終わる日常
「そういえば、トータ今日は随分早いじゃない。」
む、当たり前だろ。
「…今日は新入部員の獲得があるからな。」
気合いも入るというものだ。
「えーっと、関係なく無い?」
え?
「なんか不思議そうな顔してるけど、早く来て何すんの?」
そりゃああんた・・・部活の紹介文・・・は春休み中に何度も推敲して、練習も何度もしたな、後は・・・何だっけ?俺他にやる事あったっけ?
しまった、どうやら気合いが入り過ぎて先走ってしまったようだ、失敗失敗。
「心の準備とか・・・。」
「ぷっ、どんだけ緊張してんのよ。」
笑われてしまった。
しかしまあ、心にもないことを言ったのはこちらだから、その嘲笑は受け入れよう。
あっ、そうだ。
「まあ、それはそれとして、本当はポスター張りを手伝おうかと思って。」
うん、これはいい言い訳になりそうだ。
なんせマネージャー、弓原が一人でやる事になっていたからな、考えてみれば酷い話だが・・・この学校は女子に厳しいな。
「いや〜、手伝うって言われてもねえ、3枚しかないよ?」
え?そうなの?
「まあ、うん、でも・・・ありがとうと言っておくね。」
急にそっぽ向かれた。何で?
一応誤魔化せたと考えていいかな。
「じゃあ俺はどこに張りに行けばいい?」
「数も少ないんだし、一緒に張って回ろうよ。」
まあ、それもそうだな。
まずは体育館前の掲示板、それから中庭にある掲示板へとポスターを張る。
「それにしても、我らがエースに手伝って貰えるとは光栄ね。」
「…大袈裟だな。」
そう、全くもって大袈裟だ、そもそも去年は全て俺が打たれて負けたのだ。
それでもエースには違いないのだろうが、もっと皆んなに頼られる真のエースになりたい。
「…可愛いマネージャーが入ってきても、手を出しちゃダメだからね?」
ってこら、俺にそんな真似が出来るものか!
一体俺をどんな目で見ているんだ。
「入ってくれるなら歓迎はするが、別にそういうつもりはない。」
弓原が半眼でこちらを見てくる。
何だ、その視線は?今までの俺のどこにそんな要素があったというのか。
別に女嫌いではないし、好きだとは思うが、今は他の事で頭が一杯であまり考えたことがなかった。
「…一人くらいは入ってくれないと弓原の負担も減らないだろ。」
そう、例えば今日なんかも数の問題ではなく、やはり一人でやるというのは可哀想だ。
「後は職員室前の掲示板に張って終わりね。」
…だから、何でソッポ向きながら話すんだ?今の俺の優しい言葉に反応はないのか?
始業近くの時間になったためか、大分生徒達の数も増えてきた。
そうして、職員室の前に差し掛かった時、職員室のドアが慌ただしく引かれた。
「おう!と、藤太!丁度お前を呼ぼうとしていたんだ!」
これはまた、えらい剣幕だ。
俺が何かしたか?
「たった今、お前の知り合いか?笹谷という女子から電話があってな!」
有希ちゃん?よくうちの学校の番号を知ってたな。
普通、学校の番号なんて知らないし、携帯にも登録なんてしないだろ、しかも自分の学校じゃないし。
「い、いいか、落ち着、落ち着いて聞けよ。」
そして俺を絶望の淵へと追い込む最悪の報がもたらされた。
「お前の妹が事故に遭って、重体だそうだ。」
連続投稿。書きためてた部分が終わりました。
ペースを落とさず続けて行きたい。