232 旅のしおり
――森の中の祠 白穂と紫園の女神’s
武人が帰ったあとのこと。
白穂は、ヤレヤレとポーズを取る。
「紫園さんだけに話したところで、わたしが紫園さんに聞けば、意味ないじゃないですか、ねえ?」
「まあ……そうですね。聞きたいのですか?」
「聞きたいわけないじゃないですか。わたしはいつもフェアを重んじる女神ですよ」
ドヤる白穂に、紫園はにっこりと頷く。
「神の一柱である私たちが、人々の願いを無下に扱ってはだめですしね」
「そういうことです。……で、彼はどんな願いを口にしたのですか?」
好奇心一杯の顔で、白穂は紫園に詰め寄った。
もちろん紫園から、「先ほどまでの会話はなんだったのですか?」と白い目で見られることになるのだが。
「わたしと紫園さんの仲じゃないですか。それに女神共同体の一員としてですね、わたしにも知る権利があると思うのです」
「ずいぶんと物わかりがいいと思っていたのですが、最初から聞くつもりだったのですね」
「もちろんです。さあ、言った言った」
「言いませんよ。何を考えているのです」
「ええ~……紫園さんのいけず」
「ダメなものはダメです……ですが、同時に他の未来が見えましたので、それならお教えしてもいいですよ」
本人の願いではないのでと、紫園はしれっと言う。
逆に白穂は首を傾げた。
「本人が願ってもいないのに、未来が見えたのですか? それはよくあることなのです?」
「いえ、滅多にないですね。とても珍しい現象です」
「ほうほう。それは興味ありますね」
身を乗り出す白穂。
紫園は呆れの表情を浮かべながら、「耳を貸してください」と言って、その見えた未来の話をした。
「むっ!? むぅ? むむむ……」
「……という感じです」
一通りの話を終えて、紫園は先ほど見えた未来を考える。
白穂が連れてきた魂は、どうやら普通ではないらしい。
それは白穂がなせる技なのか、それともこの世界の業なのか。
「何というかまた……それは驚きを通り越して、魂消たですよ」
白穂が驚いている。演技ではなさそうだ。ということは、白穂もその先のことは予見してなかったと見える。
「実現するには、まだまだ多くの試練があるでしょうね。信頼できる仲間だけでは無理でしょう」
「そりゃそうですよ。なんたって……」
「多くの協力者をどう取り付けるのかという問題もありますが、果たしていまの時代、可能かどうなのか」
「マイノリティには辛い社会ですからねえ。……それで、確率的にはいかほどです?」
「1パーセントに届くくらいだと思います」
「それはまた、随分と少ないですね。それでも、未来が見えたのですか?」
「年齢の問題もあるでしょう。先になればなるほど、道は分岐し、不確かなものになります。ですが、それだけではない気がします。あの中で、存在を示さねばならないのですから」
「あー、本人の資質と努力だけでは、どうにもなりませんからね。あそこは魑魅魍魎が棲むところですし」
「財閥や華族、その他、すべての利害関係が衝突し続けている場所ですから」
「なんたって、日本のオンリーワンですからね。厳しいですね」
そう言って白穂は指を一本だけ、天に掲げた。
「すべてはこれからでしょう」
「ですねー。まあ、わたしはおいしいスイーツさえ持ってきてくれれば、何でもいいんですけど」
白穂の掲げた一本の指は、一体なにを意味しているのか。
学校に行くと、菊家さんが「みなさんからです」とレポート用紙の束を渡してきた。
レポート用紙?
