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第78話「いろいろな可能性」

徐々に明るくなり、立ち直りつつあるレベッカへ、

俺は「何か悩みがあればすぐに言え!」と両手を広げてやった。


夫として、男として、何かあれば頼れ。

遠慮なく相談し、俺の胸へ飛び込め!と強く強く告げたのである。

  

飛び上がって、大喜びしたレベッカは、

とんでもなく甘えまくり、 超デレ状態となった。


まあ彼女は、俺の前ではいつもそうではあるのだが……


とにもかくにも、狩人レベッカが『完全復活』へ向け、順調なので俺は嬉しい。

 

モチベーションが爆上がりし、勢いがついた俺達は兎だけでなく、鹿もゲット!

獲物もたっぷり獲れたので、レベッカは更に復活感が増したようだ。

 

ところであの『事件』の際、俺が倒したオーガは葬送魔法で……塵にした。

襲われたレベッカが、とても嫌がったからだ。


葬送魔法は、誰もが忌み嫌う不死者(アンデッド)防止対策として有効だ。

本当は……オーガの部位を俺の小遣い稼ぎ用にしたかったけど。

 

実はエモシオンで自分の買い物が出来なかった不満から、

俺の小遣い捻出作戦をあれこれ検討中。


オーガクラスの魔物の部位は、結構な金になるらしいので。

 

どうせ、治安を保つ為、奴らをたくさん討伐しているから一石二鳥だ。

構想は、ほぼ完成しつつある。


そんなこんなで、狩りが終わった。


時刻は、もう夕方。


夕日がさす中を俺は、レベッカと一緒に無事ボヌール村へ戻って来た。

 

村の正門が見えて来て、レベッカが、思い出したように言う。


「ダーリン、獲物……まだ春だから、少しは、もつけど、早めに処理しないとね」


「おう! 獲物の保存処理か。大空屋の手伝いをした時にミシェルから聞いたけれど、生肉を燻製とか、干し肉とか、塩漬けにするんだって?」


「それはね、実際に食べる為の保存処理。その前の下処理よ」

 

「おう、その前の下処理か、レベッカから、血抜きは教えて貰ったけれど、良かったら、詳しく教えてくれないか、それ」


俺が聞くと、『復活レベッカ』は改めて、詳しく教えてくれる。


「うん、良いよ! 獲った獲物はね、夏とか気温が高い時期だと『足が早くなる』からあっという間に傷んじゃう。なので、まずは以前、ダーリンへ教えた、血抜きをするのよ。血抜きはさ、もう完璧に出来る?」


「おお、ばっちりだ。血抜きはもう大丈夫だぞ」


「うふふ、さっすが、ダーリン。そして持ち帰った獲物はさ、狩った時に応急の血抜きだけはしてあるけど、次には、腸抜きをする。内臓等々を取ってしまうの。これらで腐敗が進むのを、少しでも防ぎ、鮮度を長持ちさせるのよ」


「ほう! 血抜きと腸抜きで腐敗が進むのを、少しでも防ぎ、鮮度を長持ちさせるのか、成る程」


「うん! そうよ! 腸抜きは、その場ですぐにやる場合もあるけれど、原野や森で獲物を解体していると、魔物や肉食獣などが寄って来るから、面倒な事になる。なのでボヌール村の猟師達は、村へ持ち帰ってから、じっくりと処理をする事が多いわ」


「おお、成る程な」


「腸抜きをしたら、毛抜きをするの。皮がむけないように注意しながらね。そして解体するのよ」


「この前、レベッカの作業をちら見していて思ったけれど、相当、手間がかかるよね」


「うん、獲物を狩ってから、解体するまで、更に食べられるようにするまでには、結構な手間がかかるわ。ちなみに村で飼っている家畜の処理も同じよ」


「ああ、そうだろうな」


「解体が終わり、肉塊にしたら、更に食べやすく、小分けに切り分け、その生肉を焼いたり、煮たり、揚げたり等の料理をして食べるか、更に手間をかけて保存食にするの。ダーリンが言った燻製とか、干し肉とか、塩漬けとかね」


