こっでも男ばい?
訓練を終えたカンナは自分専用の特製檻の中で首と両手足を鎖と枷で繋がれたままこれまた特別製の馬車で運ばれていた。特別製とは言っても他よりもデカイと言うだけだが。
それに今馬車の暗幕は下ろされ檻にも布が被せられ外の景色は見えない。屋敷から外に出たり帰るときはいつもそうしているので恐らくは脱走防止なのだろとカンナは考えている。
まあ理由は兎も角、快適には程遠い環境であった。
…ゴンッ、低い音を立てて荷台に何かが当たる音がして、馬車が止まる。
屋敷に着いたようだ。
「良し!檻を開けろ!」
馬車の荷台に足音が響きガチャリと音を立てて檻が開かれた。カンナは回りの人間を刺激しないようにゆっくりと檻から出る。
…そぎゃん怖がらんでも何もせんとに。ばってん、俺のごた奴はやっぱ怖かか?
この世界に転生をはたしたカンナは新たな種族として生を受けた。その姿は立ち上がれば三メートル近い、カンナの回りに居る人間の平均身長が180前後なのでカンナはそこに居るだけで威圧感がある。手足は蜘蛛のように異常に長く、肌は汚れを落とせばミルクのように白く体毛や毛穴も存在しないので触れれば滑らかな肌触りだ。
そして凹凸の無いつるりとしたのっぺら坊。
たとえ従魔の首輪に付け加え手足を枷と鎖で拘束されようとも安心出来ないだろう。兵士との訓練では手加減出来るほどの知性と技術を有していれば尚更である。
回りを兵士達に囲まれて通路を暫く進むと部屋に連れていかれた。
「あら、いらっしゃいカンナ君」
部屋で出迎えたのは白いローブを着た妙齢の女性だった。名前はロー・パロリエ。ここでは医者と獣医を兼任しておりいざと成れば優秀な魔術師に変貌する多才な人間だ。
金髪のポニーテールを揺らしながら兵士に命じる。
「それじゃ、拘束を解いて?」
「なっ!パロリエ殿!危険です!」
「ばっ!お前!」
若い兵士が異論を唱えたが他の兵士がそれを止める。声には出していないが回りの兵士が緊張しているのをカンナは感じた。
あいたぁ…あら新人さんね。
カンナも同情するような気持ちで若い兵士を目はないが…横目で伺う。
「え?あぁ!貴方新人さんね?なら仕方ないわぁ~」
「も、申し訳ありません!こいつには言い聞かせますので!おら!お前も謝れ!」
「えっあ、も、申し訳ありませんでした!」
回りの兵士が槍をカンナに向けながら大声を張り上げて謝罪する。
「もう良いわよ~…さっさとして?」
「はいぃ!」
パロリエの言葉に語尾に凄みを感じた兵士達は槍を置いて素早く拘束を外す、カンナも枷を外しやすいように前屈みになって協力する。
パロリエは見た目も言葉使いもおっとりしているが怒ると怖いらしい。カンナは見たことはないが兵士達の反応を見ればだいたい分かる。
「はい、ご苦労様。あとはやっておくからもう下がって良いわよ~」
「はっ!失礼します!」
敬礼した兵士達は逃げるように退室していく。
兵隊さんが俺よりもパロリエさんば怖がるて…パロリエさんは昔何ばしたっだろか?
