第48話 新しい男
二人が融合すると、辺りは静寂につつまれた。
いつの間にか、平山の分身たちも姿を消している。
そして、平山の前には、一人の男が立っていた。
「お前は誰だ? 島津なのか?」
平山が問いかけると、男は笑って応える。
「誰でもないさ。島津であってアキヒデでもある。君自身でもあるといえるかな。ガイドには違いないけど」
男の風貌は、確かに平山自身に酷似している。平山は、鏡に映った自分自身と話しているような、奇妙な感覚を覚えていた。
「お前は、俺に何を望む」
「何も望まないよ。俺は、君が望むことをちょっと手伝うだけの存在だ。君こそ、何がしたいんだい?」
平山は安堵した。もう、アキヒデの残虐な遊戯に付き合うことはなくなったのだ。
「今したいことは、ただ、ただゆっくりと眠ることだけだ」
「そうか。じゃあしばらくのお別れだね」
新しい男は、平山に背を向ける。
あたりは白く輝きはじめた。この世界からの別れの合図だ。
「そうだ、待ってくれ」
平山が声を上げると、輝きは消えた。
新しい男も振り返り、平山の次の言葉を待っている。
「上位世界、島津が言っていた、上位世界ってところへ連れて行ってくれないか」
男は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻る。
「いいよ。じゃあ、寝てくれ」
「寝るって、この世界の中で寝るのか?」
「そう。現実世界で寝るように、この夢の世界でもう一度寝るんだ。その状態から、更に離脱することで、上位世界へとゆくことができる。できるかな?」
平山は素直に目を閉じる。
この世界で目を閉じると、覚醒してしまう可能性が高かった。しかし今なら、その男の前にいる状態ならば、夢の中で眠ることができるような気がした。




