第63話「ど派手お嬢様に気付かれた?」
大空屋の仕入れも、私用の買い物等々も無事終了。
エモシオンの町へ来た目的の大半は果たした。
そして、気が付けば、もうお昼どき。
ランチタイムである。
仕入れ&買物に集中して腹も減ったので、
3人が、全員賛成で昼飯を食おうという事になった。
ここで、ミシェルがまたも、「私に任せて」と言う。
「良い店に心当たりがあるから」と。
善は急げ! 俺達は、早速歩き出した。
しかし辛い!
おいおい、いきなり何が辛いのよ? 愚痴るのよ?
と聞かれれば理由は、はっきり。
いや、決して疲れたわけじゃない、
ずばり……『金欠』でっす!
え? な~んだ、金欠かよ?と言うなかれ。
結構、切実な問題なんだ、これ。
あちこちで買い物をしていてひどく痛感したのは、
俺が自由に使えるお金が全く無い事。
いわゆる『小遣いゼロ』の状態なのです。
市場の中には、俺の物欲をそそる物も多数あったから。
そう、『個人的』に買いたい物が結構ね。
しかし今回の護衛の報酬『金貨100枚』は、嫁のミシェルがガッチリ管理している。
なので、さすがに私的な小遣いをくれとは言えない。
俺が今までに倒したゴブやらオーガやら、魔物の部位を、
こまめに回収し、加工してどこかへ売れば、結構な金になったかもしれない。
……だが、良く考えてやめにした。
だってさ、こんな15歳の非力そうな少年の俺が、
「それをやる」とあまりにも目立つだろう?
部位の入手場所、方法を根掘り葉掘り聞かれて、ガンガン追及され、
挙句の果てに身元まで突っ込まれる。
それをいちいち誤魔化し、言い訳するのが面倒くさい。
じゃあ大人の別人に変身して、こっそり売るとか、
いっそ冒険者ギルドに別人で登録するのは、どうかって?
そして受けた数多の依頼を地道に確実に完遂し、稼ぐとか。
まあ、確かに……冒険者となり、依頼を完遂。
報酬を受け取るのは、中二病の俺に適した稼ぎ方だ。
だが、冒険者ギルドの身元チェックは結構シビアという認識が俺にはある。
調べられて、万が一ぼろが出て、小細工がバレ、
大問題となったら、いろいろヤバい。
まあ、百歩譲って……大人になるにしろ、冒険者になるにしろ、
魔法による変身、擬態で、身元は何とか隠せるとしても……
物品の売却、受諾した依頼の完遂にはある程度の時間を要し、
その間は村を留守にする事は確実。
結果、正式な村の住人になったばかりの俺が、
さしたる理由もなしに長期の不在となる。
どこかの誰か某みたいに、身代わりとなるコピーロボットなど無いしね。
話を戻すと、長期不在は、はっきり言ってまずい。
加えて、行き先を告げずにこっそり居なくなったら、
嫁ズを始め、村の人達に心配をかけ且つ不審がられる。
もしも嫁ズへ告げてOKを貰い、動けたとしても、村民達から不審がられる。
まさか、ず~っと『引きこもり』というわけにも行かない。
そもそも長期引きこもりなんかをしたら、
新入りの癖に何事だ! 村民達から大いに顰蹙を買う。
村における俺の評価、評判はがた落ちになるのは、確実だし、
あんな男などやめておけ、みたいな空気となり、嫁ズにも大迷惑をかける。
……なので、とりあえず却下。
まあ、すぐに妙案は出ないし、時間も無いから、後でじっくり考えるが、
今後の事を考えれば必ず自由に使える小遣いは欲しい。
落ち着いたら、何か、他に金を稼ぐ良い方法を考えよう、そうしよう。
しかし、前世の俺も金がなくて、バイトに明け暮れていたけれど……
まさかこの、中世西洋風異世界へ来てまでも、金欠に悩むとは予想出来なかった。
そして金といえば、このエモシオンの町中ではやたらに貼紙がしてあった。
とんでもなく高い金額が、掲示されている紙面に躍る。
西部劇の「悪漢はこいつだ! 捕まえろ!」みたいな奴。
すなわち、ウオンテッド的な貼り紙である。
その内容はといえば……
『勇者を見たら即、通報!』
………勇者認定された者を通報した方には、高額報奨金を保証します。
貴方も! 勇者発見で大金持ちになろう!!
エモシオン領主 騎士爵クロード・オベール
ああ、……何なんだ。
これじゃあ、まるで勇者って……指名手配の犯人じゃね~かよ。
それも、大きく派手な文字が踊る脇に、
ど下手なイラストで革鎧のムキムキ戦士が描いてある。
おいおい、この絵は何だ?
あくまでイメージです……って奴か?
アホらしい!
