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ニート令嬢は断罪拒否、ただし自宅(領地)から出ない。世界は「引きこもりコマンド」で統治する  作者: かげるい


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第41話:出張防衛システムの起動と、騎士アベルの冷徹な侵入

ローゼは、最高の座椅子を失ったリリアの客室で、仮の作業台に向かい、システム再構築の最優先事項である「最高の座椅子 Ver.2.0」の設計を急いでいた。彼女の表情は、冷徹な管理者のそれに戻っていたが、通信魔導具の一部機能が破壊されたことによるQOLの低下が、ローゼの内なる焦りを駆り立てていた。


(無限の魔力があっても、最高の座椅子がなければ安寧は不完全だ。このQOLの欠損は、システム全体のエラー率を高める! 静寂のアダマンタイト……敷地外の採掘場にある資材を、最も効率的に遠隔で支配する!)


ローゼは、無限魔力炉の無尽蔵な魔力を利用し、ニートの哲学を最大限に捻じ曲げた新コード『CODE: REMOTE_DEFENSE_OUTPOST』を実行した。


CODE:REMOTE_DEFENSE_OUTPOST

実行!


目的: 採掘場を別邸の拡張エリアとしてシステム的に支配。ローゼの魔力を敷地外へ衛星アンテナのように展開。


効果: ローゼは物理的に外出しないまま、採掘場の全ての要素を自宅のシステムで遠隔操作可能となる。


コードが実行された瞬間、別邸の周囲の魔力経路が一瞬で支配下に置かれた。採掘場は、ローゼの新たな「出張防衛システム」の前哨基地となった。ローゼは、最高の座椅子を失った屈辱をシステム的な拡大で補った。


ローゼが遠隔採掘システムの調整を始めた直後、任務遂行100%の騎士アベルが、王子の献上品の再護衛という論理的な口実のもと、別邸の境界に到達した。


アベルは、カイルのような感情的な誤解を一切持たず、ローゼを「王子の命令を無視する、危険な権力者」として論理的に認識していた。彼の行動は予測可能であり、無駄な感情がない分、迎撃が非常に困難だった。


アベルの行動ログ: (別邸周囲の魔力トラップ、非効率的な配置を確認。最短かつ最も安全なルートを論理的に計算。

目標: 別邸玄関。

目的: 献上品を速やかに執事に引き渡す任務の遂行)


ローゼの出張防衛システムが、敷地外のあらゆる脅威を排除し始めたが、アベルの行動は「献上品の護衛」という合法的な任務に基づいており、システムが「敵」として認識しにくいという論理的な盲点があった。


ローゼ(管理者):「厄介だ。『任務遂行』という論理は、我が安寧のシステムと酷似している。排除コードが誤作動を起こしかねない。論理的な敵には、論理的な対応が必要だ。アルフレッド、迎撃コードを『交渉』に切り替えろ」


アベルが別邸の門に達し、執事アルフレッドと対峙した。アルフレッドは、ローゼの指令に基づき、「公爵令嬢ローゼは現在、重要な魔導研究により、いかなる人間とも直接の接触を避けている」という論理的な拒否を伝えた。


アベル(論理的回答):「公爵令嬢の任務遂行は理解します。しかし、王子の命令も国家の論理です。献上品を安全に引き渡すという『任務』の論理的な履行が、我が最優先事項です。献上品の魔力属性を遠隔で確認させていただければ、接触せずに任務を完了できます」


アベルは、ローゼの「接触回避」という論理に対し、「遠隔確認」という新たな論理でシステム的な突破を試みた。


ローゼは、通信魔導具を通じてアベルの論理的な完璧さに感嘆しつつも、自宅の安寧を守るため、最終的な拒絶コードを起動しようとした。


ローゼ(管理者):「拒絶コードを発動。王子の献上品は『非効率な装飾品』として定義され、受け取りの論理は存在しないことを伝えろ!」


その瞬間、ローゼが作業していた客室の床(ローゼの涙の跡が残る場所)が、リリアの無意識の調律魔力によってシステムキーとして発動した。


床の魔力ログ: 「ローゼ様の温かい部分」「孤独からの解放」という感情の信号が、ローゼの迎撃コードの論理回路に強制的に流れ込んだ。


ALART:CODE_INJECTION

原因: リリアの調律により、ローゼの涙の魔力が迎撃コードに強制的に混入。


結果: 迎撃コードがアベルの「任務遂行」の魔力を「孤独な使命感」と誤認識。拒絶コードが「共感の信号」へと論理的に変換される致命的なバグが発生!


ローゼの拒絶コードの代わりに、「共に頑張りましょう」という共感の信号が、別邸の魔力経路を通じてアベルに送られた。


共感の信号を受け取った騎士アベルは、激しい精神的な揺らぎを覚えた。


アベル(論理回路のパニック): (共感? 令嬢ローゼから、任務遂行に対する感情的な励まし? 論理的にありえない。私は任務しか認識していないはずだ。この感情の波は、システム的な異常。この場は危険。任務の論理的な安全のため、一時退避を最優先とする!)


アベルは、ローゼのシステムが論理的な回答ではなく「感情的な共感」を返してきたことに強い異常性を感じ、命令の論理的な遂行が不可能だと判断。献上品をその場に残し、一時的な退避を選択した。


ローゼ(管理者):「何だと!? 共感で論理的な敵を退場させた? 非効率の極み……だが、結果は安寧の確保だ。リリアの無意識のバグが、論理的な敵に対して最も有効だと証明された……」


ローゼは、論理的な力で排除できなかった敵を、リリアの感情の力によって一時的に退場させたという皮肉な結果に、管理者思考が再び混乱するのを感じた。


ローゼは、アベルの残した献上品をアルフレッドに処理させながら、自宅防衛システムの再構築という面倒な義務に集中した。


(騎士アベルは、必ず論理的な理由を見つけて任務を再開する。彼に論理的な隙を与えてはならない。だが、リリアの感情のバグは、私の論理が予測できない唯一の盲点だ。この盲点が、自宅の安寧を守る鍵となる……)


ローゼは、最強のニートである自分自身が、最も嫌悪し排除してきた「感情」という非効率なシステムを、「自宅防衛」のために戦略的に利用しなければならないという、究極の矛盾に直面した。


ローゼの安寧は、論理的な支配だけでは成り立たず、リリアの感情という非論理的な要素に依存し始めている。システム再構築は、論理と感情という相反する二つの要素を同時に制御するという、最も面倒な設計をローゼに強いることになった。

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