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コード・ゼロ  作者: 黒雪
11/22

第七区に流れる不穏な風

三千文字、とは一体・・・

 演習が終わってからは普段通りの授業を受け、特に変わり無くカリキュラムを消化して。

 そして昼休み。紫苑と剱は二人で食堂にいた。

 「何か今日は一日が長く感じるぜ・・・」

 「毎日聞いてる」

 「・・・さーせん」

 学食片手に雑談を交わす。いつもであれば二人だけなのだが、今日は向かいに二人座っていた。

 「というか何でお前らいるんだ?」

 紫苑の前に座っているのは飛鳥。その横に風音もいる。

 「偶々時間が合っただけの話ですわ。これからの時間帯は混み合うし、なるべく知り合い同士で固まった方が良いでしょう?」

 「・・・そんなわけだから、少しお邪魔してます」

 飛鳥達は紫苑や剱より小食な所為か、既にほぼほぼの食事を終えている。

 「・・・ま、別にいいけどよ」

 数秒前にいる二人を見て、そこからは気にすることなく止めていた手を再び動かし始めた。

 「はぁ・・・しかし今日はいつもに増して精神力削いだ気がするぜ」

 そうぼやきながら紫苑は残りを全て口に押し込んだ。

 「朝に比べれば回復している方だと思うけど」

 「ここって、因子安定剤とか安値で売られているし・・・使ってみたら?」

 風音が心配そうに気遣いの言葉をかける。

 「むぅ・・・金はあんま使いたくないんだよなぁ」

 「守銭奴か。紫苑は十二分に持っているだろう」

 「・・・もし悪化したらいけないし、私で良ければ、供給してもいいけど・・・?」

 「や、それはいい。流石に色々駄目な気がする」

 なおも心配している風音の提案を、紫苑はきっぱりと断る。

 「風音・・・仲間思いなのは良い事だけれど、程度があるわ」

 「そうだよ風音。君がこんなのにそこまでする事は無いさ」

 「実際それは緊急時だけ・・・って、今すげぇ失礼なこと言われた気がする」

 紫苑は剱の方に顔を向けるが、剱は目を逸らしも、合わせもせずわざとらしくお茶を飲んだ。

 「でも紫苑。メンタルの安定は能力者にとっては必須ですわよ。狂魔化も精神の病だと言う説もありますし」

 「・・・そう言えば、七宝家は狂魔化の研究もしているんだったけ?」

 「この区画最大規模の能力者の家柄だしな」

 七宝 飛鳥はお嬢様のよう、ではなく実際お嬢様だった。ただ、本人はそう言われるのをあまりよく思っていないのか、少し不機嫌そうな、そしてどこか寂しげな顔をした。

 「・・・まぁ、そうですけれど」

 小さな溜め息と共に飛鳥は一応肯定した。

 飛鳥の変化に気付いたのか、紫苑も剱もそれ以上言うことは無かった。

 「・・・ま、偶にはゆっくり休んでもいいかもなぁ。狂魔化なんてしたら元も子もねぇや」

 その言葉に剱は一瞬紫苑を見たが、何も言う事なく視線を戻した。

 「それだけは絶対に有って欲しくないわね」

 「・・・ん?」

 その後、飛鳥は何か呟いたが、紫苑には上手く聞き取れなかった。

 紫苑はそれを聞き返そうとしたが、それは違う声に遮られた。

 「飛鳥先輩、風音先輩。こんにちは」

 四人はその声の主の方を向く。

 そこにいたのは紫苑にとって記憶に新しい人物だった。

 「あら雪那。奇遇ね」

 「丁度、飲み物を買おうかと思いまして」

 雪那の手には三つのお茶が握られていた。恐らく友人の分も含まれているのだろう。

 「それでは、失礼しました。私はこれ、で・・・?」

 雪那は一礼してその場を去ろうとしたが、飛鳥の向かいにいる紫苑を見て、動きを止めた。

 「よぉ雪那。こっちでも会ったな」

 硬直している雪那に、紫苑は軽く手を振る。

 「あ、そうですね。一昨日はどうもありがとうございました」

 少し遅れて雪那は反応を返す。

 その二人のやり取りに飛鳥は不思議そうに二人を見た。

 「え、何・・・知り、合い・・・?」

 「まー、こないだ少し会っただけだが」

 「ええ、そんな感じです」

 紫苑と雪那は穏やかに話しているが、飛鳥の顔には若干の動揺と困惑の色が見えた。

