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第82話「女神と美少女の共通項①」

概して女子は、ハーブ好き。

あくまでも、俺の持つ個人的な印象だけど。

 

多分だが、ハーブに対して、良いイメージがあるのだろう。


身体に良いとか、美容に有効だとか……


香りが『アロマテラピー』というのも、女子達の心のツボへ響くに違いない。


ハーブの香りが、嫌いとか、苦手だという男の話はたまに聞く。

けれど、女子では全然聞かないもの。

 

いきなり転生させられた、この中世西洋風異世界でもそう。

聞けば、ボヌール村の女性達も、俺の嫁ズを含めて全員がハーブを好きだという。


その中でも突出してハーブ好きなのは、嫁のひとりリゼットである。

彼女の夢は、将来ボヌール村に素晴らしいハーブ園を作る事だ。

 

リゼットは数年前、エモシオンの町でハーブティーを飲んだ事がきっかけで、

村にハーブ園を作る事が出来ないかと考えた。


更に……

西の森で偶然見つけた野生のハーブ園が、彼女の夢の実現を後押ししたのである。


そしてリゼットは病気の祖母の為に、ハーブを取りに行った事がきっかけで、

将来の夫となるであろう俺と知り合った。


それが最大の理由らしいが、

ハーブは自分の『超ラッキーアイテム』と考えているらしい。


一方、ハーブ好きなら、女神様クッカも決して負けてはいない。

 

何たって、天界ではふたつ名が『お茶汲みのクッカ』だもの。


クッカの持つハーブの知識は、凄いモノがある。


森へ行った時にはっきりと実証されたし、

今までの話振りだとハーブティーには目が無い。


リゼットと双璧の、ハーブ好きだと言えるだろう。


……今日は、そのリゼットの夢を叶える記念すべき第一歩の日。


天気は、ボヌール村お約束の雲ひとつナッシング、真っ青な快晴。

つまり最高のお出かけ日和。


朝早く一緒に出て、俺とリゼットは西の森の『ハーブ園』へと向かっている。


野生のハーブ園は、女性にとっては憧れで楽しみな場所らしい。


特別ハーブに興味がない俺でも、『楽園』だと思ったくらいである。

ハーブ好きな嫁ズにとっては、推して知るべしであろう。


実は……リゼット以外の嫁ズにも伝えた所、

やはり当初は「全員で行こう」という話になった。


特にリゼットの親友クラリスは、植物好きなので行く気満々だった。


しかし協議の結果……

最初は俺とリゼットの『ふたりきり』で行かせてくれる事になったのである。

 

これは以前にクラリスと、『ふたりきり』で村内デートさせてくれたのと同じだ。


他の嫁ズの、思いやりって事。

俺とリゼットにとって、西の森のハーブ園は、

ふたりの出会いのきっかけを作った場所として思い入れが深い。


そのように考えてくれ、

「先にふたりきりで思い出を作れ」と気を利かせてくれたのである。

 

ああ、ウチの嫁ズは皆、優しいし気配り抜群。

その上、超美少女ばかりであり、俺には勿体ないくらい自慢の嫁ズだ。


え? もうお腹がいっぱい?


前にも聞いていて、何度もしつこいし、自慢はもうNG?


勝手に爆発していろと?

……そうですか、どうもすみません。

  

ところで今回のハーブ園行きで、数名同行する者が居た。

ふたりきり、というのは人間は、ふたりきりという意味である。

 

まず幻影のクッカは内緒でサポート役にて参加。

加えて、俺が異界から召喚した俺の従士達フルメンバーである。


俺が居るが、従士達は一応、護衛役。

ここ最近暴れていないので、ストレス発散の意味もあった。

 

なので、ミシェルから借りた荷馬車を牽引するのは、

悪魔の愛馬であった妖馬ベイヤール。

目立たないよう、地味な馬に擬態している。

 

本来持つ逞しい鹿毛の馬体は、そこらに居る並みの馬にしか見えない。

荷馬車の少し前を軽快に駆けているのは、

これまた普通の犬に擬態した冥界の魔獣ケルベロス。


そして荷台に丸くなって寝ているのは、

強硬に同行を主張した、妖精猫(ケット・シー)のジャンだ。


唯一ジャンだけは、外見が普通の白黒ぶち猫なので、

擬態せず『そのまま』である。


前回手酷く振られたジャンは、今度こそ村の雌猫達へ、

自分が『強い男』なのを証明したいらしい。


ちなみに、今回の西の森行きは俺と嫁ズ以外、他の村民達には内緒。

 

リゼットの両親である、村長のジョエルさんと奥さんのフロランスさん、

レベッカ父のガストンさん、にも伏せてある。


表向きは近くの草原へ、野草詰みに行く事になっていた。

ジョエルさん達へ言わなかったのは、確実に反対されるから。


相変わらず西の森には、ゴブの群れが相当数生息しているのだ。


凶暴なゴブの奴等は、数を頼んで獲物を襲う。

俺も、戦ってみて良く分かった。


あんな群れで襲われたら、ひ弱な人間などは恰好の獲物。

たまたま俺は、レベル99のチート魔人だから楽勝で撃退出来たが、

普通の人ならば、簡単に餌食となっていた。

 

ゴブの大群に襲われたリゼットが助かったのは、本当に幸運中の幸運だったのだ。

 

リゼットを助けた際、俺はレベル99の実力を隠す為に嘘をついた。

助ける事が出来たのは、

「相手の数がたまたま少なかった」と偽の報告をしたのだ。


すなわちゴブどもに勝てたのは偶然の産物、

あくまでラッキーだったという事になっている。


そんな危険な場所へ俺はともかく、村長夫婦が可愛い娘を行かせるわけがない。


「ねぇ、旦那様! 持ち帰って頂いたハーブのお陰でお祖母ちゃん、すっかり良くなったのよ」


荷馬車に揺られるリゼットの顔は、本当に嬉しそうだ。

そんなに感謝されると、俺も真夜中にハーブを採りに行った甲斐がある。


俺も何度か、負担にならないレベルで、お見舞いをして、

リゼットのおばあちゃんから、

そしてジョエルさん、フロランスさんからも厚くお礼を言われた。


「おおっ、良かったなぁ」


リゼットは、とても優しい女の子だ。

あの時はおばあちゃんが重い風邪で苦しみ、辛い思いをしているのが、

可哀想で我慢出来なかった。


だから命の危険を冒してまで、西の森へハーブを取りに行ったのだ。


「あの時……お父さんとお母さんには凄く怒られたけれど……最高の旦那様にも巡り会えたわ。絶対に創世神様のお導きとお祖母ちゃんのお陰だよね」


確かに、俺をこの異世界へと送り込んだのは、

創世神様に連なる、この世界の管理神様。


西の森へ行った原因は、お祖母ちゃんの風邪。

だから、その指摘は合っている。

バッチグーの正解だ。


リゼットは、つないでいる俺の手を「きゅっ」と握って来た。


ああ、柔らかい美少女の手! 天国だ!


『けっ! くそっ! 大爆発してろや!』


荷台から、憎々し気な舌打ちが聞こえる。


また『読者様』かと思ったら違った。


寝ていたジャンが、いつの間にか起きていた。

そして俺とリゼットのアツアツ振りを見て羨んだのだ。

 

俺は思わず苦笑して、肩を大きくすくめたのである。

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