「おお、保存食は重宝するよな」


「うん! 凄く重宝するし、特に冬季には貴重な食料だよ。でもさ、こんな事言っちゃ駄目なんだけど……私さ、狩るのは好きなのに、帰って来てからの獲物の処理って少し面倒臭いんだよね」


「あはは、分かるよ」


「うん! でもさ! この前、私は入れ込んじゃったけれど、ダーリンの言う氷室が出来たら、ボヌール村の暮らしは著しく改善すると思うよ。これまで鮮度の落ちた肉は、すぐ捨てたりせず、よ~く焼いたり煮たりした上で、ソースを使い、味を誤魔化して食べたりしたから」


「むう、そうか……大変だったんだな」


「うん! でもダーリンってさ、凄いよ! いろいろな事を知っているね!」


「ははは、かもな。ただ知らない事もたくさんある。こうやって、レベッカ達に教えて貰わないとな」


「うんうん! こうやって、家族が、いろいろと助け合って行けば良いと思うよ! 氷室が作れたら、他にもいろいろと役立ちそうだし! いろいろな可能性が広がるね!」


「だな! また皆で相談しよう」


俺とレベッカは、自宅へ帰らずに大空屋に行く。

最近は、大空屋で嫁ズと一緒に夕飯を摂る事が多い。

 

将来の共同生活に備えて少しずつ慣れて行こうという趣旨で、

嫁ズの親からもOKを貰っている。


「旦那様、レベッカ、お帰りぃ!」

「お帰りなさい!」


今日、店番をしていたのはミシェルとリゼット。


リゼットもこの前の手伝い以来、大空屋の店番を仕事のローテに入れた。

結構、楽しそうにやっている。


店番は、将来、ハーブを売る練習でもある。


「お疲れ様でした」


農作業を終えて戻っていたクラリスも、一緒に店番。


この子も、本当に良く働く。

必殺の癒し笑顔で、出迎えてくれたのである。


クッカが実際に食べられないのだけ残念だが、家族全員で摂る夕飯は楽しい。


わいわいがやがや……今日あった事を報告し合う。


レベッカは自ら、話す。


今までトラウマがあった事。

今日、俺と狩りへ行って慰め、力付けて貰った事。

そして立ち直れそうだと……


復活したレベッカを、誰もが自分の事のように喜んでくれる。


家族誰かの幸せは、皆の幸せ。

俺の嫁ズは皆、本当に良い子ばかりだ。


――夕飯後


お茶を飲みながら、『氷室』の二次利用の話をした。

 

嫁ズからは、いろいろ使用方法の意見が出た。

料理ではないけれど、これから、じっくりと精査し、煮詰めて行こう。


ちなみに、今は春真っ盛りで氷も雪も無い。


だから俺の水属性魔法で氷も雪も、両方を人工的に作るつもりだ。

その前に、地属性魔法で、頑丈な地下室を造らないと!


「じゃあ旦那様、おいおい氷室の設営と長年の懸案事項である外柵修理を一緒にやろうね」


ミシェルの言う外柵というのは……


農地のすぐ傍にある、組んだ丸太を使用した簡易だが、頑丈な防護柵である。


ボヌール村の境界線上に、築かれた『生命線』ともいえる防護柵なのだが、 

数年前に起きた大規模な魔物の襲撃の際に徹底的に破壊されてしまったという。


これが無いと村民が、農作業をしている際に、無防備状態となり、

いきなり襲われてしまうどころか、

勢いに乗った魔物が押し寄せ村を蹂躙してしまう。

 

さすがにオベール様の資金援助も出て、

更に村民達が持ち回りで少しずつ直しているのだが、

普段の農作業等が優先され、まだ8割くらいしか修復していないようだ。

 

俺も、近いうちにこの作業に従事する事となるだろう。


さてさて! 時間は、まだ宵の口。


嫁ズとは、まだ話していたいところではある。


だが……今夜はクッカとのデートが控えている。

 

名残惜しそうな嫁ズへ、俺は「おやすみ」を言い、自宅へと戻ったのである。

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