第二十話・最強の騎士団、誕生
私達はエルサをリーダーとした、新たな騎士団の名前を考えていた。
これが中々思い付かず、難航していた。
「思い付いたんだけどよ、鮮血の破壊者…なんてどうだ ?」
ヴェルザードは自信満々に候補をあげた。
「ちょっと……怖いですね……」
「民が怯えるな」
「なんか悪役っぽい……よね……」
私含め、女性陣からは不評だった。ヴェルザードはちょっぴり悲しげな表情を浮かべた。
「私は悪くないと思いますがね、騎士団の強さを表現出来て、ロマンがあります」
「だろ ?お前センスあるわ !」
リトは乗ってくれたようだ。男同士意気投合している。
「私はー……果実の楽園なんてどうです ?」
リリィのアイディアは可愛らしいものだった。
「私は良いと思いますよ」
「うむ……悪くは無いと思うが……緊張感に欠けるというか……」
「うーんダサいな」
「あのクソ生意気な三人組の騎士達に馬鹿にされますね」
意見は否定よりだった。結局ボツになり、リリィはしょげていた。
「そういえば、あの三人組もチームなんですよね?名前なんて言うんですか ?」
私はエルサに聞いてみた。
「三人組 ?」
リリィとヴェルザードはポカンとしていた。
「エルサと主に絡んできた小者集団ですよ。大口を叩いておきながら魔獣相手にボコボコにやられた役立たずの咬ませ犬共です」
リトはボロクソに酷評した。酷い。
「まあまあ、大体間違ってないけど、それでも根は悪い人達ではないですよ。加勢しようとしてくれてましたし。もう終わった後でしたけど……」
私は精一杯フォローした。
「あいつらか……確か、堅固な山猫だったような……」
「名前だけは一人前ですね」
リトは辛辣な感想を述べた。
「でもおしゃれというか、格好いいですよね」
「まあ、ヒントにはなるかな……」
堅い山猫って何だよとは思うけど……。
数分間、私達は名前を考え続けたが中々良い案が浮かばなかった。
私は最初に口を開いた。
「あの……。私達って、種族というか、バラバラですよね……」
「え?」
「いや、私って種族名は人間……ですよね ?でエルサさんはエルフ、リトは魔人、ヴェルさんは吸血鬼、リリィは使い魔……皆バラバラじゃないですか」
「確かに、よく考えたらバラバラだな」
「で、それがどうかしたのか ?」
エルサは疑問を抱いた。
「えーと……そんな姿も生い立ちもバラバラな私達が一つに団結するって意味で、結束って単語を使うのはどうかなぁ……って」
「結束か……良いな !」
エルサは絶賛した。
「俺達に相応しいじゃねえか」
「結束……良い響きですねぇ」
思ったより好評だったらしく、私も嬉しかった。
「でもこれだけじゃ物足りないですね……後一捻り欲しいですよね」
リリィが指摘する。確かにその通りだ。でも何を付け加えよう……。
再び皆は悩み、沈黙が続いた。
「恐縮ですが、主のアイディアに一工夫加えさせて頂きますよ」
今度はリトが口を開いた。
「ほう、何か名案が浮かんだのか ?」
エルサはワクワクしていた。
「バラバラの私達が一つに結束します……。そしてこれからも無限に広く繋がっていく……。そう考えると楽しくなりませんか?」
「つまり……?」
「際限なく広がる多種族の絆……。無限の結束なんて如何でしょうか !」
「無限の結束……。ああ、素晴らしい !」
エルサはこれ以上ないくらい歓喜した。
「今まで一番しっくり来るじゃねえか」
「何か最強のパーティーって感じがしますね !」
満場一致で好評だった。何より私の案とリトの案が合体したのが嬉しかった。
「流石リト、ナイスアイディアですね」
私はランプを撫でた。
「あわわ…… !主に撫でて頂くなんて…!私は世界で最も幸せな魔人でございますぅぅぅぅ !!!」
リトは照れてランプから煙がプシューッと噴射された。大袈裟だなぁ。
「何はともあれ、ついに我々の騎士団『無限の結束』の誕生だー !」
エルサは高らかに拳を掲げ、宣言した。
「「「おー !!!」」」
私達もつられて拳を掲げた。
「今夜はパーティーですね !腕によりをかけますよ !」
「私も手伝いますよ」
私とリリィは台所に向かった。夜は騎士団結成パーティーだ。
散々な目にも遭ったけど、悪いことばかりじゃない。出会った仲間達と絆を紡ぎ、共にこの世界を生きていこう。
To Be Continued




