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5(地球にも遊びに来て下さい)


   *


 地球から見てちょうどこぐま座に当たる惑星でのこと。異星人と接触した。姿は人間の常識からさほど離れていないものだった。

「あなたの心理に基づいて構成しました」

「脳ミソ、覗いたの?」やだなぁ。テレパスとは、交信と翻訳の上位互換であって、精神を丸裸にすることじゃぁないですの。

「円滑な意思伝達の手段と思って下さい。気分を害されたのならお詫びします」

「ホントの姿、見せてくれない?」

「視認できませんよ」

「狡いなぁ」思ったまま口にした。

 一美の言に、「あなた方の視覚器官では捉えられないのです」と、少し哀しそうに続けた。「触手やウロコだらけの姿であれば納得されましたか?」

 うーん、と一美は唸った。「イヤだけど、異星人に会った感はあると思う」

「同感です」

 異星会談は、終始なごやかに進んだ。最後に、「いつか地球にも遊びに来て下さい」と一美が伝えると、「楽しみです」と、応えた。


   *


 ポッキー問題は、一美をいたく動揺させた。

 着てた服が残っているのは分かる。素っ裸で往来しているのだから。でも、服が濡れた汚れたという痕跡はない(予測される濡れた汚れたの原因は考えないこととする)。

「自分」に帰属する範囲はどこまでだ?

 咥えたポッキー理論が成立するのならば、肉体の範囲はどこまで及ぶ?

 口や胃の中身が残っていないのだから、それは肉体の一部と見なされる。飲んだ水分も、食べた消化中も、排出準備中も右に同じく。

 下手な考え休むに似たり。咥えたポッキーは折れて残った。釘を打つ瞬間に歯を食いしばったかもしれないので、追試を二度した。


   *


「……ポッキー、半分になった」

 返された答案を比較するに、数学と生物は一美の勝ちだ。しかし、さっちんの点数は全体的に良い。こやつ、今度も廊下に貼り出される上位者リストに載るな。

「ねぇ」さっちんが訊ねる。「盲腸って体の一部だけれども、不要だよね?」

 はっ、と一美は息を飲んだ。服の中身を探ってみると、ぐねぐねした肉片があったかもしれないのだ。これはいかん。いかんですぞ。その論理なら、尾骶骨も──乳首もヤバい。女で良かった。

「乳首?」なんで、とさっちんが疑問顔。

 生物と保健体育に自信アリの一美は答える。「男の乳首は痕跡器官だからさ」

「そうなの?」さっちんはむぅ、と唇を尖らせ。「ウチのお兄ちゃん、触ると気持ち良いって云ってたけど?」

「アンタの兄貴、なんなのさ!?」

 と、まぁ、親友の家庭事情はさておき、例の乳半色のプラスチック片、通称ウマが、方々で手に入った。どれも異った形状で、ひとつとして同じものがなかった。

 これが興味を引き立てた。

 集めると何かあるんじゃなかろうか。

 ウマは、立体テトリスというようなカタチをしてる。くるくる回転させても全てのカドは直角に見えるが、床に落ちた影は、どうにも三角、つまり六〇度に見える。まるでエッシャーの版画。加えて立体テトリス感は、立体パズル感に通じる。上手くハメれば何かになる。カチッとカタチになる予感がする。

 と、なれば。集めるしかないじゃん?


   *


 窓ガラスをコツコツ叩くと、ややあって寝ぼけ眼のさっちんがカーテンを捲り、一美の姿を認めた。

「どうしたの」こんな夜中に。

 窓を開けながらさっちんが訊ねる。厚手のピンクのもこもこパジャマが可愛い。一美は用件を云う。前に白っぽいプラスチックあげたよね? 貸してくれない?

「なんで?」

 まぁ、ちょっとね。

「もしかして、危ないことしてない?」

 や。そんなことないけど?

「ならいいけど……」

 さっちんは何だか腑に落ちない、と云った顔で、しばし黙する。口から白い息が漏れる。

 さっちんは首をすくめ、真冬の冷気にぶるっと体を震わせた。「返してくれるよね?」

 もちろん。寝てるところゴメンね。ありがと。じゃ、また。

「ねぇ、カズミ」

 うん?

「ここ、六階だけど?」

 大丈夫。夢だから。ただの変な夢だから。

「嘘つき」

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