第十九話・激闘からの帰還
エルサとワカバが魔獣退治に出掛けた一方、俺とリリィはエルサの家で留守番をしていた。
十数年ぶりの外出で無理が祟ったのか、俺はずっと体調を崩していた。
「ご主人様~、お粥をお持ち致しました」
リリィが食事を運んできた。お粥か……。あまり好きではないんだがな……。
「どうせならパスタが食いてえな……。トマトソースたっぷりつけたやつ」
「ダメですよ、体に毒です。ご主人様は今体調を崩しておられるんですから」
「分かったよ」
リリィに諭され、渋々お粥を口にした。
「それにしても、二人とも無事に戻ってこれますかね……」
リリィは二人の身を案じていた。
「心配いらねえよ、エルサはともかく、ワカバにはあの魔人がついてんだろ」
「リトさんですよ」
リリィは訂正を求めた。
「……リトの強さは俺が身をもって体験している。あいつなら魔獣ごときへでもねえだろ」
「それは……そうですけど……」
「ワカバはああ見えて根性がある。そう簡単にくたばる玉じゃねえよ」
そうだ、ワカバは無事に戻ってくるに決まってる。別にあいつのことが心配なわけじゃないからな、そこは勘違いすんなよ。
「ただいま~」
噂をすればなんとやらだ。
気の抜けたワカバの声が聞こえてきた。考えるよりも体が先に動き、俺は思わず飛び起きた。二人が無事帰って来たようだ。
「お帰りなさいませ !って二人ともボロボロじゃないですか !」
「心配かけたな、留守ご苦労だった」
二人は森の中を歩き回ったせいで泥だらけだった。
「あのぉ……魔獣は倒せたんですか ?」
リリィは恐る恐る聞いた。
「ああ、ワカバとリトのおかげで魔獣を倒すことが出来た。これで町にも平穏が戻るだろう」
魔獣は無事に倒されたらしい。流石と言うべきか…。
「ヴェルさん、具合は良くなりましたか ?」
ワカバが俺に話し掛けてきた。
「まあだいぶ楽になったがな……悪かったな、肝心な時に居てやれなくて……」
俺が寝ている間、森で魔獣に襲われ、怖い思いをしたかもしれない。そう思うと胸が少し痛んだ。俺は吸血鬼だが、そんなに強い男じゃない。
「全然平気でしたよ。魔獣に見つかったときはハラハラはしましたけどね」
「主は体を張ってエルサの窮地を救いました。並大抵の人間には出来ませんよ」
リトが誇らしく語った。
「そうか、お前は強いな」
「そんなことないですよ。リトのおかげです」
ワカバは優しく微笑んだ。
力ではない。言葉にはしにくいが、この女には今の俺には無い強さがある。勇気……か ?
「そうだ、皆に話したいことがあるんだ」
エルサは唐突に話を切り出した。
「どうしました?エルサさん」
エルサは緊張した面持ちだった。
「私は長いこと一人で戦ってきた。他の騎士達は数人でチームを組んでいて、仲間がいる……。私にはいない……だから……その……」
エルサはモジモジして、少し赤くなっていた。
「もし良かったら……私と騎士団を作らないか…… ?」
成る程、そういうことか。
「良いんですか !?ありがとうございます !」
ワカバはいの一番に喜び、エルサの手を取った。
「本当か ?本当に仲間になってくれるのか !?」
「もちろんです !私、エルサさんの剣さばきを見て、とても格好いいと思いました」
ワカバは目をギラギラに輝かせていた。
いつの間にか二人は仲良くなっていたようだ。妬けるぜ……。
だがずっと一人で戦ってきたということは、やはりそれなりに寂しかったのだろう。その気持ちはよく解る。
「ヴェルさんもリリィも良いですよね !?」
ワカバは俺達にも聞いてきた。俺としては他にやることもないし、エルサは良い人そうだし、断る理由は無かった。
「俺はいいぜ。退屈しなくて済むしな」
「はい。皆さんの為に毎日腕によりをかけて料理を作らせていただきますよ」
「皆……本当にありがとう、これから先も宜しく頼む !」
エルサは目を滲ませていた。余程嬉しかったのだろう。
「じゃあ早速団の名前を決めなきゃですね」
リリィが提案した。
「名前か……」
皆思い悩んでいた。グループというものには名前はつきものだ。さて、どうしたものか。
To Be Continued




