マンガ家な奴
メイドさんに、仕事の愚痴だったり、話してる。
メイドさんは、ゆあっていうらしくて。ゆあさんは、今美大の3年生で、今年から就活なんだって。
そんな話を聞きながら、色々思い出してしまった。
自分が美術に関係ある仕事に就けなかったこと、それなのに、まだマンガ家の夢を追い続けていることとか。
「ねむくんは、お絵描きとか好きなの?」
「あ、ああ、まあたまに描く程度かな……」
「え! 絵描くの? みたーい!」
「えー、俺の絵なんて見たってどうせ」
「見せて見せて!」
そうして、「その恋は星空のように」の1番上手く描けたワンカットをカメラロールから探してみせた。
ゆあちゃんはそれを見て、言葉を失っていた。
「……ゆあちゃん?」
「ねえ、ねむくんって、今なんの仕事してるの?」
「え、普通に営業だけど……」
「なんで、なんで美術系の仕事につかなかったの? ねえ、なんで?」
「いや、つかなかったんじゃなくて、つけなかった……た」
「そっ……か」
「……うん」
「……私、マンガ家になりたくて。なれる、かな……た、例えばさ? 卒業作品で手塚賞取ってデビューとかさ、それとか、大手の出版社に、持ち込んで、それがマンガ大賞に選ばれたり……」
「……当たり前じゃん。できないわけないよ。そんなに、絵がうまくて」
「でも、ねむさんでも無理なんでしょ? じゃあ、私にできるわけ!」
「そんなの! ……そんなの、わかんないよ。わかんない。全てわかんないよ。エンタメなんて、そんなもんだよ……でも、ゆあさんは上手いよ。これは絶対そう。そのメイクも、このオムライスの落書きも。それは確実だから」
「……今度、私の生誕なんだけど、何かプレゼント、くれる?」
「……何がいい?」
「えっと、ディオー……シャネ……本当に、欲しいものでも、いい?」
「なにがほしいの?」
「私が、推しの彼方くんに、そっけなくされながらも、私を愛してくれる、みたいな……」
「彼方くんってあの、HIDE THE SHOOT の? バスケ漫画の?」
「……うん」
「あー、そのイラストを描いて欲しいと」
「あ、いや、今のは冗談! 私ね、これ入れてくれたら嬉しいな〜」
そう言って見せられたメニュー表には、10万エンジェルと書かれた、シャンパンがのってる。
「10万エンジェル……」
「あ、そろそろ時間だ。延長する?」
「いや、今日は帰るよ」
「そっか! また、生誕来てね」




