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122/422

115 生放送開始

 あれから一週間が経った。

 今日は、『恋の配達人』生放送の日だ。


 実況動画も70万再生を超えて、いまなお再生され続けている。

 コメントを見る限り、一人で何度も視聴しているらしく、正確な視聴者の数は分からない。


 それでも新人DoTuberとしては、驚異的な数字だと思う。


 この一週間、裕子がいろいろと動いてくれた。

 ネオ特区計画には華族の力が働いているということで、(べに)家のところまで出かけていったりもした。


 さすがの裕子でも、華族の繋がりや力関係については詳しくないので、よく知る者に聞いた方がてっとり早いらしい。


 敵対していたのによく行く気になったなと思ったが、「あの子、武人くんのファンになったみたいよ」ととんでもないことを言い出した。


「敵対してたじゃん。どこにファンになる要素があったの?」

「舞踏会館で呼び寄せた護衛を投げ飛ばしたとき?」


「そんな前から!?」

 まったく、事実は小説より奇なりといったものだ。


「生放送を楽しみにしてるみたい」

「動画も見てるの!?」

 いろいろびっくりだ。


 それで今日の生放送だが、入念な準備をしている。

 アクシデントがあると困るので、中高の班員が全員、「俺の家」に集合している。


 なぜそこまで過保護に……とも思ったが、言っても聞かないので、こうなってしまった。

 数寄屋造りの日本家屋に、俺を入れた八人が集まっている。


「武人くん、緊張してない?」

「何度もリハーサルをしたから大丈夫だよ」


 ちなみに俺より、周囲の方が緊張している。

 俺はまあ……楽しみの方が勝っている。


 スタートは午後6時。もうすぐだ。

 すでに「開始までお待ち下さい」の画面が表示されているため、コメントが流れてきている。


 楽しみです、待ってましたと、期待しているものが多い。

「ないとは思うけど、変なコメントがあったら、すぐに消すからね」


「うん。頼むよ……そろそろ開始かな」

 編集画面の方には、俺とゲーム画面が2分割されて表示されている。


 これを「お待ちください」の画面と入れ替えれば、放送開始だ。

 深呼吸ひとつしてから、俺は合図を送った。直後、画面が切り替わり、音声も入る。


「みなさん、こんばんは。武人チャンネルにようこそ。今日ははじめての生放送ということで、前日からドキドキワクワクしていました」


 コメントに「こんばんは」がものすごい勢いで流れはじめる。

「俺の音声と映像が届いているでしょうか?」


 するとコメントで「大丈夫」「オーケーです」と返事がある。


「平気なようですね。では今日の目的、視聴者のみなさんと『恋の配達人』をプレイしていきたいと思います。みなさん、準備はいいですか?」


 そこで画面に向かって、微笑みかけた。

 なぜかコメントが一瞬止まった。


「はじめに部屋をつくりますが、その前に注意事項です。よく聞いてくださいね」

 一通りの注意事項を述べたあと、部屋づくりを始める。


 部屋を作る段階でルールを決めるのだが、これはあらかじめ伝えてある。

 4人プレイのだれかが先に3勝したら勝者となる。


 参加者のみボイスチャットあり、観戦ありの設定にした。

 勝者が出たら部屋を解散して、新たに作り直す。


「それじゃ、最初の部屋を作るね。部屋番号は『1025』だね。パスワードだけど、4(けた)の最大素数を入れたよ。みんな分かるかな?」


 打ち込んだパスワードは****で表示されるので、画面からは見えないはずだ。


 ただ、4つの文字か数が入力されたことが分かるだけ。

 そしていま、生放送を見ている大勢の人たちが一斉にパスワードを打ち込んでいるはず。


 4人部屋なので、3人枠がある。

 ポツポツと部屋に入ってくる人がでてきた。


 はじめて十数秒で、3人分の枠が埋まった。

「全員揃ったね。ちなみにパスワードは、9973でした」


 コメントで『9997』を入れたとか、『9991』だと思ったというのが多い。

 実は9974から9999まで、素数ではないらしい。裕子からそう教えられた。


 単純にパスワードを言うよりも面白いんじゃないかと言われて採用した。

「おっ、全員マイクオンになっているね。自己紹介してもらおうかな」


「は、はじめまして……」

「緊張しているかな。ゆっくりでもいいよ」


 コメントが流れる中、若い女性の声が届く。

 このゲーム。マイクチャットをしながら遊ぶことができるのだが、もちろん、相手側にマイクがないと意味がない。


 いま、設定で視聴者にもマイクの声が聞こえるようになっている。

 どんな原理なのか、機械音痴の俺には分からない。


「ゲームの音が視聴者に届くようにできるのですから、参加者の声だって、同じように届けられますわ」

 そんな風に橋上さんに言われ、「そうなんだ」と納得しただけだ。


 機器類のリハーサルはすでに終わっているので、準備してくれた仲間たちを信じよう。

「全員自己紹介は終わったね。それじゃ、はじめようか。俺の手札は隠すからね。それと俺は、ゲーム中はずっと実況画面を見ないので、みんなのコメントも読めないからね」


 初回対戦者は、会社員と大学生と高校生らしい。見事ばらけた。

 俺が白で、それぞれ黒、赤、青が割り当てられている。


 俺はカメラにスマートフォンを見せた。

 俺は参加者の手札は見えないし、参加者も俺の手札が見えない。


「それじゃ、一回戦は気合いを入れてやろうかな。いくよ」

 初の生放送対戦が始まった。



註)9997=13*769 、 9991=97*103 となって素数ではない。



クリスマスイブですね!

「恋の配達人」ですが、ご存じの方も多いと思いますが、「ラブレター」というカードゲームを参考にしています。

カードゲームは複数の種類があり、追加カードもあったりします。

ほかにコンピューターゲームもありまして、私自身、CPU戦でも1000試合は確実にやっています。ちょっとした息抜きにいいですよ。いまも飽きずに毎日やっています。

カルカソンヌとかチケット・ツゥ・ライドとかのボードゲームの方が好きなんですけど、こういった純粋なカードゲームもよくやります。オススメがあったら教えてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] パスワード下一桁だけ非公開で当たった人が入れるというのは見たことありますね。後は9991を素因数分解せよっていう問題が某女子校の入試で出てたはずです。(余談へ) カードゲームは有名どころだ…
[良い点] なるほど、4桁素数。 そして、当日の検索ワード4桁素数最大とかですかねw きっと、中高班員が一つづつ提案したに違いない。 等と思ってみたり。 そして、鯖、まだ無事。 [一言] カードゲー…
[一言] >そこで画面に向かって、微笑みかけた。 >なぜかコメントが一瞬止まった。 限界オタクになってて草 カードゲームならマインドとか好きですね。 ボドゲなら定番ですがテラフォが最強すぎる。
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