回顧
俺は、恵まれた環境で育ってきた。
父はIT会社を起こし、一代で成り上がった。そして母はその父の専属の秘書だったのだ。俺は会社の跡取り息子として教育された。幼少期から塾や音楽教室、水泳に書道と様々な稽古事に半ば強制的に通わされていた。しかし、その当時は嫌でもなかった。というよりかは、比較する人間がいなかった為、それを当然のことと受け入れていたのだ。
ほどなくして俺は有名な私立の小学校に入学した。
そこは俗に言う金持ちの親が通わせる学校だ。当然のごとくブランド品で着飾った煌びやかな何をした子供が、大量に存在していた。斯く言う私も、その一人だった。
私はここにいる子供達は皆私と同じように毎日稽古事に勤しんでいると思っていた。
しかしそうではなかったのだ。
私が最初にそのことに感づき始めたのは、初夏を思わせる生ぬるい風が雨音を運ぶ、そんな時期だった。
親しくなった学友に遊びの誘いを受けた。私は、遊びを知らなかった。遊びという言葉を知ってはいてもそれは本の中でだけの特別な活動のように思っていた。その日は書道の稽古の予定があった為断った。というよりか、毎日が稽古事で暇などなかった。
その学友はその後、何度か同様に誘ってくれたが、私が断り続けているうちに諦めたようだった。
そしてそれと同時に学校にいる間もあまり話しかけなくなった。




