-6.万華鏡は虹色-
「おお!やっぱり高いなあ、東京スカイツリー」
東京スカイツリーの近くにやってきたが、高さが半端ない。何メートルかは覚えていないが、東京タワーより高いらしい。
「浅草からでも見えたけど、やっぱり近くに来ると大きいね」
亜紀もガイドブックを片手にその高さに感心している。
「わぁ、すごく大きいね。亜紀ちゃんもこれくらい大きくなれればいいのにね」
「そうだね。亜紀もこれくらい大きくなれば私たちに頭をくしゃくしゃにされないのにね」
「何言ってるの、そんなわけないでしょ」
今日の悠は切れ味抜群だ。私も一緒に乗る。
「まったく。二人そろってバカにして…水族館、行くよ」
「やったね、水族館だ!水族館!」
そう、水族館は悠が一番楽しみにしてる今日のメインイベントだ。そんなに魚が好きなのか。将来は漁師か釣り師一択だな。
スカイツリータウンの中にあるすみだ水族館のエントランスに入る。前売り券を買っていたから少しお得に入れたし、高校生だから大人よりもお安い。
「思ってたより狭いんだね、この水族館……って、すごい、さっそく綺麗!すごいなあ」
悠は5階と6階をつなぐ通路ではしゃぐ。おお、たしかにこれはすごい。なんだろ。鏡の国のアリスになった気分だ。人が多くてなかなか窮屈だけど。みんなスマホで写真や動画やらを撮っているから入り口から出口まで大渋滞だ。ひんやりとした空気に包まれていたと思ったのも最初だけで、この人ごみに紛れると全然分からんな。
「おお、すごい、これ何?しかも何かいい香りもする!」
「パンフでは万華鏡トンネルってあるね、にしても人が多い……」
後ろから亜紀の声だけが聞こえる。いや、マジ亜紀小っちゃくて埋もれてないか?大き目の小学生よりも小さいからちょっと見つけにくい。
「亜紀ちゃ~ん、どこー?」
悠は悪気なしに亜紀を子ども扱いして探す。
「ここよ!」
人ごみをかき分けつつ私と悠の服を引っ張る。
「お、亜紀いた。酸欠になってない?」
「まあ、確かに酸素薄く感じ……ってそんなわけないわよ!」
「あははは!亜紀ちゃん、かわいいねえ」
悠は嬉しそうに亜紀の頭をなでる。
「うるさい!ほら、写真はもう撮ったの?私は撮ったよ!」
「あ、三人で撮ろうよ。ちょっと二人とも顔近づけて。ほら、なっちゃんも」
ぐっと亜紀の顔を自分の顔に近づけて悠は私を手招きした。
「はいよ!」
一番小さい亜紀を真ん中にして私は亜紀の頭を抱く。悠は亜紀に無理やりピースをつくらせ、首に腕を回させ自分のほほあたりに近づける。スマホをインカメにして、一枚、二枚と撮る。
「ほら、亜紀ちゃん、笑って笑って~ほら、ピース、ピース!」
「あー!もう!悠はくっつきすぎ!千夏も人の頭をくしゃくしゃしない!」
「あははは!亜紀は可愛いなあ」
「千夏、うるさい!」
「撮れたよ、いい感じ」
スマホの画像を見る。お、きれいに撮れてる。にしても、悠はやっぱり美人だなあ。亜紀も照れてて妙にかわいいし。あ、私なんかシャツ、くたくただな。ま、いっか。
「ほら、ほかの人に邪魔だから先行って後から見ればいいじゃない」
「それもそうだね、ハル行こ」
「りょうかーい」
トンネルを抜けようとしたとき電気が消えた。
「あれ?停電?」
スマホの画面だけが点々と輝いている。周囲にいたほかの人たちもざわついたが、すぐに復旧した。
「停電みたいね。雷でも落ちたのかしら?」
「……あ~確かに。びっくりしたけど、今にも雨降りそうだったもんね」
「今日と明日は降らない予報だったから持ってきてないなあ。三人でずぶぬれかあ」
「私は折り畳み傘あるから大丈夫だけどね」
相変わらず亜紀は準備がいい。せめてコンビニまでは傘に入れてもらおう。館内放送が鳴る。やはり近くで落雷があったようだ。
「ま、とりあえず進もっか。アナウンスでも停電って言ってるし」
「そうね、悠も行こう」
「うん」
万華鏡トンネルから小笠原なんちゃらへと抜けて、ペンギンゾーンだ。おお、ペンギン独特の匂いだ。
「お、ペンギンだ。亜紀、あいつら鳥なんだよね?」
「そうだよ。ペンギンは鳥だよ。この種類はマゼランペンギンと言って、分布はアルゼンチンやチリなどの南米が主な生息地。空は飛べないけど水中を泳ぐ速度は時速二十キロ以上と言われてるね」
「亜紀詳しすぎじゃない?いくら生物強いからって」
「いや、ここに書いてる。ってペンギンの相関図まである」
あ、書いてる。たしかに。悠はペンギンに夢中だし、亜紀はペンギンの相関図を腕組して凝視している。
「ペンギン可愛いねえ、よちよち歩いて、いつまででも見てられるよ」
「やっぱりペンギンは社会性が高い生物よね。うーん、この相関図面白いなあ」
なんかこの二人は変なところで似てるよなあ。私はその二人の背中を見て思わず笑ってしまった。




