025
(DANKU’S EYES)
昼下がりの大学に、突然現れた巨人。
四メートルの裸の女の巨人、現代で見るとその大きさが際立っていた。
唯一ゲーム内のペストラと違うのは、髪の色が赤く長い髪だと言うことだ。
野次馬もドンドン増えていて、騒ぎになること間違いない。
だけど、その巨人を俺は知っていた。
「やっぱり出たな、ペストラ!」
「やはり、知っていたか神『男駆』よ」
俺と、エフネは既に巨人の正体を知っていた。
女巨人のペストラ、魔王四天王の一人。
巨人族の娘、グランドファンタジアのボスの一人だ。
巨大な体で、振り下ろされる一撃は即死級のダメージ。
ペストラは、完全に脳筋のキャラだ。
そんなペストラが、現代のこの世界に来ていた。
(やはり、スピカやエフネのように向こうの世界からこちらに来ていたのか。
だけど、雰囲気が全く違うな)
俺は呆然と歩いていたペストラを、じっと見ながら動いていた。
「どうするよ?」
「ペストラを、あのままにしておく訳にはいかないだろ!
あの巨人を産んだのは……この俺だからな」
「そうだったな。幼女好きの、イラストレーター」
茶化す芝童森に、俺は走り出していた。
「エフネ、ペストラのことは理解しているな」
「無論だ、私を誰だと思う?」
「ならば、ペストラを止める。そのやり方も分かるな」
「私の魔法の出番だな」
俺の言葉に、エフネが前に出た。
だけどこの世界では、魔法源が薄い。
エフネの魔法は、決して強くない。
それでもエフネは、右の人差し指を立ててくるくると回し出す。
「悪魔魔法、初めて見るな」
エフネの動きに、芝童森も興味があった。
グランドファンタジアで、データだけしか知らない芝童森。
だからこそ、強さを実際に見る機会は貴重なのだろう。
ただ、俺は不安を感じていた。
(問題は、エフネは何の魔法を使うかだ)
俺と芝童森は、エフネの成り行きを見守っていた。
魔王の娘であるエフネの得意魔法は、悪魔魔法。
グランドファンタジアの人間やプレイヤーが使う魔法とも、種類が違う。
悪魔魔法に関しては、俺はどんな種類があるか分からない。
悪魔魔法は、敵にしか使えない魔法だから。
「ペストラよ、動きを止めよ。『ストップカーズ』」
エフネの魔法が、人差し指から光が放たれた。
巨大な体で歩き続けるペストラに、その光に包み込まれた。
一瞬だけペストラは動きが止まった……かに見えた。
「ダメだ!」エフネが叫んだ瞬間、ペストラは再び歩き出した。
こちらに気づくことも無く、ただ一心不乱にどこかを目指して歩いていた。