 風音は特に目立った反応なく話を聞き、剱は静かに飛鳥の様子を見ていた。

 「そういうお前は?」

 紫苑は唐突に飛鳥に話を振る。

 遅れはあったが、飛鳥は一つ咳をして

 「まあ、家の繋がり、の様なものだったけれど。かなり前から付き合いがあったわ」

 「それでは私はこれで・・・」

 今度は紫苑、それと剱に対しても礼をして、急ぎ足でその場を去っていった。

 律儀だね、と剱は顔の向きも変えずに端的な感想を言う。

 そして。

 「まあ紫苑が軟派したくなる気持ちも分かるかな」

 明らかに意図的で、小さな嘲笑じみた笑みを浮かべてそういった。

 「いやだからちがっ・・・」

 「・・・は?」

 瞬間。その場の空気が明らかに変わった。

 飛鳥の声のトーンが妙に低い。

 当然それは紫苑に向けられたもので。

 有無を言わせないその覇気に紫苑は一瞬怯む。

 唯一幸いだったのは、食堂にいたのがほとんど二年だったという事か。

 「どういう事かしら・・・?」

 「ちょ、落ち着けってただの誤解・・・」

 紫苑の言葉を完全に無視して飛鳥はかみつく勢いで身を乗り出す。

 「はっきり説明しなさいな・・・!」

 「ぐぇ、おまっ・・・絞首は止め・・・ぐるじっ・・・」

 「飛鳥、多分勘違いだと思う、けど・・・」

 風音が止めようと割って入ろうとしたが、最早そんなものは意味が無かった。


 「・・・で、説得するのに二十分かかりました」

 「へー・・・」

 放課後。

 メアと合流し、三人で否のカフェで暇を持て余していた。

 紫苑の話をメアは飽き飽きしながら聞いている。剱は我関せずといった様子で、一人端末をいじっている。

 「なーんか、紫苑って色んなところでやらかすよねぇ」

 「俺の所為ではないんだ・・・俺の所為では・・・」

 紫苑はぐったりうなだれながらそう言う。

 「まあ女癖の悪い紫苑が悪いと思うよ」

 「ええ、俺そんな風に見られてんの?」

 そんな会話をしながら、メアは加減なく紫苑にもたれかかった。

 「はふー・・・でもやっぱり紫苑の近くは落ち着くにゃぁ・・・」

 「急にどうした。というか口調変わってませんかねぇ」

 ただ紫苑に拒否の色は見えない。お構いなしにメアは紫苑の膝の上でごろごろしている。

 最初から疲れがたまっていたのだろう。どうやら高校という環境は、彼女にとってはあまり得意な場所では無いらしい。

 「ナイトと同じ匂いがするよー」

 「さいですか・・・」

 「・・・あ、それでさ剱。一昨日のは?」

 体勢そのままで、メアが剱に問う。

 「ん、・・・ああ、あれの事か」

 剱は端末を置いて、二人に向き合った。

 「とりあえず現状確認できた事と推測を。先ず、この前停止されたあの感応装置。まだ再起動はされていなかった」

 「ふむ?それは現在進行形で捉えていいのか?」

 「ああ。それぞれの場所に監視カメラと盗聴器とか感応波の探知機とかもろもろを付けておいたから」

 そう言って剱は端末の画面を切り替える。表示されたのは剱の設置した機械の現状だ。

 「なるほど」

 「後、外の状態は・・・まあ平常より多いけど感応装置が停止した所為か、街周辺は落ち着いたと思う」

 「だな。まだ侵蝕区域の周りはかなり多いが」

 紫苑の言い回しに剱は話すのを中断した。

 「というと?」

 「あー、日曜日な、メアと二人で侵蝕区域の近くまで偵察に行ったんだよ。暇だったから」

 「そういうことにゃぁー」

 「その後散々使われたけどな」

 「そんなこともあったねぇ」

 「・・・」

 二人の話を呆れ半分で聞き終えた剱は、話の軸を戻した。

 「それで、ここからは俺の推測ではあるんだが」

 「ん」

 「結果として街にも数体悪魔が侵入したけど、おそらくあの感応装置は街に悪魔を入り込ませるための物じゃない」

 「・・・ほう」

 「あの程度の感応装置で街に悪魔を呼び込むのは、正直出力不足だ。俺達人間が侵蝕区域を警戒するように、悪魔も能力者の集まる魔人街にわざわざ来たりしない。例え感応装置で本能的に呼ばれてきたとして、

