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森の泉

さて、どうしよう。

教団側という事は、ミレイちゃんとコーコの敵だ。

目的はミレイちゃんを連れ戻し、儀式によるパティアさんの処刑。

コーコを光の勇者として立てて、錦の御旗にする。

当然俺の予想が外れである可能性を考慮しつつ、気を配る必要がある。

ミレイちゃんとコーコはもう、俺の仲間で家族、妹だ。

そういう事にした。


あと、リーコも加わったけど。

その彼女らに害なそうというからには覚悟をして貰いたい。

まだ、何もしていないのだから、今すぐどうこうするつもりは無いが、いざとなったら最後の手段を取らせてもらう。

大体、追っ手が付かないように上手い事やってくれるんじゃなかったのかよ隊長さん。



「そうですか、やっぱりレステル様は私達を捨て石にするつもりは無かったのですね。」


「ま、まあ、そう言うこったろうな、俺らは、ちったあ知られた冒険者だ、さっき一人やられちまったが、相手が悪いや、けど、合流して、この人数なら不覚は取らねえ、あんたも結構やるみたいだしな。」


冒険者・・・それは職業なのか?

まあ、安定収入の無い仕事なんか前の世界にもいくらでも有ったか。

自由業の自営業か、俺は勘弁だな。

仮にも助っ人がこちらの戦力を当てにするのはやめて欲しいな。

こっちにはいくら成人したとはいえ、小学生だっているんだぞ。


でも、追っ手にしろ、助っ人にしろ、それなりの実力者を差し向けているはずだ。

前者ならコーコを相手取るため、後者なら依頼の魔物退治のために。

さっきのフォレサベといい、コーコやリーコの消耗具合といい、ここらに居る魔物はかなりの強さなのだろう。


魔法の使えない俺でも、ちゃんと戦力になる事はさっき分かった。

いや、それどころか俺はかなり強いのかもしれない。

それに加えて、この森が島に近しい感じを受けて、俺自身は結構余裕が出て来てしまっているので、一つの考えが浮かんだ。

その為に確認しておく事があるな。


「なあ、コーコ、俺の魔力は全部出てった訳じゃないって言ってたけど、残った魔力で何が出来るか分かるかな?」


「すいません、ますたあ、そこまでは私には・・・。」


「じゃあ、触媒と言うか、何かを媒介ににして魔法の発現は出来ると思うか、?予測でいいから教えてくれないか。」


「・・・外部の要因があれば、可能性は高いと思います。それに、その方が早く慣れてくるかと。」


部外者が居るから、若干濁らせて答えるコーコさんは本当によく出来た子です。

そのコーコが可能性は高いと言うのだから期待できるだろう。


「リーコ、この近くに泉が湧いている場所ってあるかな?」


「参道から少々離れてしまうでござるが、そう遠くない場所にあるでござる。この森には結構な数の泉があるでござるよ。」


「おい、あんた何をしようってんだ?」


彼らにあまり見せたくは無いが、こんな所で待っててくれとも言いにくいな。

・・・それとも、ここで見せつける事によって、教団に報告してくれれば、コーコへの執着が少しは俺に向く・・・というのは希望的観測に過ぎるか。

彼らに知られてしまうリスク・・・は特に思いつかないな、けどなんかありそうでモヤモヤする。


まあいいか、よく考えてみたら俺が教団を意識する事に意味なんかない。

所詮は主神が女神(アルセティオ)だ。

いい加減うんざりだ、俺は追われるのは嫌いだ。

そしてこの追っ手は俺の前に出て来て、行動を共にするという。

つまりもう追っ手じゃない、俺は追われてる訳じゃない、それでいいや。


「こんなに強力な魔物が多くては、神樹に辿り着く頃には相当消耗してしまうと思います、ですからちょっとした切り札を用意しようかと。」


まあ、全部詳しく教える事も無い。


「リーコ、案内してくれ。」


「ハイでござる、ますたあ!」


泉には、リーコの言う通り程無く着いた。

途中魔物に襲われないか警戒していたが、杞憂だった。

この事からも期待できる。

島にあった泉よりも小さいが、周りは多少開けている。

規模が小さいだけで、同じ様な感じを受ける。


「ミレイ、空いている水筒はある?」


「あ、ちょっと残ってます、フジマサ様飲みますか?」


「ありがとう、頂くよ。」


飲み干した水筒に泉の水を入れる。

大丈夫、出来るはずだ、俺が一番最初に使った魔法。

『この世界の泉は神聖な力を多かれ少なかれ持ってるのね。』

ミカの言葉を思い出す。


「女神結界!」


感じる。

俺の魔力が泉の水と呼応して練り上がっていく。

そうだ、この感じだ、島にいる時は毎日使っていた。

間違いなくこの水は女神結界水になった、魔法発動の確信がある。

圧倒的なまでの静謐さによりあらゆる不純物を取り除いたどころか、傷病快癒、滋養強壮、体力回復と霊験あらたかな有難い水である。

自分で作っといて有り難みもないが。


「なっ!まっ、ますたあ!そ、それはなんでござる!」


「凄く神聖な気配を感じます。」


リーコが驚愕し、ミレイちゃんも感動している。

でも冒険者さん達は何が起こったかわからない様だ。


「コーコ、リーコ、飲んでみてくれ。」


これで結構回復出来るはずだ。


「そ、それを飲んで良いんですかっ!?」


「い、頂けるのでござるか!?」


どういう物なのか分かるのか、かなり興奮している様だ。


「ああ!まさかその聖水を頂ける日が来るなんて、以前より憧れていました。」


あれ?以前って、コーコの前で使った事はないはずだけど。


「知っているのでござるか!?こーこ!」


「知っているのかコーコ!」


「はい・・・聞いたことがあります。ますたあが初めて使った魔法が今の『女神結界』、そしてその結界で浄化した水がこの聖水です。」


嘘つくな、俺は言ってないぞ、誰から聞いた?

