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065 三人に相談

 特区の外へ奉活に行きたいと姉に話した。

 消極的な賛成をもらえたと思う。


 この世界での常識が足らない俺だから、行動を起こす前にいろんな人の意見を聞いてみたいと思っていた。

 真琴たちと組んでいるカイトメッセンジャーの部屋に入った。


 ――少し相談があるんだけど、いいかな


 すぐ返事があるか分からないので、とりあえずそう書き出してみた。すると……。


マコ「何?」

ユウ「どうしたの?」

リエ「ふえーん(泣き顔)」


 秒で返信が来た。しかもリエがなぜか泣いている。

「どういうことだ?」


 何があったのだろうか。

 こういうとき、何があったか聞いてもはぐらかされる場合が多いので、深く追及しない方がいいだろう。


 俺は、リエの泣き顔をスルーして、姉に話したのと同じ内容。つまり、最初の奉活先に特区外を選びたいと、理由を添えて相談してみた。


 裕子から「本人かどうか確認しますので、銀行口座と暗証番号をお知らせください」とネタをぶっ込んできた。


 覚えていないので、適当な数字を打ち込んでみると「ぎゃー」と本気で慌てる書き込みが増えたので、ちょっと笑ってしまった。


マコ「でも武人くん、本気なの? 外は危ないかもよ」

タケト「心配してくれてありがとう。国の主導で、しかも学校が紹介する所だし、危ないことはないと思うよ」


 真琴は相変わらず心配性だ。

 分かっていても、言わずにはいられないのだろう。


ユウ「武人くんの話は分かったわ。私はどちらかと言うと賛成かな」


 裕子がそう書き込んだ途端、チャット欄が止まった。

 前にも同じことがあったが、もしかすると俺を除いた三人で話し合っているのかもしれない。


ユウ「たとえ失敗しても、(かて)にできるわ。そういう気持ちを持っているときに、外へ出てみるのもいいと思う」


タケト「ありがとう、裕子」

 信頼してくれているのだとしたら、嬉しい。


ユウ「武人くんは優しいところがあるから、本当は心配なんだけどね」

 あれ? 信頼されてない?


タケト「そういえば三人とも、外へ行ったことあるんだよね」

マコ「私は親戚が近くに住んでいるからたまに行くわ。リエは部活の試合とかで行ってるわよね」


ユウ「私も時々行っているわね。東京近辺だったら、それほど変なところはないと断言できるわ」


 変なところというのは、華族が支配している地域のことを指すのだろうか。

 テレビや雑誌で紹介されるところだけが外のすべてではないと聞いたし、祖母の話もある。


 男性が一人で不用意に訪れてはいけない町というのもあるのかもしれない。


マコ「裕子が賛成するなら、私は何も言えないじゃない。……でも、最近の武人くんなら、外で女性に囲まれても、案外平気なのかしら」


 真琴の洞察は正しい。平気どころか、どんとこいだが、それはここで言わないでおく。

 この世界に来てから、女子に話しかけて普通に返事がもらえる幸せを噛みしめている。


 なるほど、「モテる」とはこういうことなのかと、ようやく実感できるようになってきた。

 女性に囲まれた程度で、オタオタするはずがない。ニヤニヤするだろうけど。


タケト「真琴もありがとう。せっかくの奉活だし、特区の中や外をまんべんなく体験してみたいんだ」


 これで裕子と真琴は賛成してくれた。あとはリエなのだが、なぜかリエの発言が少ない。

 忙しいのかな?


 せっかくなので、リエに話を振ってみたら「針は嫌だ、針は嫌だ、針は嫌だ」とうわごとのような言葉が返ってきた。

 裁縫の実習が終わらないのかな?


タケト「そういえば、今度の20日が俺の誕生日なんだけど、その日、どこかに出かけないか?」


 しばらく雑談をしたあと、俺はそう提案してみた。

 20日はたまたま休日。もし予定が空いているなら、一緒に祝ってもらいたいのだ。


 分かっていたが、また会話が止まった。

 しばらく待っても、返事はない。


 急ぐ話でもないので、また今度にしようかと思ったところ、裕子から返信が来た。


ユウ「ごめんなさい。その日、私だけ日本舞踊(にほんぶよう)の発表会があるの。だから、二人だけで出かけて」


 聞いてみると、裕子は小さい頃から日本舞踊を習っているらしい。

 茶道や華道、ピアノやバイオリン、絵画や書道、そして日本舞踊など、芸術的な習い事をする女子は多い。


 しかも特区住まいの女子は、教養のひとつとしてそういったものを習う傾向が強いのだとか。

 そういう習い事でマウントを取ったりとかあるのだろうか。いつも思うが、特区に住むのも大変だ。


 裕子の場合、各流派の舞踊大会が先日行われ、そのときに優秀な成績を残したらしい。

 今回はその優秀者たちの発表会らしく、すでに演目も印刷されており、不参加は各方面に迷惑がかかるという。


タケト「そうなのか。ちなみにどこで何時頃やるの?」

ユウ「特区の南地区にある舞踊会館を借り切って行うの。私は午前中のみね」


 発表会は年齢の若い者から順にやっていくらしく、高校生の裕子は午前中の発表とあいなったという。


タケト「裕子の発表って、見に行っていいの? たとえばだけど、午前中に発表会を見て、午後からみんなと会うなんてことは?」


ユウ「そりゃ、終わったら控え室を空けないといけないからすぐに退出することになっているけど……いいの?」


タケト「裕子の踊りを見てみたいな」

ユウ「…………」


 その後、ちょっとしたやりとりのあと、裕子の発表会を見に行くことに決まった。

 よし、彼女たちとのデートをとりつけた。しかも俺の誕生日だ。これはテンションが上がる。


 当日の段取りはすべてしてくれるらしく、俺は集合場所へ行けばいいらしい。

 というか、これから三人でデートの段取りを話し合うようだ。


「期待しているよ」と(あお)ろうかと思ったが、今回は思いとどまった。代わりに……。


タケト「裕子の晴れ姿か。楽しみだな。ワクワクして眠れなくなりそうだ」

 なぜか、返事はなかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪い癖が出てんなぁ笑
[一言] 面白いです!特区外の女子校の話を早くみたいですね。また、女子側の視点があるのが一番いいですね。自己紹介文を提出する時の色んな女子側の視点みたいに。 更新頑張ってください。
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