保護なバッカスにいわれてベッドで横になっている。
バッカスが始終はりついているから。
このホテルからでることも出来ない。
これって過保護な看病を超えて・・・
軽い軟禁なんじゃないかと思えてきた。
あたしは高級ホテルの最上階をトコトコ歩く。
この階なら歩いていてもバッカスに文句をいわれないから。
ベランダに出ると。
プール脇でカウチに座ったリューイ。
彼はジュースを飲んでいた。
そうなんです。
あたし達が借りている部屋には、屋上プールがあるんですよ。
まだあたしは一度も泳いだことがないんだけど。
体に障るからと、バッカスに禁止されているから。
「お、マリアっちじゃん」
「やぁ、リューイ」
「でもいいのー?プールにきちゃってよ。バッカスが心配するんじゃない」
チューっとストローでジュースを飲んでいるリューイ。
変な浮き輪をして、変なサングラスまでつけてる。
リューイはほんとチャラいな。
あたしの中で彼の「チャラ剣士」度があがった。
「いいの。部屋の中にいると息がつまっちゃうだもん」
「へぇー。でっ、バッカスはどこよ?あいつが目を離すとは思わないけど」
「バッカスは王城よ。魔王討伐に関して何か会議があるみたい」
「へぇー。よくバッカスがマリアを置いていったじゃん」
数時間前を思い出すと大変だった。
王城の使いは勇者のバッカスを呼びに来たんだけど・・・
バッカスは「行かない」と言い出した。
あたしの看病があるからと。
「変わりにメギドが行くよ」と、王城の使いを説得しにかかっていたけど。
結局上手くいかなかった。
「勇者パーティー」ではなく、勇者様をお呼びだということで。
相手の使者の粘りもあり、バッカスは王城に連行されていった。
あたしはひやひやしてみていた。
もしかしたら、バッカスが無茶なことをするんじゃないかと思ったけど・・・
彼は冷静に従った。
良かった。
変なことにならなくて。
王城とは良い関係を築いていかないとね。
「勇者なんだから、バッカスも使命をはたさないと。
このホテルのお金も王城からでているんだから」
「よっかったじゃん。久々に自由に出来て。スラちゃんもいないみたいだし」
そう。
皆にはスラちゃんを紹介した。
さすがにあれだけの騒ぎがあったえスラちゃんを隠し通せなかった。
でもスラちゃんのことは勇者パーティーだけの秘密。
勇者パーティーに魔物がいるのは醜聞が悪いから。
幸いスラちゃんは気配も、姿も消すのも上手いから問題ない。
因みに、スラちゃんは今ベッドでねている。
あたしが部屋を出るときは、「すーすー」と寝息をたてていた。
「マリアっちも日光浴しちゃいなよ。太陽の光はいいじゃね」
「そうね。じゃあ、お言葉に甘えて」
あたしはカウチに座る。
リューイは、腰につけているアイテムボックスからジュースを取り出す。
皆アイテムボックスを腰につけている。
「ほらよっ、ジュース」
リューイが飲み物を投げてくる。
おっとっと。
危ない。
もう少しで落とすところだった。
「ナイスキャッチ」
リューイは笑っている。
いつも楽しそうだなー、リューイは。
「もうっ、普通に渡してよ」
「いいじゃん。マリアっちの健康度合いを確かめたけど、だいぶよくなったみたいじゃね」
「ええ、大丈夫。バッカスは信じてくれないけど・・・」
「そりゃ無理だろ。バッカスはバッカスだから。ほら、ストローよ」
「ありがとう」
あたしはジュースにストローを刺し、チューチューする。
はぁー。
美味しい~。
甘いオレンジジュース。
バッカスが近くにいると栄養ドリンクを勧められるから。
こういった娯楽ジュースは飲めなかった。
「良い飲みっぷりじゃね。まぁ、ぼーっと太陽の光をあびるといいよ」
「そうするね」
あたしはカウチに寝そべって太陽の光を浴びる。
気持ちいいなー。
暖かくてポカポカする。
太陽の光があたしの体の中に入って力になってくるみたい。
チューチューっとジュースを飲む。
のどかな昼過ぎの時間が過ぎていく。
ポカポカ昼タイム。