表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/237

第70話「真夜中の訪問者①」

異界から呼び出した俺の従士、妖精猫(ケット・シー)のジャン。


俺の指示に従い、宿の窓から屋外へ、ぱっと出て、

町中を、素早い身のこなしで、

どんどん、どんどん、凄まじい速度で駆け抜けて行く。


初めて知ったけれど、猫の目って色が曖昧に見えているんだ。

夜だと、殆ど白黒に近いらしい。


そして、当たり前なのだが、猫の視線はやたらに低かった。

地面より、ほんの少し高いくらいか。


ここで、ジャンの、心の声が聞こえて来る。


『お~い、ケン様ぁ、何だか、気持ち悪いよぉ……』


『おお、そうかい? たいした事ない、大丈夫! 大丈夫!』


『はあ? 本当に大丈夫なのかよ? 猫ごとだと思ってよ! 俺の目を通してさ、ケン様も景色を見ているんだろ?』


『ああ、ばっちり見えているぞ。お前は今、確実に俺の役に立っている。安心しろ』


俺とそんな会話をしながら、ジャンは機敏な動きを見せる。

猫特有な、キレッキレッという奴だ。


走る速度も相当なもので、あっという間に中央広場を抜け、

城館がそびえる丘を駆け上がった。


ちなみに猫は最高速度、時速40㎞以上らしい。

その代わり犬よりも持久力では劣る。


例えれば、短距離走のトップアスリート。

獲物を追いかける時などに、素晴らしい瞬発力を発揮するのだ。


当然ながら、妖精猫(ケット・シー)のジャンは、

通常の猫より遥かに遥かに速く走る。

多分だが、時速70㎞は楽に超えているだろう。

 

見やれば、景色が、飛ぶように変わって行く。


ジャンの視点で移り変わる景色を見る俺は、

まるで前世のレーシングゲームを遊んでいるみたいな感覚なのだ。


だが、エモシオンの町はそんなに広大ではない。


そんなこんなで、ジャンはすぐ、オベール家城館の正門前に着いた。


夜中なので門番などは居らず、木製の正門は固く閉ざされている。


さすがに、約15mほどありそうな正門の真上は飛び越えられないと見たのだろう。

 

ジャンは左右を見渡すと、城壁が低くなっている場所を探した。


低い場所といっても、城壁は8m以上は楽にある。


しばし、うろうろしたジャンは、「ここだ!」と目星をつけたらしい。


飛び上がる位置の狙いを定めると、

猫特有の『お尻振り振り』をして、ぱあっ!と城壁の上に飛び乗った。


ジャンが見やれば、城壁の内側は、芝が一面に植わっていた。


飛び降りて、ダメージを受けずに着地するには好都合だ。

さすが妖精猫(ケット・シー)、音も立てずに、すたっ!と地面へ飛び降りた。


そして……ジャンが居る、目の前には城館がある。


典型的な中世西洋風、石造りで4階建ての城だ。

果たして、目指すステファニーはどこだろう?

 

このような時には、索敵の魔法だ。


昼間、あれだけお尻を叩いて、悲鳴ともいえる心の、……魂の波動を感じた。


それゆえ俺はステファニーの『気配』を覚えている。


反応さえキャッチすれば、居る場所の特定は容易なのである。


『ええっと……どこだあ? 貴族のお姫様はよお?』


ジャンも、きょろきょろ左右を見渡す。


と、そこへ俺が指示を入れる。


『ジャン、今、俺が索敵の魔法を掛ける。お前の身体を通じて発動するぞ』


『え!? やや、やめてぇ~!』


俺が魔法を発動すると、やはりジャンの身体は相当(しび)れるらしい。


おお、クッカの言った通りだ。

 

ビリビリビリ! ビリビリビリ!


