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第276話「クライマックス」

俺の身振り手振りを交えた独特な口上、効果的な太鼓の音、

そして嫁ズの突っ込み、ボケは次第に周囲を巻き込んで行った。


最初は遠慮がちだった俺の子供達を含めた、ボヌール村お子様軍団も、

嫁ズと同じようにボケと突っ込みをして来るようになっている。


更には、子供達だけではなく、年配者も大人も、

観覧している村民達の殆どが、主人公である靴を履いた猫に対し、

大きな熱い声援を送っていた。


そうこうしているうちに、いつの間にか……


広場に面した民家の屋根の上に、村の猫がいっぱい居た。


猫達の真ん中に、ジャンが偉そうに寝そべっている。


当然、奴にも事前にこの紙芝居の話をした。


詳しく説明しても、「ふうん」と無関心な感じだったが……

やっぱり、凄く気にしていたんだ。


うん、天邪鬼なジャンらしい。


改めて見れば、ジャンは屋根の上で雌猫たちへ、

そりかえるぐらい得意げに胸を張っている。


俺は、こみあげる笑いを押さえ、話を続けた。


ちなみに、ジャンだけを持ち上げるのは不公平なので、

ケルベロスとベイヤールにも約束している。


いずれ犬と馬が大活躍する話も、個別に上演すると。


という事で……やがて物語は、終盤のヤマ場へと向かって行く。

 

豪華絢爛な城と広大な領地を持ち、恐怖をもって人間を苦しめる凶暴なオーガ王。


こいつと、主人公である靴を履いた猫が繰り広げる、最高の対決シーンだ。


「オーガ王、貴方はお強い! 素晴らしい魔法も使えるぅ! 何にでも化けられますねぇと、猫が言う! 対してオーガは大きな口を、がばぁっと開けながら、当たり前だぁと吠えるぅ! ごうっ! と大きな唸り声と生臭い息が猫にもろ、かかったぁ」


どんどんどん!


俺は太鼓を叩き、傍らに居たレベッカを見た。


以前起こった事件で、レベッカはオーガに対してトラウマがあるからだ。


まあ、練習の時から、オーガの話になる際、

レベッカはちょっとぎこちなかった。


なので、悩んだ俺は敵の設定を変えようかと思ったが、

ある方法を試してみる事にした。


俺は、レベッカの手を、そっと握ってやる。


案の定、身体を固くしていたレベッカは、嬉しそうに俺を見た。

俺は「きりっ」として頷くと、またも話を続ける。


「猫はくっさ~、汚い息を吐くなぁ! と思いながらぁ、我慢して、鼻をつままず、何とか平静さを保ったのだぁ」


「あははははっ!」


俺の口上を聞いて、レベッカが笑っていた。


どうやら『臭い息』というのが、うけたらしい。

俺は「ほっ」として、繋いだ手をきゅっと握ってやった。


そして一方の手で太鼓を大きく打ち鳴らす。


どんどんど~ん!

 

「そして猫はここが勝負だぁと、……いかにも無理でしょ? って感じで首を傾げ、さらりと聞いたのだぁ」


どんどんど~ん!


緊迫した雰囲気から、いよいよクライマックスだと、全員が感じたのだろう。

老若男女問わず、大勢の村民が一斉に身を乗り出した。


俺は村民達の期待を一身に受け、独特な声色で言う。


「でもぉ、オーガ王はぁ、さすがにぃ~、ネズミみたいな小さい生き物にはぁ、化けられないでしょ?」


「あ~っ! パパ、それって、ねこのさくせんだぁ!」


もうノリノリになっていた、クッカとの娘タバサが叫ぶ。


話に集中して聞いていたから、タバサは猫の意図を見事に見抜いていた。


うん、観察力が素晴らしいぞ。

タバサ、偉い!


よっしよし!


親馬鹿な俺は、凄く嬉しくなってしまう。


「おお、タバサ、そうだぞぉ、実は猫の作戦なんだぁ。で~も馬鹿なオーガは、ま~ったく、気付かない~」


俺が正解だと告げると、拳を握り締め、「ぶんぶん」と打ち振るタバサ。

凄く嬉しそうに笑っている。


「わぁ、パパ! すごぉい! ねこのさくせん、だいせいこう!」


「おお、大成功だぁ! 油断したオーガ王は魔法を使って、ぼん! ってネズミに化けちゃったぁ!!!」


どんどんど~ん!


「うわ、オーガ、ばっかでぇ!」

「すっげぇ、どじぃ。だまされたぁ、つかえない~っ!」

「さいてい~!」

「あくはほろびるぅ!」


ああ、タバサ以外のお子様軍団も目をキラキラさせて、叫んでいる。


さあ子供達、猫が『とどめ』を刺すぞぉ!

いよいよ、クライマックスだぁ!


「猫はぁ、作戦大成功とばかりに~、にこ~っと笑うとぉ、ぱっとネズミを捕まえてぇ、ぱくっとひと飲み~っ。哀れ、ネズミに化けたオーガは万事休すぅ、は~い! 猫のお腹の中ぁ!」


どんどんど~ん! どんどんど~ん!


俺が打ち鳴らす太鼓の音に煽られるよう、村民が歓声を上げる。


「「「「「わああああっ!!!」」」」」


普通に戦ったら到底敵わない、小さな猫が知恵を絞って、凶暴なオーガを倒した。


とても痛快な結末に、ボヌール村村民は全員が感動してくれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


その後のハッピーエンドは、もしかしたら付け足しかも。


『残り物』の猫を貰った三男は、元々人柄が良かった。

親しくなったお姫様に愛情を持たれ、三男は身分を超えて、結婚する。


そしてお姫様の父親である、王様にも気に入って貰い、

三男は次の王様になるのだ。


王となった誠実な三男は、自分を立派にしてくれた、猫の事を決して忘れない。


恩に報いて、立派な貴族にしてやった。


生活に困らなくなった猫は、

ネズミ捕りを、気晴らしとストレス解消にしたそうである。


……おしまい。


紙芝居が終わり、お辞儀をする俺に対し、大きな拍手が起こった。


村民は皆、嬉しそうな笑顔を浮かべている。

とても楽しんでくれたみたいだ。


ソフィの励ましの言葉が、紙芝居をやるきっかけだったけれど……

ああ、本当にやって良かった。


今回は、道具を作るのも苦労したし、嫁ズにも大いに頑張って貰った。

だけど、努力した甲斐はある。


また、村民同士の絆が深まった気がするから。


紙芝居……これからもバリエーションを増やして、もっと盛り上げて行こう。


俺がそう思った時……


いきなり、リゼットが「すっ」と手を挙げる。


え? 一体、何だろう?

 

そしてリゼットは、


「皆さん! 今日は大サービスです! これから、もうひとつ面白いお話をやりますよぉ!」


何? もうひとつ?


面白い話?


違うバージョン、作ってたの、紙芝居?


びっくりする俺に向かって……

嫁ズは全員、にっこりと笑ったのである。

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