↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
116/422

109 次の奉活先

 裕子から連絡が来た。

 いくつかのワードで検索した結果、インターネット上に俺の個人情報は載っていないようだ。


 あれだけ話題になっているというのにと思ったが、この世界では男性の個人情報の扱いは厳しい。

 過去に、とある男性の住所をインターネットに書き込んだ女性がいた。


 それが悪用され、男性が実際に被害を受けた事件がおきた。

 住所を載せた女性には、実刑の判決が下されたという。


 心の傷を負った男性は、自分のことが全国的に有名となったことにおののき、国外へ脱出したという。


 個人情報漏洩法は男女問わずだが、男性の情報を流した者の罪は重い。

 いかな仲間内とはいえ、遊びで情報を流出させるのはリスクが大きいようだ。


 裕子が調べた範囲で見つからなかったのだから、徹底している。

「でも、それもそうか」


 男性に危害を加えた場合は、未成年でも容赦なく裁かれるし、個人が特定されるような書き込みをした場合、特区外退去は確実。


 そんなことになったら、もとの世界の性犯罪者以上に、世間から白い目で見られることになる。

 そんな危険を冒してまで、情報を流す者はいないのだろう。


 ただし、クローズドな場所では別。

 少なくとも裕子のクラスでもすでに、俺が伊月高校の1年生であることは、周知の事実となっているらしい。


「今度、学校へ迎えにいってもいい?」

 イタズラ心を出して、そう聞いてみたら「本気で吊し上げられるから止めてね」という一文が返ってきた。


 女子の嫉妬は怖いらしい。

 でも特区なら、男性に慣れているはずでは? と思ったが、すでに俺は特殊らしい。


 ミリオンセラーを連発するアーティストが迎えに来たようなものだろうか。

 女子校という環境の中では、よほど親の権力がある場合を除いて、頻繁に男性の気配がすると、少々怖いことになるらしい。


 まあ、裕子の言いたいことも分かる。

 橋上さんに頼んで、毎日動画をアップロードしてもらっているが、そのせいか学校全体がなんだか浮ついている気がする。


「というわけで、先生。奉活先を決めにきました」

「…………」


 担任はなぜか、珍しい生き物をみたような目を向けてきた。

「どうしました? 先生」


「宗谷くん、来月も奉活をするの?」

「ええ、もちろんですよ。それがなにか?」


「……そうよね。前回、三件もしたから、来月は休むのかと思ってしまったわ」

「そんなもったいない」


「もったいない?」

「いい思いができて、お金までもらえるのに」


「……奉活の話よね?」

「奉活の話に決まってるじゃないですか。それよりいつもの冊子、お願いします。あっ、今回は特区の中だけにします」


 今度は特区内の雰囲気を確かめてみたい。

 担任が冊子を持ってきてくれたが、よろけているようだが、大丈夫だろうか。


「先生、疲れが溜まっているんじゃないですか?」

「ええ……よく分かったわね」


「そりゃもちろん……えーっと、どこにしようかな。この選んでる瞬間ってワクワクしますよね」

「…………」


 少し、奉活について調べてみたが、一般的には『楽なところ』が人気らしい。

 そのせいもあって、奉活を希望する企業は、『楽』であることを強調する傾向にあるようだ。


 また、次に多いのが親の仕事関係。そこに知り合いがいる場合、頼まれる場合が多いという。

 その頼まれるものの中には「仕事を発注するから」とかが含まれている場合があるとか。


 大学生の場合だと、将来就きたい職業に関係した企業などが選ばれるらしい。

 職場体験も兼ねているのだろう。


 さて俺の場合だが、普段行かないところがいい。それでいて、興味のあるところ。

「先生、決めました!」


「そう。それじゃ、奉活局に報告するから、ここにコード番号と奉活先の名前を書いてね」

「はい……できました」


「また複数……えっ? 宗谷くん!? これ、間違っているわよ」

「どこか写し間違えました?」


「奉活先が、女性下着の会社になっているし、もう一件はここ……女性専門の病院なの」

「そうみたいですね」


「そうみたいですねって」

「ですから、普段行かないようなところがいいかなって思ったんです」


「…………」

 草むらから未確認生物が飛び出してきたような顔をしている。


 そもそも「女性専用由比先(ゆいさき)総合病院」と書いてあるのだから、間違えようがない。

 これはこの世界に来て初めて知ったのだが、男性を診るには、できるだけ男性の医師が望ましいとされている。


 また、できるだけ男性は他の女性と接触しない診察・治療場所があると望ましいとされている。

 一応努力目標だが、紛らわしい経営をしていると男性がやってくる。


 すると、悪評がものすごいことになるらしい。


 泌尿器科の診察室に男性が入っていった場合、用もないのに看護師が入ってきたり、ついウッカリ患者が迷い込んだりと、マスハラが行われたりするとか。


 毎回、ちょっとしたミスがおこるような病院には行きたくないだろう。

 そういうわけで、普通は設備を分けたりするのだが、そうすると余計な金がかかる。


 ゆえに女性専用病院というのが存在するのである。

 病院名にしっかり書いてあれば、男性はやってこないため、施設などの配慮は必要ない。


 だからといって、男性お断りではない。そういう名前なのである。

 もとの世界のアルバイトで、「女性がたくさんいる職場です」とホールスタッフを募集するようなものだ。


「えーと……確認するけど、女性の下着会社と、女性専用の病院……でいいのよね」

「はい!」


 なんて胸アツな奉活先だろうか。

 これでお金まで貰えるんですよ、奥さん。と言いたい気分である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 下着メーカーに病院。 いいとこ行きますね。 よく、気恥ずかしいだの何だのという話になりますが、 この辺りを知っておく事は、 男としても対応の幅が広がるとこですし。 まぁ、下心全開なんでしょ…
[一言] 女性下着の会社って住所を特区内にするためだけの小さなオフィスなのではなかろうか。
[一言] 変に対立しちゃいけないのでまずはクラスからかな。今のままだと特区外を優遇してるようにも見えるしね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。