今、しまった!って顔したな、いずれ問い詰めよう。

まあ、今は人目もあるし流すから、勿体ぶってないで早く飲みなさい。


「ますたあああああ!!来ました来ました来ましいいいいいいたあああああ!!」


「ふおおおおお!!漲ってきたでござああああるうううううううりいいいい!!」


おいおい、なんだよ、何なんだそのテンションは、美味しかった?だったら良かったけど、その大袈裟なリアクションはやめて。


「これこそますたあの味です!感激です!」


「まさしく!これぞますたあ味でござる!うっうっ・・・」


泣くなよリーコ、そしてそのますたあ味とは何だ、俺の味って・・・別にそれは俺の絞り汁じゃないぞ、気持ち悪い。


「どうだ?大分消耗していたみたいだったけど、ちょっとは元気出たか?」


うんまあ、見るからに元気になってますけど。


「むしろパワーアップした気分です!」


「超回復でござる!」


筋トレじゃないし、ドーピングでも危ない薬でも無いはずだよな。

俺自身飲んだ事あるんだから、副作用も無いはずだ・・・大丈夫だと思いたい。


「あんたらホント何やってんだ?遊んでんのか!」


分からない人から見ればそうなるよな、ザックリ適当に説明しておくか。


「これは今魔法で作った回復薬です。泉の水を使っているので、魔除けにもなると思います。」


「・・・おい、それマジで言ってんのか?」


「ちょっと、ねえベス。」


冒険者さん三人が内緒話を始めだした。

なんかの打ち合わせかな?

目の前でのあからさまな内緒話とは・・・・。

別に仲間外れにされた気分になって悲しい、って事は無いけど、悪口でも言われてる気分にはなるな。

こっちをチラチラ見てるし。


「なあ、あんたら・・・ひょっとして俺らの加勢なんか要らねえんじゃねえか?」


意外な言葉だな。

はい、要りませんって答えたら、じゃあ帰るわってなるのかな?

まあ、教団側の追っ手なら、ここで逃げ帰っても、暫く俺たちが滞在している家さえ押さえておけば、何時でも隙を伺うチャンスがあると考えて、こんな危険な場所で事を起こそうとは考えないか。


ただそうなると、安心して生活出来ないな。

でも彼らをどうこうしたところで、別の人が派遣されるだけで、結果は変わらないよな。

女神結界が家に使えたとしても、それが人間にまで影響を与えるか分からないからな。

害意を持ったものすべてに効くといった効果はミカからも聞いたことは無かったし、それじゃ都合良すぎるよ。

って事はやっぱ三ヶ月耐えるしかないのか。


「この参道がこんだけの危険地帯になっちまったからな、入って来ちまう奴が出る前に一度報告を入れる必要があるだろ、俺たちは一度引き上げた方がいいと思ってな。」


なるほど、それは確かに必要だろう。

良い言い訳を思いついたもんだな、最初から疑って無ければ何の違和感もない理由だ。


「何なら一緒に戻らないか?戦力は多い方がいいだろ。」


それが目的か?

魔物との戦闘の隙にとか考えてるのかもしれない。


「いえ、冒険者さん達の知恵と経験は、私達に一番足らないものなので、大変心強かったのですが、やはり私達は先に進みたいと思います。」


「・・・そうか。」


残念そうだな、自分達だけで帰れるか不安なのかもしれない。

敵に塩を送るのはどうかとも思うが、彼等が本当に報告をするなら、それは大事な事だと思う。

彼らにも渡しておくか。

空いた水筒にもう一度泉の水を入れ、女神結界をかける。


「良かったらこれを持って行って下さい、定期的に撒きながら進めば、多少は魔物の出現を防げると思います。」


本当は持ってるだけでも良さそうだが、森から出た後に悪用されたら嫌だから、使い切ってもらう為に、嘘の使用法を教えておく。


「多分ギリギリ間に合うと思うので、計算しながら使って下さい。」


「本当か!?ありがたい、助かる!」


おお、嬉しそうだ、こんな状況でも喜んで貰えるのは悪い気がしない。

この後、これが自分の首を絞める事態になったとしても、死なせてしまうのは申し訳無いし、彼らはまだ俺たちに何の害も与えてないのだから、俺の勘違いでしたでは、あまりに後ろめたい。


「では報告の件、よろしくお願いします、あと、森の入り口に立ち入り禁止の標示が出来れば、それもお願いしたいのですが。」


「わかった、任せとけ。万一村人らが入ってきたらやべえからな、声掛けもしとくぜ。」


・・・まあ、悪い人達ではないのだろう、女神結界水を渡しといて良かった。


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