受け取って、表紙を見ると「旅のしおり」と書いてある。
あれかな。遠足ときに、みんなで作る的な。
「これ、冬休みに行くBBQのだよね」
「はい。みなで考えて、漏れがないよう、何重にもチェックしました」
「へえ、そうなんだ」
旅のしおりを作るとは思わなかったが、これはこれでいい。遠足の前みたいで、ワクワクする。
中は手書きだった。うん、よく分かっている。
情報だけ欲しいのならば、検索したものを印刷すればいいのだ。
「この手書きってのがいいね。テンションが上がるよ」
「宗谷くんでしたらそう言うと思って、みんなで知恵を出し合ったみたいよ」
なるほど、よく分かっている。俺はしおりを斜め読みしながら、ペラペラとめくった。
場所は、千葉県にある海岸沿いのキャンプ場。
キャンプ場自体は、海から少し内陸に入ったところにあるが、砂浜までは歩いてすぐ。
ここのキャンプ場のウリは、夏は海水浴、冬は釣りができることらしい。
キャンプ場内ならば、好きなところにテントを張ることができ、バンガローが一棟だけあって、借りることができる。
バンガローは小さいため、クラスメンバー全員が入る余裕がない。
ほとんどは外でテントだが、バンガローは俺一人で使用するようだ。
この辺は、彼女たちの配慮だろう。
「しかし、淳も来ればいいのに」
「僕は本当にいいからね! 遠慮しないで行ってくれていいから。これはフリじゃないから!」
ちょっと必死な淳の顔があった。
「そっか。さすがに泊まりは無理だよなぁ」
入学当初とくらべて慣れてきたとはいえ、クラスメイトたちとお泊まりは無理らしい。
親も反対するだろうから、話してもいないらしい。
「その分、僕の班員も行くから、よろしくね」
「ああ。楽しんでくるよ」
クラスで淳だけ不参加なので、できれば一緒に行きたいのだが、ずっとこんな調子だ。
「フリじゃないから! 絶対にフリじゃないからね!」と強固に主張するので、仕方ないと諦めることにした。
「夏は海水浴できるらしいぞ。夏にも行きたいよな」
そんなことを言うと、淳がギョッとした。
「宗谷くん。他の海水浴客のこと、忘れてない?」
「忘れてないぞ。パラダイスじゃないか」
楽園が隣の県にあったなんて驚きだ。なんで気づかなかったのか。
今年の夏休みは、ネオ特区計画をどう潰すかで慌ただしかったし、仕方なかったのだ。
もったいないことしたよなと菊家さんを見たら、顔を逸らされた。
というか、鼻血が出てるんだけど?
「この前お貸しした、『御曹司、危機一髪』の展開を思い出したのだと思います、ククク」
橋上さんが悪巧みが成功したような顔をしている。
「それ、タイトルから想像できそうだけど、どんな話?」
橋上さんは、普通に十八禁モノとか買ってそうだし。
「箱入りで育てられた御曹司が、あちこちで騒動を巻き起こす話でございます。大抵、危機一髪で終わらないため、現在は発禁となっている本でございます」
「へえ……発禁ねえ」
十八禁どころじゃなかった。なんでそんなの持ってるの?
「無謀にも海水浴に出かけて、唯一の布地を剥がされた上で多くの女性に囲まれるシーンがあるのです」
「そりゃ、発禁になるわ。というか、所持違法じゃない、それ?」
「さあて、わたくしは未成年ですから、よく分かりません」
絶対分かってるだろ。
「しかしその御曹司も間抜けだな。なんでそんなところへ行ったんだか」
そう言ったら、クラスの半分がむせていた。
2、3ヶ月くらい前から、「なろう」の読み込みが『また』遅くなっています。
ログインページを読み込んでから、「感想」があるか分かる(その部分だけあとから表示される)まで、10秒くらいかかります。
各作品ページに飛ぶとさらに遅くなって、作品ページが表示されてからポイントとかが表示されるまでに15~20秒かかります。
1回読み込むとしばらくは大丈夫なのですが、そんな何回も閲覧しないので、ストレスは変わらず。。。
というか、すごいストレスです。
私のところのMySQLがおかしいんじゃないかと思いますが、以前もそんなことがありました。
ちょっと実用的なレベルの重さではないので、過去作品の削除で対応しようかと考え中です。
それで無理な場合、他サイトへのお引っ越しを考えます。
同じ症状の方いますでしょうか。参考にしたいので、大丈夫だよとか、少し時間がかかりますなど、教えていただけると助かります。
それでは引き続きよろしくお願いします。