多分街の周りに溜まるのが落ちだと思う」

 「街の外に溜まってたのは実際そうだしな。確かに少ない訳じゃないが、悪魔による被害はほぼ無だったようだし」

 「じゃーさ、結局のところ感応装置は何のために?」

 「おおよそ、街の周りに集まった悪魔を鹵獲するためだと思うけどね」

 剱の答えは簡単なものだった。

 だが、メアはその答えに疑問の残る表情をした。

 「まあ、悪魔の生け捕りってのは裏では珍しくない話だが」

 「んー、でもそれなら普通に外に仕掛けておけばいいんじゃ?」

 「・・・灯台下暗し、ってところだろうね」

 メアの疑問に剱は短く答えた。

 「あれだけ街の周りに悪魔が集まったんだ。区域間の移動に支障が出るレベルだし、流石に軍部も動くだろう。そこでトーチカが発見されれば回収されてしまうし、人為的なものだってばれるからね。けど街の中なら何かと穴場があることだし軍の奴らも外で原因調査するだろうしねぇ」

 「・・・ん?おい、それじゃトーチカが再起動されていないって事は」

 「ある程度回収し終えたから、もう用済みってところかな」

 それを聞いて、紫苑とメアはつまらなそうに溜め息をついた。

 「それじゃ、もう解決・・・ではないが、今回終わってね?」

 「むー・・・そうなる気がする」

 「ん?ああ、その心配はないと思うよ」

 二人の様子に剱は笑みを浮かべる。

 それに二人はぴくりと反応を示した。

 「お、なんだなんだ?」

 「ま、これも調査に元づいているだけの推測なんだがー」

 そう、剱が続けようとした時。カウンターにいた否が、いつもより険しい顔をして、三人の横に歩いてきた。

 「・・・皆さん、緊急です」

 「「「・・・?」」」

 いつもと違う否の雰囲気に、三人も静かに否の次の言葉を伺った。

 否から感じるのはいつもの穏やかさではなく仕事をこなす者としての静かで、冷たささえ漂う雰囲気だ。

 「只今一七〇〇。第七区内に複数の狂魔らしきものが複数体、同時に出没したとの報告が入りました」

 「はっ!?」

 「同時に複数・・・かぁ」

 「待って下さい否さん。らしきもの、とは?」

 剱の質問に否は首を横に振った。

 「そこまでは・・・ただ、通常の狂魔とは様子が違うとのことです」

 「ふむ・・・なんにせよ、俺達の出番という事かな」

 そう言って剱は宙に手をかざす。

 同時に、剱の手の先にブレードが出現する。

 「そうだな。メア、行くぞ」

 「おっけー。ナイトも・・・うん、準備良さそう」

 紫苑が自分の膝に頭を乗せているメアの頭を軽く撫でてから起きるように合図する。

 「あ、それと・・・」

 三人が体勢を整えている時、否が付け加える。

 「既に数体が、沈黙しているようです」

 「・・・軍の連中、ではないだろうね。となると」

 紫苑が目を細める。

 「・・・コードセブン、か」


 所変わって。

 部活にまだ入っていない雪那は、一人で街道を歩いていた。

 「・・・ふう」

 いつもはもう少し早めに帰れるのだが、クラス委員になってしまった所為で、今日は少し帰りが遅くなっている。いつも一緒に帰っているミカヅキも桜花も、今はいない。

 見慣れた景色を進んでいく。

 ふと、ある公園の横で雪那は足を止めた。紫苑と最初に会った場所だ。

 「・・・」

 特に何か意味がある行為では無かったが、雪那は暫くその公園を見つめていた。

 「さて・・・早く帰ろう」

 改めて荷物を持ち直し、そう言って前に向き直った。

 するとそこには、道を遮るかのように、黒い靄の様なものがあった。否、いる、という表現が正しいか。

 黄昏時である所為か、それは妙にはっきりと、そして禍々しく見えた。

 「・・・狂魔っ!?」

 雪那はとっさに構える。

 「ウウ・・・イ、タイ」

 「!?」

 「イタイイタイイタイクルシイクルシイクルシイ・・・」

 「言葉を・・・」

 いつもと違う様子に、雪那がうろたえた、次の瞬間。

 「アアアアアア!!!」

 狂魔「らしきもの」の右腕が、雪那に向けられる。

 「・・・仕方ない」

 雪那の前に氷の手が造形され、狂魔らしきものの手を受け止める。

 そしてその間に、バイオリンのケースからレイピアを取り出す。

 「たとえ何であれ、この街を守るのが私の務め。

 ・・・魔人街ここに降りかかる災厄は、排除する」

 レイピアが、冷気を纏う。

 雪那はそれを、冷たい眼光と共に、目の前の標的へと向けた。

 結局長くなったり編集に時間かかって一週間飛ばしてしまったりと黒雪です。

ようやくコードゼロもまともな戦闘シーンに移れそうで自分、そこそこ気合入ってます。

それと近々零落者の方も再開、というか、新たに零落者・改verとして最初からまた出そうと思ってます。

少なくとも前者より読みやすくなっている・・・筈です。

 それでは今回もありがとうございました。

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