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Read New World  作者: りのあ
過去の産物 -Past of product-
19/55

十七話 「再開」

 ラクスラズルの世壊樹を遠めに見ていると、

 なぜかわからないが胸が少し痛くなる。


「これが思いでってやつなのか…?」


 確かに、

 俺はあの世壊樹を敵だと思っているし倒すべき相手だと思っている。

 でも…


「一緒にいたんだもんな…」


 俺はこのゲーム「Lost new World」を年単位でやりこんでいる。

 受験の日も、落ちた日も、嫌なことがあった日も。

 初めてジャンに会った時、仲間ができたとき。

 全て、この世界が与えてくれたものだった。


『そして、俺はこの世界が好きだった…か』

「え?」


 声のしたほうへと視線を向けるとそこには一人の男が居た。


「あんたは、宿屋の時のオッサ…」

「オッサンじゃねぇ、お前自身だよ」

「は?俺はお前みたいなサブキャラ作った覚えはねぇよ」

「チッ!自分自身だから話が通じねぇのはわかっていたが…まぁいい」


 舌打ちをし、不機嫌そうな顔をしながら男は自らのポケットから一本のビンを取り出した。


「おい、これをやるよ。無くすなよ」

「え?うわっとと!」


 男に投げ渡されたビンの中には緑色に輝く宝石の破片のようなものが詰まっていた。


「えっと、これは?」

「そのうちわかる、あぁそれと…」

「?」

「こっちの世界でも時間というのは流れている、数倍の速さでな。ジジィになる前にやることやれよ。後悔のないように…な」

「え?ちょっ…行っちまいやがった」


 この世界でも時は流れている?数倍の速さで?

 何を言っているんだアイツは…




 テレポートゲートから三つの影が出てくる、

 そう…


「セト…セト…!!」

「あぁ、ただいまリノア。」


 そのまま走ってくるリノアを懐で強く抱きしめた、

 その時、本当の温かさを感じた。


「セト…」

「泣くなって、俺はちゃんと帰ってきたんだからよ」


 俺の服が涙で濡れていくのがわかった、

 だが、少し嬉しい気持ちもあった。


「師匠~久しぶりっす~」

「お前はあまり心配してなかったのナ」

「いや~心配してたっすよ?心配しながら、師匠の分の料理を食べてたっすよ~。いや~リノアさんが師匠の分まで料理を毎日受け取ってくるもんで、毎晩いただいてましたよ。味は無いんスけどね」

「お前なぁ…」


 ん?

 そういえばリノア、

 妙な装備をしているな。


「リノア、そのコートは?」

「セトが消えたときに、黒い男が渡してくれた…」


 黒い男、

 それにこのコート。俺の消えたとき…


「アイツ、意外といいとこあるじゃねぇか。ま、俺なんだけどな」

「知ってるの?」

「あぁ、何なら一緒に返しに行くか」

「………うん」


 リノアは顔を赤らめながら小さくうなずいた。


「さてと…残る仕事は」




 ◆ ―リリール・武器屋― ◆


 リリールの町には名工がいるという噂は有名である、

 しかもその名工は旧友やその紹介人にしか仕事しないと来た。


「…なんて、あなたも随分と名前が知れわたりましたね」

「いやぁ、てれるぜ」

「そんなことはどうでもいいんだ、setoから何か預かっていないか?」

「勿論、預かってるぜ」


 そういうとアナライは奥へと入っていった。


「なぁセト、その預かりものって?」

「setoに頼んでおいたものだ、まぁ今にわかるさ」


 ジャンと話していると、

 すぐにアナライが戻ってきた。


「ほらよ、言われた通りに鍛えなおしておいたぞ」

「あぁ、ありがとう」


 アナライはセトに長い布で包まれた物を手渡した。


「行くぞみんな」

「え?これだけっすか?」

「あぁ、用は済んだ。そうだろアナライ?」

「あぁ、その通りだ。俺もさっさと店じまいしなきゃな」


 そうして俺たちはアナライの店を出た。


「それじゃあビート、ジャン。頼んだぞ」

「あぁ!俺はできる限りのプレイヤーにログアウトするように伝える、多分…無視する奴らも多いだろうけど。」

「じゃあ私は掲示板にログアウトするように書き込んでくるっスよ」

「あぁ。俺とリノアは先に行ってる、後は任せた!!」


 俺たちはそれぞれテレポートクリスタルを掲げて、

 それぞれの向かう先へと飛んだ。




 ◆ ―世壊樹― ◆


 根元へと俺とリノアは転送された、

 しかしすでに世壊樹の姿は変わっていた。

 葉は赤く、木は黒く染まっていた。


「私の記憶にあった世界樹…!!」

「これがリノアの記憶にあった世界樹、いや世壊樹か。」


 すると、

 やはり奴はいた。


「おや、遅かったじゃないか?ていうか生きてたんだな」

「そりゃそうだろ?まさかテメェも死んだとは思っていなかったんじゃないのか?」

「あぁ、だが。もう一度私に殺されたらもう二度と生き返れないよなぁ?」

「それがどうした、どっちにせよ俺くらいしかお前を倒せなさそうだからな」

「そうか、じゃあご勝手に?」


 セトは腰のカタナを引き抜かず、

 アイテム欄から壊世を取り出し、左手に持って構えた。


「おや?お前、前に戦った時には右利きじゃなかったか?」

「いいんだよ、コレでどこまで戦えるのか試したいだけだからな」

「そうか、それじゃあ遠慮なく!!」

「リノア!離れていろ!!」


 セトの壊世にデリトのナイトメアソードが叩き込まれ、

 金属同士のぶつかる音が響き渡る。


「いいねえ!この感じ、久しぶりだぜ!」

「そう油断していると、すぐに斬り殺しちまうぞ!!」


 二人の剣と刀がぶつかり、火花を散らし、削りあう。

 しかしダメージは1Pも喰らってはいない。


「そろそろ行こうか!」

「あぁ、望むところだ!」



 "音速のその先へ…!!"

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