010
秋田の繁華街、俺の姿がカフェにあった。
ボサボサ髪で、寝癖のついた黒髪。
冴えない目に、灰色のパーカー。
来ている場所は、秋田でも屈指のオシャレなカフェだ。
屋外テラスで、俺は丸いテーブルを囲んで会話をしていた。
話をしていたのは、二人の男女。
一人は四角い顔の男性。
老け顔で、ちょっと小太りの男性。
黒の革ジャンと白シャツ、深緑のズボンを履いた男性。
俺と同じ年だけど、年上に見えてしまう。
「なるほど、鹿山のヤツはまだ見つからない……と」
「警察も捜査しているが……やっぱりダメらしい」
老け顔男性は、首を横に振っていた。
目の前のテーブルには、甘そうなキャラメルマキアートに、パンケーキ。
甘党の男は、食べながら会話を聞いていた。
「円に引きずり込まれた……鹿山君の最後を見たんでしょ」
話をしてきたのは、対面に座る女だ。
茶髪のセミロングで、穏やかな目。
厚化粧されていて、薄紫のブラウスにロングスカートをはいた女。
ブラックコーヒーを飲みながら、話をしてきた。
「確かに見たけど、警察に話しても取り合ってもらえない」
「まあ、そうだよね。でも……」
女は俺の顔を見ながら、コーヒーを口にした。
「本当なら、なかなかにホラーよね」
「確かに」いきなり他の世界に、引きずり込まれてしまう。
考えただけで、恐怖モノだ。
どこに呼び出されるか分からないけど、想像できないことだ。
「異世界に行けるのなら、行ってみたい気持ちもあるけど」
「五十土先輩は、変わった人だからな」
「そうかな?芝童森君」
女……『須原 五十土』は、俺の一つ上の先輩。
無論、俺たち道標のメンバーの一人だ。
俺と恵太、そして五十土は立ち上げ当時からいる三人のメンバーだ。
特に、俺とは長い付き合いだ。
男の名は『芝童森 順』。
彼も又、インディケーターのメンバーの一人でもあった。
芝童森は、俺と同じ年で……仙志荘のシェアハウスメンバーの一人だ。
しかし、今は理由あって家には帰って来ていない。
「それより、二人の異世界人はどうなの?あの後、何かあったの?」
「二週間が経過するけど、喧嘩も最近は収まってきたし……この世界に慣れてきたかな。
エフネなんか、パソコンやスマホの検索も出来るようになったし」
「ふーん、二人の女と共同生活ねぇ。
しかも一人が、男駆好みの幼女でしょ」
「エフネは、そんなもんじゃない」
「エフネちゃんって、言うのね。名前呼びなんだ」
俺が言うと、五十土ははにかんでいた。
「まあ、彼女たちにとって俺たちは神らしいし」
「そのエフネちゃん達は、どうやってここに来たの?」
「魔方円らしい」
「魔方円ねぇ」
五十土は、スマホを見ながらコーヒーを飲んでいた。
そんな中、俺は店内の方に視線を移していた。気になるモノがあった。
五十土は、飲み干したブラックコーヒーのカップを取り上げた。
「ねえ、新しいのを頼みに行くけど……二人はどうする?」
「自分はいいかな」
パンケーキを、満足げに頬張る。
女子のようにスイーツを食べている芝童森。
大きな体に似合わず、繊細な芝童森。
俺は、周囲の店内をじっと見ていた。
「男駆!」五十土が、声をかけてきた。
「ああ、気になったからな」
「何か?」
「あの制服、なんかかわいいし」
「はあ、あんた、相変わらずね」
「今度の可愛い幼女に、あんな服を着せたら、創造しただけで可愛いだろうな」
「ずっと言っていなさい」
五十土は呆れた様子でそのまま、店内に入っていった。
俺は懐に持っていたタブレット端末を取り出して、絵を描き始めていた。




