3章 第33話 条件付きの許可
三日間、私は帳面と向き合った。
徴収は通常税とは別に来る。
四度で終わる保証はない。
農作は削れない。
治水は崩せない。
人を煽れば、町は割れる。
加工事業。
穀物を粉にし、乾燥ブロックにする。
干し野菜を規格化する。
塩漬け肉の重量を統一する。
保存性を高め、商都へ流す。
徴収対象は“原料”が中心だ。
加工品は徴発対象になりにくい。
非徴収資産を作る。
だが問題は人だ。
【やってみたい】
【怖い】
【家族が反対するかもしれない】
【失敗したらどうする】
芽はある。
芽を折らぬ枠が要る。
一、完全自由参加
二、農作・治水の人員を侵食しない
三、繁忙期即時停止
四、帳面公開
止める条件の方が多い計画書。
それでいい。
再び領主執務室。
父は書類を読み込む。
沈黙が長い。
「選抜基準は」
「本人の同意を二度取ります。面談と書面で」
「煽らぬか」
「煽りません」
「お前の言葉は人を立たせる」
事実だ。
「立たせるな。歩く者だけを選べ」
「承知しています」
父はページを閉じた。
「農作と治水への影響は」
カイが答える。
「季節限定。緊急時は即帰還条項」
「利益配分は」
「三割参加者、三割備蓄、四割領予備」
父は私を見る。
「なぜ四割を領に」
「徴収増加への緩衝材です」
一拍。
「自らの名のためではないな」
「違います」
父は短く言った。
「許可する」
だが続ける。
「条件がある」
「一つ。本当にやりたい者だけを集めろ。迷いを抱えたまま立たせるな」
「はい」
「二つ。農作と治水に影響が出た時点で中止だ」
「はい」
「三つ。帳面は公開し続けろ」
「承知しました」
そして父は問う。
「住人にどう伝えるつもりだ」
私は答える。
「戦の不安は煽りません。徴収を止めるとも言いません。ただ、備えを増やすと伝えます」
「安心を壊す自覚はあるか」
「あります」
「なら言葉を誤るな。お前は領主ではない。だが領主代理だ。
お前の言葉は領の方針として受け取られる」
「はい」
視界に浮かぶ。
【怖い】
【だが必要だ】
【……頼む】
父は祈らない。
だが託している。
私は深く頭を下げた。
守りすぎた町に、余剰を作る。
終わらぬ前提で動く。
それが、この領の新しい備えになる。
次は――
伝える番だ。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
この物語は、派手な奇跡ではなく、小さな選択と積み重ねを
大切にして書いています。
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