第40話 危機回避の為に
「クレア、最初の耳鳴りからどれくらい時間が経ったかな?」
見張り台から真剣な眼差しで鉱山を見ているクレアに話しかけた。
クレアの顔は真剣だった。
「2時間経つかも。」
クレアは返事をしてくれたが私を一向に見ない。
なぜなら、さっきから狼のような魔物が2匹で村の周りを徘徊しているから。
禍々しい空気を漂わせ、赤い目を光らせている。
でも私には魔物が話してる内容が聞こえる。
『この辺に食べ物の匂いがあるけど、危険な感じするよ。』
『僕達が何もしなければ大丈夫って魔王様が言ってた。』
『早く帰ろうよ。』
『お腹すいた。食べ物が欲しい。』
魔物達は、ずっとこんな会話をしてるけど・・・結局帰らず、食べ物を探している。それに禍々しい空気のせいで、見た目と会話が合わないのが気になる。
だからクレアに魔物の言葉の話しを言っても信じてもらえそうにない。
魔物から魔王の名前が聞こえたから、もう少し聞きたい気もする。
とりあえず、鉱山からクレアのお父さんのデリックさん達は帰って来る気配もない。後1時間ぐらいでアルク様が帰って来るならなんとかなりそうな気がする。
クレアが急に
「キャーーーッ」
「クレアどうしたの?」
私はバッとクレアを見た!
「魔物達が鉱山の方へ歩いてる。」
クレアの表情は青ざめている。
魔物は村に入るのが危険と思ったみたいで、
『やっぱり帰ろう。』
そう言った帰り道が鉱山に向かってしまったみたいだった。
デリックさん達と出くわしてしまう。
私は慌てて
「クレア!ここからもし山火事が見えたら、水魔法が使える人達と一緒に消化して!」
「ハナはどこに行くの?」
「鉱山から魔物を遠ざけるために、魔物の近くに行って来る。」
「ダメよ!それだとハナが危ない!」
「今、鉱山からデリックさん達が出て来たら、もっと危ないわ。」
「でも・・・・それでも友達を危険な目に合わせられない。」
クレアはどうしていいかもわからず、瞳から涙が溢れ出した。
「私は大丈夫!ちょっと考えがあるの。」
クレアの両肩を掴んで、大丈夫だよって顔をした。
「その代わりここからしっかり見てて。山火事になって村に引火したらいけないから。みんなで村を守ってね。」
クレアは動揺して返事できない。
私はクレアの返事を待たず、見張り台を降りていった。
見張り台の下で一緒に待ってくれている人達に、クレアに話した内容と、これからする事を伝えた。
村の人達は反対したが、
その中の1人が
「それだとハナちゃんは危なくないのかい?」
「はい!大丈夫です。はしごを持っているので、やばかったら木の上に逃げます。」
「アルク様を待たないか?」
「それだと、鉱山の危険に間に合いません。このやり方はうまく行く気がするので大丈夫です。それと一度村から出たらアルク様が戻られるまで、絶対に村に入れませんので私は鉱山に行きます。万が一火事が起こった時だけは水魔法が使える方で消化をおねがいします。アルク様が帰って来たら鉱山に来てくれるように、伝言おねがいします。」
村の人達はなんとか理解してくれた。
「松明をもらえますか?」
村の人達に松明を頼んで、私は『召喚魔法』を使った。
召喚魔法で取り寄せたものを『収納魔法』で空間の中にソレを入れた。
「ほらハナちゃん松明だよ。」
「ありがとうございます。皆さんは絶対に村から出ないで下さい!」
私はみんなの返事も聞かずに村から走って出ていった。
魔物が向かった鉱山の方角へ。
『鉱山への道標』
私は虹色の光を放ち、道標が指す方角に。




