帰ろうか
何だか非常に濃い日々を過ごしたような気がする。
毎日懲りずに屋敷にやってくるお見合い希望者。
それを双子が軽快にさばいていく、たまにサスケさんも参加。
まあ、参加する時ってお見合い希望者がアンジュさんをターゲットにしている時限定ということを私は知っているけどね。
でも、お見合い希望者は私にだけきているわけではない。
リュート様にもきているし、アレン君にも。
なので連日大叔父様のお屋敷は賑やかだ。
「ふう、こう毎日毎日突撃されると落ち着いてお茶も楽しめないわね」
お祖母様が面倒そうにそう言った。
最初こそ楽しそうだったけど毎日毎日門前で
「「「たのもーーーー!!!」」」
とかやられれば嫌になってくるよね。
「そうですね。大会が終わってから二週間程経っていますが未だに朝から騒がしいですし」
私がお祖母様にそうこたえている間にも、ちょっと騒がしい音が聞こえてくる。
普通だったら一度お断りすればそうそうもう一度来ることはないと思う、いや思っていたのだけど、この国は諦めるという言葉を知らないらしい。
直接会うまでは、と毎日やって来るのだ。
しかもその数は何故か毎日増えていく。
絶対お見合い目当てじゃなく、ただの脳筋が混ざっている、高確率で。
「この国のこともだいたいわかったことでしょうし、もうそろそろ帰ろうかしら? 」
「良いですね……あら、でも確かあの姉妹のことが片付くまでは国にいて欲しいってお願いされていませんでしたか? 」
そう、帰りたいのは山々だけど、この国のお偉方からあの姉妹の問題がきっちり片付くまでは出国しないで欲しいって言われている……らしい。
あの姉妹の家はこの国では力があると言われている家らしくいろいろと面倒くさい……らしい。
……らしい、らしい続きだけど正直今どうなっているかよくわからないのだ。
「そうなんだけど、こういう時に限って遅いのよね〜、決断が。いつもは何も考えずに力技で片付けるのに。この国を出た身だから口出しはしないようにしようと思っていたんだけど、こうも遅いうえに毎日毎日騒がしいとそうも言っていられないわね」
お祖母様はそう言うと近くに控えていた侍女にお祖父様を呼ぶようにお願いした。
確か今日は庭でリュート様と訓練するとか言っていたはず。
ということは、門の前で「たのもーーーー」集団のお相手しているのはアレン君とアンジュさん、時々サスケさんか。
いや、最初は私も相手をしようとしたのだけどあの人たち私にやられればやられる程、増えるし、復帰も速いしなんか私が求めている戦いと違うんだよね。
三日目あたりからみんなから出ないことを勧められて、お相手は辞退させてもらっている。
「ふむ、そうだな。もうそろそろ一度国に帰っても良いか……東の国にそのまま向かうのも良いかと思ったが。リリーナはどうしたい? 」
東の国か……サスケさんやスミレ姫の国だよね。
忍びの技術には興味があるから一度くらい見てみたいけど、正直もうそろそろサナに会いたいかな。
今までこんなに離れることもなかったし、ちょっと会いに戻っても良いよね。
だいたいあのバカ兄が絶対サナに迷惑かけているに決まっているもの。
吹っ切れたのかサナへの溢れんばかりの愛情が、から回っているんじゃないかと若干の不安は隠しきれない。
「お祖父様、私は一度国に帰りたいと思っております。余計な御世話なのかもしれませんがサナ……いえサナお姉様のことが心配なので。確実にお兄様が迷惑をかけていると思います」
私の言葉にお祖父様もお祖母様も、『確かに』と言うように頷いている。
やっぱりそう思いますよね〜。
「そうね、リカルドのあの感じだとサナがきっと困っているわね。リーザやアレクさんがいても暴走が止まらない可能性が大ね」
「そうだな、人の恋路を邪魔するつもりはないがせっかくリカルドを引き受けてくれたサナに逃げられたら大変だな。……良し、明日この国を早期に出国出来るよう『話し合い』をして来よう」
お祖父様、『話し合い』ですよね?
なんか変な意味が込められているような気がしないでもないんですが……『話し合い』なんですよね?
「リリーナ大丈夫よ。ちゃんと『話し合い』をして、どーしても結論が出ない時は私たちがきっちりさせてくるから」
ああ、最終的にはやっぱり力技なんですね。
でもこの国の人たちだったらそれも嬉しそうに受け入れそうでコワイ。
ーーその頃
「隊長……今日は絶対、何があっても遅れずに来て下さいって昨日あれ程言いましたよね? 」
「ちょっ、ま、待て! なんで抜刀しているんだよ! 落ち着けって、な、アレク! い、今、本当に今家を出ようとしていたんだよ! 」
「へえ……約束の時間を過ぎてから家を出て、どうやって時間までにたどり着けるんでしょうね? いや、本当に一度頭の中を覗いて見たいものです……………割りますか? 」
「わ、割るな!! 」