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世界末日 Locusta — Dominion of Aria  作者: カネキ


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6/6

Episode 6 Locusta Extermination Order【怪物殲滅令】

この連載は、積み重ねた出来事がどんな形で返ってくるのかを淡々と追っています。

 進んだ先に何が残るのか。

 最後まで読むことで、その結果が見えます。

 夜の風が、焼けた鉄の匂いを運んでいた。

 ロクスタはアリアの遺体を抱いたまま、崩れた本部の外を歩いていた。

 瓦礫の山が続き、遠くで火がまだ燃えている。

 世界国家の中枢は、すでに沈黙していた。


 ロクスタは、崩れた壁の影に小さな穴を掘った。

 アリアの身体をそっと横たえ、瓦礫の欠片を積み上げていく。

 風が吹き、アリアの髪が最後にひと揺れした。

 その揺れは、もうロクスタの呼吸ではない。


 盛り土の前に膝をつき、ロクスタは静かに手を合わせた。

 複眼の赤が弱く灯り、夜の風にかすかに揺れる。

 怒りでも悲しみでもなく、

 もっと深い、もっと静かな決意の光だった。


 ロクスタは立ち上がり、近くに倒れていた黒い車体へ歩いた。

 アリアが渡してくれた、あの専用バイクだった。

 辛い時、嫌な時、アリアを後ろに乗せて走った思い出のバイク。

 傷だらけの車体に手を置く。

 ロクスタは無言で跨る。

 エンジンが低く咆哮する。


 その瞬間、上空からサーチライトが降りてきた。

 戦闘ヘリのローター音が夜を震わせる。

 軍の包囲が始まっていた。


 ロクスタはアクセルを握った。



 都市の夜が震えた。

 ビルの谷間に、戦闘ヘリのローター音が響く。

 サーチライトがロクスタを追う。


「ホーク1より管制へ。目標を視認……生体反応が規格外だ。

 これ、本当に人間か?」


「ホーク2、後方より接近。

 ……ッロック不能! 妨害されてる、電子戦だ!」


「ホーク3、射線に入る。

 機銃で牽制する、ホーク2は右へ回れ!」


 ガトリング砲がビルの壁を削り、火花が散る。

 破片が雨のように落ちる。


「ホーク1が被弾! 墜落する、パイロット脱出できず!」


「管制より全ホークへ。

 対象コード:Locusta R038-25。

 危険度A+。

 撃破を最優先とする」


 ロクスタはバイクを跳ね上げ、壁を駆け上がる。

 頂上で跳躍し、戦闘ヘリのコックピットを拳で粉砕した。

 爆炎が夜空を照らす。


 戦闘機の編隊が夜空を切り裂く。

 ミサイルが尾を引いてロクスタを追う。


「イーグル1、目標を捕捉。……なんだこの反応は……」


「イーグル2、ミサイルロック開始……

 ……ロック外れた!? 妨害強度が高すぎる!」


「イーグル3、機銃で行く。

 イーグル4、後方から挟め!」


 ロクスタはビルの屋上から跳躍し、

 ミサイルを素手で叩き落とす。

 爆炎が夜空に咲く。


「イーグル1が落ちた! 近接で撃墜された、距離を取れ!」


「イーグル5より全機へ。

 対象は航空機との近接戦闘が可能。

 絶対に接近するな。

 高度を維持して攻撃を続けろ!」


 ロクスタは空中で戦闘機の翼を掴み、

 そのまま地面へ叩きつけた。

 戦闘機が爆発する。

 炎の中をロクスタは歩き出す。


 地上では戦車部隊が待ち構えていた。

 主砲が火を吹く。


「タンク1、砲撃開始。……直撃を確認、煙が上がる!」


「タンク2、前進。

 ……ッ待て、まだ動いてる! 距離を取れ!」


「タンク3、右側面から撃つ。

 タンク1は後退しろ、接近される!」


 砲弾がロクスタの胸を砕き、装甲が割れる。

 ロクスタは歩く。


「タンク2がやられた!

 装甲を引き裂かれた、なんだあれは……!」


「管制より地上部隊へ。

 対象は戦車の装甲を素手で破壊可能。

 全車、後退しつつ砲撃を継続せよ!」


 ロクスタは戦車の砲塔を引き抜き、投げ飛ばした。



 対Providence Accordに使えそうだと、アリアが生かしておいたレジスタンス。

 ロクスタは、覚えていた。

 ロマンチックとは到底言えないが、アリアと監視を続けた思いでの場所。


「こちらレジスタンス本部!

 怪物が来た、怪物が来た!

 全員退避しろ、繰り返す、退避しろ!!」


「第3拠点より本部へ!

 防衛線が突破された、持たない!

 援軍を――」


(ジ・ジジィジーージージーー))


「……本部、応答しろ!

