054
(DANKU’S EYES)
風のバリアの中からも、聞こえるエフネとバロルの言葉。
それはエフネが、バロルを思っての言葉の数々。
そして、バロルも又エフネに優しく語りかけた。
「これは……」
「バロルとエフネ、二人は血の繋がった親子ではない」
「それが、なぜあんなにも穏やかな関係でいられるんだ?」
戸惑う恵太は、バロルとエフネの穏やかな顔を見ていた。
「エフネは、バロルの間違いを正すとしっかり向き合った。
彼女の思いが、バロルにちゃんと届いたのだろう」
「間違いを正す?二人は、所詮血が繋がっていないんだろう?他人じゃないか」
「そうだ、親子ではない。血も繋がっていない。
でも、魔城トーリーで長いこと暮らすことで生まれた絆もある。
関係性って言うヤツかな、結びつきが強くなる」
「ばかな、そんなことあり得るはずが……」
「では、なぜエフネというバグを、お前は残した?」
「それは……」
俺の指摘に、さっきまでの強気のトーンが消えていた。
恵太はうつむきながら、一言呟いた。
「止めて欲しかった」
「そうか。でも、それは俺じゃない」
「うん、父に、家族に……止めて欲しかった」
暴行、妹の転落死、恵太は辛い幼少時代を過ごしてきた。
確かに父とは満足に会話が出来なかったことが、恵太の幼少期に傷となって残っていた。
さらに追い打ちをかけるように、恵太は唯一の理解者である慧風を失ってしまった。
それ故に、恵太は父と和解できなくなってしまった。
でも、恵太の父はそんなことはなかった。
俺は恵太の父から、謝罪の気持ちを聞いていた。
そのメッセージも、恵太は聞いていたが理解出来なかった。
認めたくないプライドが、彼の中にあったのかもしれない。
「やっぱり男駆には、隠し事できないな」
「当たり前だろ。お前が初めて出来た親友は、この俺だ。
俺にお前の事で、知らない事は無い」
「また随分と、大きく出たな」
「悪いか?」
「いや、悪くない。さすがは男駆」
恵太は、笑っていた。
彼が見せた笑みは、あの日『シャイニングストーリーズ3』を初めてやったとき感動した彼の綺麗な目だ。
そして、俺の目の前にタブレットを差し出す。
『オベロンの鏡』と呼ばれた精霊の力を付加した端末だ。
「なあ、男駆」
「なんだ?」
「僕は、もう一度やり直せるだろうか?」
「間違えてもやり直せるよ、バロルだってそうだろ」
そんな俺は、エフネに宥められたバロルの方に顔を向けていた。
「ああ、もちろんだとも。
ゲームでも現実でも、ゲームオーバーにならなければ、コンテニューは存在する」
右肩に、小さなエフネを抱えたバロル。
エフネは、笑顔で俺にはっきり言っていた。