俺は、軽く舌打ちすると、
笑顔で先を歩く、ミシェルとレベッカの後を追ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで……ミシェルに連れられて来た店は、
昨夜の居酒屋よりも、だいぶ高級そうな店であった。
こんな店が、このような辺境の田舎町、エモシオンにある不思議さ。
まあ、あの管理神様が超アバウト、
適当を具現化したようないい加減さだから……ありえるか。
やはりというか、店内も格段に綺麗で、内装も凝っている。
給仕をするのも、昨夜みたいなメイド少女ではない。
何と男子オンリー、独特の「ぱりっ」とした、給仕用制服を着用した、
イケメン男子ばっかりなのだ。
ああ、レベッカが彼等を見て、少し「ぼうっ」としている。
おい、ちょっと顔が赤いぞ。
もう、こいつ……絶対に『面食い』だな。
どうせ、俺はフツ面以下だけど、こらっ! 浮気は駄目ですよ。
俺がレベッカの袖を引っ張ると、
「いけね」とばかりに舌を出して「てへぺろ」状態になった。
ううむ、普段の凛々しい顔との大ギャップ、てへぺろ顔が凄く可愛いから許そう。
苦笑した俺は話題を「がらり」変えようと、今度はミシェルに尋ねる。
「だけどミシェルったら、こんな店、いつどうやって知ったんだよ?」
俺が尋ねても、ミシェルは、ただ、「にこにこ」している。
あの、その「にこにこ」って……どんな意味っすか?
と思っていたら、カミングアウト。
「ええっと、ね。ケン様。今回とは違う商隊の人に連れて来て貰ったの」
おいおいおい、こんな店に美少女を連れて来る商隊の奴って何者?
もしも男だったら、絶対に下心アリアリだろう?
なので俺は……すっごく気になった。
うわ! ジェラシーだ、これ。
レベッカから、これまでミシェルの男絡みは、
あのクソ馬鹿カミーユ以外何も無い、と教えて貰ったが……
つ、追及しなければ!
「ここに? 商隊の人に連れて来て貰った? それって誰? 男? それとも女?」
焦った俺が質問攻め&ジト目で見ても、ミシェルは無言。
相変わらず可愛い、お澄まし顔だ。
もしかしたら昨夜、俺がメイド少女を「ぼうっ」と見ていたからお返し?
まあ良いか……俺は切り替える事にした。
私見だが、はっきり言って、男の嫉妬は醜い。
傍から見ても、みっともない。
あくまでも、男から見てだがね。
まぁ……昨夜の件があったから、却って安心。
ミシェルは、とっても身持ちが堅い女子だと判明したし。
護身術も身に付けているし。
それに俺だって、少しは『器の大きさ』を見せないといかん。
『ちっさい奴』と嫁ズに思われるのは、絶対に嫌だ。
「分かった、ごめんよ。もうこれ以上聞かない。俺はミシェルを信じるよ」
と、言い放ち、この件はおしまい。
さてさて!
店内はお昼時なので、やはり満席に近い。
だけど空席があったから、俺達はすぐ案内され、運良く待たずに座る事が出来た。
周囲の客も何となく品が良い。
やはり、昨夜の店とは違うのか。
俺の好みだけなら、メイド少女満開な昨夜の店がダントツに良いけれど……
全員が席に座って、ようやく落ち着いた俺達。
注文をしようとした瞬間。
革鎧姿の若い男3人に連れられた、
裕福な身なりの、お嬢様という雰囲気の少女が店へ入って来た。
体つきががっちりしている革鎧姿の若い男3人は従者って感じ。
4人は「リザーブ」という札が置かれた席に当然な顔をして座る。
何気に……俺は改めて少女……お嬢様を見た。
見やれば……スレンダーなお嬢様の背は160cmくらい。
金髪で碧眼。
髪が結構長い。
さらさら綺麗で肩よりも少し長いくらい。
そして、結構な美人だ。
でも顔立ちは整っているが、つくりが派手な雰囲気。
加えて、化粧もバッチリ。
はっきり言って、ケバい。
またお嬢様の着ている服は、俺の好む趣味とはほど遠い。
キンキラ成金的悪趣味な……いや、『ど』が付く派手な服を着ている。
そして、スレンダーなスタイルはまあまあなのだが、全体的に華奢なつくりだ。
ああ、俺も人の事は言えない。
少しでも可愛い女子と見れば、つい反射的に観察してしまうのだから。
それも今回はガン見に近い、じっくりな観察。
ど派手なお嬢様を見ていたら、先方は俺の視線に気付いたらしい。
見られていると知った、ど派手お嬢様は、大きく頷き、「にやり」と笑う。
ああ、目が……合っちまった!
うう、凄く嫌な予感……
俺は思わず、ど派手お嬢様から視線を外し、
思い切り顔を伏せてしまったのである。
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