056
魔城トーリーの儀式室、魔方円が黒く光った。
魔晶石が入り、起動の準備が出来上がった。
俺は、このゲームが大好きだった。
『グランドファンタジア・闇の大陸』は、初めてインディケーターが作ったゲームだから。
目の前で、俺はエフネの前にいた。
魔王の娘、バグであり、俺が作らなかった人間。
でも、このキャラには秘密があった。
「エフネは、慧風の姿」
「恵太が残したバグで、男駆は知らなかった」
「でも……君が描いたんだよね」
俺は恵太に言われて、1枚の絵を描いた。
悲しくも、切ない、小さな命のイラスト。
『直根 慧風』が生きていた証を、俺は描いていた。
「恵太から、この話を聞いたのはいつだ?」
「高一で家に遊びに行った日。日付は10月12日、今でもはっきりと覚えている。
いや、絵を見てはっきりと思い出したんだ。
俺は現代の人間をモデルに描いたことは、今まで無かった。
初めて、そして唯一描いた地球人のイラスト。
実在する慧風を描いて、恵太にプレゼントした。
まさか、その絵をバグに上書きするとは思わなかったけどね」
「やはり、神『男駆』が私を産みだしたというわけか」
「まあ、イラストチックになったけどね」
俺は、苦笑いをしていた。
ツインテールのエフネは、それでも俺の方を見上げた。
その顔は、寂しそうな目で俺を見ていた。
「もうお別れか……」
「そうだな、初めて現れた時はビックリしたが……あっという間だったな」
「ネットやスマホのある神々の世界も、悪くはない。
だけど私は父のいるルドファークの……フォートマス大陸が一番大好きだ」
「ああ、それを言ってくれると五十土は滅茶苦茶喜ぶぞ」
「そうだな」エフネは笑っていた。
笑っていたが、目には涙が溢れていた。
「泣いているのか、ホラっ!」
俺はハンカチを差し出して、エフネが手に取って涙を拭う。
「すまない、私はまだまだだな」
「エフネはまだ子供なんだし、泣いたっていいんだ。
何も恥じることはないし、それは許される世界がルドファークだ」
「うむ、またな」
魔方円が、強く黒く光っていた。
恵太がしびれを切らして、起動しようとしているのか。
「それじゃあな」
「また、ゲームの世界で」俺は儀式室を出て行った。
そして、俺は待ち構えた恵太と五十土と出会った。
「じゃあ、帰ろうか」
「そうだな、次のゲームも作らないとな」
「『グランドファンタジア・機械の塔』だっけ?」
五十土が聞くと、恵太が頷いた。
「ああ、作ろう。僕らのゲームを」
僕らも又、魔城トーリーを出て行くことにした。
そして、再び地上の土を踏みしめていた。
魔城が黒い大きな柱に包まれて、俺たちは見上げた。
魔城トーリーが、ルドファークに戻っていくのを。




