第47話 融合
「お前は消されたはずだぞ。なんでここにいるんだ」
アキヒデは、もがきつつ叫ぶ。
「ここは平山の夢の世界だ。なんでもありでいいじゃないか」
相変わらずの鼻につく口調だったが、平山には懐かしく、そして心地よく聞こえた島津の言葉だった。
「それに、消されたんじゃない。姿を変えられただけだよ。僕はずっと、この世界の中にいた。君たちふたりの行動も、ずっと監視していたんだよ」
島津を再びこの世界に呼び出したのは、平山自身であった。無意識のうちに、島津の姿を思い浮かべ、その姿形を創造していた。現実世界で意識を失う寸前、島津の顔を鏡の中に見つけたときに、そうすべきことは分かっていた。アキヒデに対抗できるのは、彼をおいて他にはいない、と。
「まあいい、ところでお前、いまさら出てきて何をするつもりなんだ? まさか、オレを消そうってんじゃないだろうな。そんなことはさせねえよ。オレはようやく自由になれたばかりなんだ。まだまだ遊び足りねえ」
「消し去るつもりはないさ。僕には君を消すことなんかできない」
「じゃあなんだよこれは。早く放せよ」
アキヒデの言葉を無視し、島津はさらに締め付ける力を強めた。アキヒデの顔が苦痛に歪む。
「放せ放せ放せ放せ……」
狂ったようにアキヒデは叫び続ける。
平山は、島津が羽交い締めにしている腕が、アキヒデの体に吸い込まれてゆく様を見た。腕だけではない、アキヒデの背と、島津の腹も溶け合ってゆく。
「イヤダイヤダイヤダいやだああ」
「怖がることはない。元に戻るだけじゃないか」
島津がそう呟くと同時に、二人の体は完全に融合した。