身体が痺れ、感じた痛みから、思わず、ジャンはひと鳴き。


「にゃおん!」


「あれっ!? あんな所に可愛い猫ちゃんが居る」


ひとりの少女が、4階の窓から身を乗り出してこちらを見ている。


何と!何と! 偶然にもステファニーであった。


これこそ、怪我の功名という奴である。


魔法発動の痺れに耐え切れず、思わず鳴いたジャンの声。

猫好きのステファニーが、たまたま聞きつけたのだ。

 

綺麗な女子の声に気付いたジャンは、ステファニーの居る窓を見上げた。


城館の石造りの壁面は所々でこぼこしているが、

角度はほぼ直角でいくら猫でも登るのは難しそうだ。


案の定、ジャンは泣きを入れる。


『ケン様、いくら妖精猫(ケット・シー)の俺でも、さすがに垂直の壁は無理だ』


『分かった、俺が転移魔法を使う。その前に役得だ、ステファニーと念話で喋らせてやろう』


『うおおおお! 美少女と直接、会話っすかあ!? ラララ、ラッキーぃ!!!』


狂喜するジャン。

何なんだ、こいつは……


俺は早速、魔法を発動する。


ジャンの心とステファニーの心が魔法の波動で繋がった。


こういう事も、全てクッカから教わっている。


『そら、呼び掛けてみろ』


『ええっと、俺はジャン。スス、ステファニーちゃんかい?』


猫がこちらを見詰めた上、何と念話で話し掛けて来た。

なので、ステファニーは仰天したらしい。


目を大きく見開いて、手で口を押えている。


『お~い、ステファニーちゃわ~ん』


「!!!???」


ジャンは文字通り猫なで声でステファニーに呼び掛ける。


しかし庭に居る猫から何故、心へ声が届くのか?


ステファニーには全く理解出来ないらしい。

まあ、当たり前だよな。


『へへへ、俺はジャン! 妖精猫(ケット・シー)のジャンさ』


『え、えええっ!? 猫が私の心に喋ってる!?』


『だ・か・ら・ぁ! 俺はジャン。ただの猫じゃないの、妖精猫(ケット・シー)なの! それよりさ、すっごく可愛いんだってね、君』


『あ、あの~……』


『ねぇねぇ、暇してるんだったらさぁ~。今度、遊びに行かない?』


ジャンの執念は、もの凄い。


いつもの、いいかげんを絵に書いたような、淡白な軽いチャラ男が、

嘘のように自分をアピールする。


こいつ、女の子の事となると。こんなにも、まめで熱いんだ。


しかし、もう潮時じゃね。


『ごら、ジャン。いい加減にしろよ! もう良いだろ』


『え~!!! もうちょいで落とせるのにぃ』


はあ? 落とせる?


こいつ……ナンパのつもりか?


何、考えているんだ? 

ここまで来て、正気か?


本当に良い根性してやがる。


いや、俺も……少しは、見習うか、ジャンの女子への執念。

否、ひたむきな献身を。


苦笑した俺は、ジャンにきっぱりと言い放つ。


『お前なぁ……俺の指示に従わないと、また魔法を掛けるよ、今度は失神するくらい強力な奴』


『ひ、ひえっ! わわわ、分かりました』


俺の怒りのこもった言葉にジャンは即、ステファニーへの『口撃』を取り止めた。


『???』


いきなり会話に乱入して来た俺の声を聞いて、

ステファニーはやはり、びっくりしたようである。


これ以上、ステファニーが驚かないように、俺はゆっくりと話し掛けた。


『悪い、……ステファニー、御免な……俺だよ』


……聞き覚えのある声。


更に驚いたのであろう、ステファニーの心の波動がさざめく。


『え? 今度は誰? ……い、いえ!! こ、この声は!? も、もしかして!!』


『ああ、頼むから、このまま念話で話してくれ。見つかったら大騒ぎになるから、絶対に大きい声を出さずにね』


『えええ!? や、やっぱり! ケン!? も、も、もしかしてケンなの?』


俺の声を、確かめようとするステファニー。


じゃあ、ステファニーの期待に応えてやるか。


『そう、ケンだ。こいつは俺の従士である妖精猫のジャン、こいつの心を通じて、俺達は喋る事が出来るんだ』


『ケ~ン!!!』


ステファニーが、心で叫ぶ。


俺とジャンにしか聞こえない彼女の心の叫びが、喜びの声が、

オベール家の城館の庭に、大きく大きく響いていた。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

《紙版、電子版》

何卒宜しくお願い致します。

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、


⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》


⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》


⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ

る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》

⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》

も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