049
グランドファンタジアには、主人公の勇者は男女から選べた。
そのほかに、八人の仲間が世界に散らばっていた。
ゲームシステム上、連れて行けるのは三人だけだ。
一人は、恵太のキャラ……精霊神官のケイ。
一人は、新緑の魔女とも呼ばれた魔法使い系のアルク。
一人は、滅んだ国の最強戦士デボネラ。
このメンバーは、俺が初めてゲームの通しテストプレーで組んだメンバーだ。
まあ、ケイは実際の恵太では無い。
精霊神官は、いろんな魔法が使えるから使い勝手が一番いい。
だけど魔法の成長は遅く、回復や攻撃魔法が中途半端だ。
いわゆる器用貧乏なキャラだけど、武器に優遇がいくつかあって物理攻撃が結構強い不思議なキャラだ。
「あら、無事なのね、勇者様」
「お前達もな」
「そうねぇ。流石に勇者様が転移されたときは、どうなったかと思ったけど」
「魔城で、逃げ回っていた鼠か。まだ生きていたとはな」
バロルはそれでも、余裕たっぷりでアルクとデボネラを見下ろす。
「だけど逃げまくりながらも、しっかりとレベルは上げさせてもらった」
「確かに、レベルは上がっているな」
タブレット……オベロンの鏡を見ている恵太が言う。
タブレットでは、勇者スピカ一行のレベルも表示されていた。
ステータスだけではない。スキルも、魔法も、持ち物も全部が表示されていた。
それを眺めながら恵太が、余裕の表情で二人の元仲間を見ていた。
「なるほど、だがわしの敵では無い。
それに、まだコイツも残っているしな」
バロルの首には、モコモコしたマフラーが巻かれていた。
いや、それはただのマフラーではない。
モコモコしたマフラーのような何かが動いて、バロルの前に落ちた。
それは、水色の栗鼠だ。
栗鼠は地面に着地をすると、姿が大きくなっていた。
「最後の魔王視点の、ラタトスク。
勇者スピカ一行は、コイツで充分だろう」
ラタトスクと言われた栗鼠は、大きな尻尾が生えていた。
様々な精霊を宿していて、尻尾に精霊を纏わせた攻撃が得意。
無論、ラタトスク自体も魔法が使えて……人間と会話できるほどの知能もあった。
「はっ、魔王様。魔王様の魔力源が確かに流れてきております。
この力があれば、あの勇者共を……始末できましょう」
「わしはエフネと話があるから、相手をしていろ。殺しても構わぬ」
「だとよ、じゃあ。遠慮無く」
可愛げの無い水色の大きな栗鼠は、体を震わせた。
凶暴な顔に変わったラタトスクに、身構えるスピカ達。
「神、男駆よ」スピカが、俺に声をかけてきた。
「なんだ?」
「立てるか?」
「当たり前だ」デボネラから離れて、ススだらけの顔で目の前の魔王とラタトスクを睨む。
「ラタトスクと魔王バロルは、僕らが引き受ける。
男駆は、ケイを頼めないか?これでも僕の仲間なんだ!」
「ああ、その願い……頼まれなくてもやるさ」
俺はすぐさま視界に、赤いローブの精霊神官ケイ……いや直根 恵太を見ていた。
「俺はアイツに、用があってここに来たんだ」
その視線を感じた恵太は、右手で俺を招いた。
「いいだろう、男駆。僕の所に来い。
風の守りのある場所で、じっくりと話をしようじゃないか」
恵太の申し出に、俺は素直に従った。そのまま前に出て、恵太を見ていた。
「じゃあ、行こうか。風よ」
俺が恵太の間合いに入ると、俺と恵太の周囲に強い竜巻が巻き上がった。
強い風に、俺の髪と恵太の着ている赤いローブが巻き上がっていた。
「さあ、誰にも邪魔されない場所で話をしよう。男駆」
余裕たっぷりで、恵太が俺に語りかけてきた。