 本部!? 本部!!」


 ロクスタは迷わず施設を破壊し、

 怪人プラントを稼働させた。

 有無を言わさず、ロクスタは改造を開始する。

 命令を聞き、強ければいい。

 そのコンセプトに全振りでプラントを動かし続けた。

 生殖機能も知能も余計なものを取り払い、寿命は一週間程度と極端に短くなったが満足いく仕上がりになった。

 こうして、絶対服従の怪人軍団が生まれた。


「命ある限り、Providence Accordの連中を殺せ。

 プラントを見つけたら、仲間を増やせ。

 製造方法は頭にインストール済みだ」


 地上最悪の軍隊が活動を開始した。


 戦闘は激化していく。


 ロクスタは、船舶や飛行機を活用して、最悪な輸出品として各国へと送り出す。

 ロクスタの怒りは海を越え、世界へと波及していく。




「世界国家戦略管制より全域へ通達。

 対象 Locusta R038-25 に対し、

 最終兵器の使用を承認する」


「各国戦略部隊は即時発射態勢へ移行。

 カウント開始。

 10……9……8……」


 各国のICBMが同時発射された。

 欧州から。

 北米から。

 アジアから。

 中東から。

 南米から。


 世界中の空が白く染まる。

 地平線が光に飲まれる。

 都市が崩れ、国家が消え、文明が崩壊する。


 ロクスタは空を見上げる。

 核の光が世界を焼き尽くす中、

 最後まで戦い続けた。


 兵器を破壊し、

 支部を壊滅させ、

 世界国家を完全に崩壊させた。


 だが――

 ロクスタ自身も限界を迎える。


 核の灰が降る世界。

 ロクスタはアリアの墓の前に立っていた。

 誰もいない。

 誰も追わない。

 誰も見ていない。


 ロクスタは、どこかへ消えた。

 生死不明。

 行方不明。

 ただ、消えた。


 世界国家は崩壊した。

 国家も政府もない。

 無秩序な世界。


 焼けた都市。

 崩れたビル。

 黒い空。

 放射線の霧。

 人々は散り散りに生き延びる。


 誰もロクスタの姿を見ていない。


 ただ、風だけが吹いている。


 アリアもいない。

 ロクスタもいない。

 Providence Accord もない。


 残ったのは――

 虚しさだけだった。
















 灰が舞っていた。

 風が吹くたびに、焼けた大地の表面がざらりと音を立てる。

 崩れたビルの影が長く伸び、ひび割れた道路の裂け目から、細い草が一本だけ顔を出していた。


 その荒廃した世界を、一人の男が歩いていた。


 服はぼろぼろで、袖は裂け、胸の装甲はひび割れ、内部の筋繊維が露出している。

 歩くたびに軋む音がする。

 その身体は、戦いの痕跡を全て背負っていた。


 頭には、アリアにもらったヘルメットがついていた。

 傷だらけで、焦げて、ところどころ欠けている。

 それでも外さない。

 そのヘルメットだけは、世界が壊れても失われなかった。


 風が吹く。

 服が揺れる。

 複眼の赤は弱く、静かに灯っている。

 怒りも、復讐も、もうそこにはなかった。

 ただ、残されたものを守るような、淡い光だけがあった。


 やがて足が止まった。


 そこには、小さな盛り土があった。

 石を積み、布をかけ、花を添えた――

 アリアの墓だった。


 膝をつく。

 震える手で、花を置く。

 花は、どこかの廃墟で見つけたものだ。

 色は薄く、枯れかけている。

 それでも、丁寧に扱われていた。


 風が吹く。

 墓の布が揺れる。

 その前に座る身体は、静かにうなだれていた。


 遠くで、動物が歩いていた。

 痩せた鹿のような生き物が、こちらを見て、ゆっくりと歩き去る。

 鳥が、黒い空を横切る。

 生命が、わずかに戻り始めていた。


 瓦礫の隙間から草が生え、

 ひび割れた道路の裂け目から芽が伸び、

 焼けた木の根元から新しい葉が出ていた。


 世界は、少しずつ、ほんの少しずつ――

 再生を始めていた。


 ゆっくりと立ち上がる。

 アリアの墓を見つめる。

 複眼の赤が、ほんのわずかに強く光る。


「またくるよ。

 ……俺たちは、ずっと一緒だからね。

 …………愛してる、アリア」


 風が吹く。

 背中が揺れる。

 その背中は、ゆっくりと、荒廃した世界へ歩き出す。


 足音が砂の上に消えていく。

 アリアの墓の前には、枯れかけた花が一輪、静かに揺れていた。


 虚しさの底に、

 ほんのわずかな救いがあった。


 それだけが、

 この世界に残されたものだった。



        おわり

全6話を通して、この物語を読んでくださりありがとうございました。

 アリアと、ロクスタの物語は、ここでひとつの終わりを迎えます。


世界は壊れ、再び歩き始め、そして静かに息をしている。

 彼らが残したものが、どこかで誰かの心に触れれば、それだけで十分です。


この作品に最後まで付き合ってくださった読者の皆さまへ。

 心から感謝します。

 もし少しでも何かを感じていただけたなら、評価や応援をいただけると嬉しいです。


ありがとうございました。

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