ここ数年訓練と檻と御主人様の部屋、そしてここの診療所?しか知らないカンナでは得られる情報は少ない。
しかし少なくともカンナを一人で任せられる程度には強い思われると言うのはわかった。
「はーい。じゃあカンナ君。背中を見せて座って?」
はいはーい。お願いします先生。
聞こえていないだろうが返事をするカンナは言われた通りパロリエに背中を見せて床に座る。するといつものようにカンナの背中に抱き付いた。
「ああ~ん!やっぱりこのひんやりスベスベモッチリ玉子肌は堪らないわぁ~!」
……こん人も溜まっとっとなぁ…
カンナの着ている防具は安物を繋ぎ合わせて造っているため胴体、特に背中が大きく露出している。
背中を頬ずり知れる感覚に耐えながらパロリエが満足するまで待つ。
カンナも美人に抱き付かれるのは吝かではないがパロリエの反応には若干同情する程度には引いている。
「それじゃはひめるわね~(始めるわねー)」
そんまんますっとかい…
「すめーたふ(ステータス)」
頬ずりしたままパロリエは詠唱をすると診察が始まる。
このステータスと言うのは従魔の首輪に備え付けられている機能でその日にどの程度身体能力が上がったか、逆に下がったか分かる。
「うーん…また痛覚耐性と精負荷耐性が上がってる…痛覚は兎も角、精負荷は問題ね、全くカンナ君は物じゃ無いのよ?」
うんうん!俺生きとるもね!
パロリエは自分に優しくしてるれる数少ない存在である、彼女との会話はカンナの心のよりところの一つだ。
「貴重な検体なんだから大切に扱えっての」
……
たとえそれが相手に伝わっていなくても
、心の無い魔物だと思われていてもだ。
幾つかの診察を経て今回も損傷が無いと診断されたカンナはパロリエに連れられて汚れた体を洗うため浴室に向かう。
「ウフー!やっぱりカンナ君の最大の軟らかポイントはこの頬よねー!」
先生…照れるけん止めっくれ…
連れられていると言うより正確にはカンナが彼女を抱き抱えて移動しているのだが、この間パロリエはカンナの頬を引っ張ったりたこ焼を作ったり頬ずりして遊んでいる。
カンナも最初は戸惑ったが今ではもう慣れてしまった。
浴室に着くと訓練で使っていた安物を繋ぎ合わせたカンナ専用の防具をパロリエに手伝って貰いながら外すとかなり古臭い浴室の真ん中に立たされる。
「それじゃ行くわよ?アクアジェット!」
と、詠唱を唱えると空中に魔方陣が現れ人なら押し流される勢いと量の水がカンナに向かって放たれる。
水が放たれている間カンナは自分の体の位置や方向を変えて全身の埃を落とす。
食事の必要が無いゆえに老廃物も体臭もない体ではあるが、カンナはこのような雑な入浴でも体を洗いたかった。
放水が終わると体を拭いて用意された服に着替える。
安物ではない、高級なメイド服だ。
今日は女の日ね…
カンナは体に意識を集中すると男性型から女性型に体を変化させた。胸は膨らみ腰は括れ尻も丸くなる。カンナも良くは分かっていないが生殖器の無い無性だからこそ出来る事だと考えている。
…前世では男性だったカンナだがどれだけ頑張っても男性の機能は戻らなかった。
まっ…女になって襲わるっとも嫌ばってん
「ん~いつ見ても見事よね~」
三番目の御主人様を思い出し若干震えるカンナのスカートの中に手を突っ込むパロリエ。
カンナはいち速くそれに気付きパロリエの手を軽く摘まんで拒否の意志を示す。
「…ちぇ。良いじゃないお尻ぐらい揉んだって…」
いや、ならんて!つか、揉むとは止めて!?
「まっ御主人様専用なら仕方ないわね。」
いやいや、御主人様も尻は揉まんよ?…三番目ならすっだろうけど
「じゃあカンナ君ご苦労様。おやすみなさい。」
手をヒラヒラと振りながら部屋を出ていくパロリエの姿が見えなくなるまでお辞儀を続けるカンナ。
パロリエと入れ替わるように幾人かのメイド達が優雅に入るとカンナの回りを囲んだ。
メイド達は皆美女であるが各々がパロリエ程ではないが優秀な魔術師だ。今日訓練した兵士達よりも数段強い。
するとメイドの一人がカンナの前に立つ。
「それではカンナ。お嬢様がお待ちです。扉の前までは共に行きますがくれぐれも粗相の無いように」
はーい。
カンナは間延びした返事とは裏腹に丁寧な御辞儀で返答する。
「大変結構。それでは行きますよ。」
何度目か分からない同じやり取りを終えたカンナはメイド達と共に御主人様の元へ向かった。




