貴族事情➅
「お祖父様、お祖母様……」
私は唯一無傷の二人に声をかけた。
振り向いた二人は…………非常に清々しい笑顔だった。
「おおリリーナ、放って置いてすまんな。」
「ふふ、久しぶりに楽しくなってしまって、遊び過ぎたかしらね?」
遊びって……お二人には遊びでも周りは違うと思う。
信じたくはないが、少し離れたところでボロ雑巾のようになっているのは王様ではないだろうか?
他にもお祖父様たちと同じぐらいの年の方が、これまたイイ笑顔でぶっ倒れている。
そうか……みんなも楽しんだのか。
「あの、王家主催のパーティーでこのようなことになるのは普通なのでしょうか?」
もう、聞いちゃおう!
ここでは遠慮してたら生きていけない気がする。
お祖母様は私の問いかけに少し困った顔をした。
「普通……というか、このような状態になるのはこの人がいる時だけだからね。普段はここまでの大乱闘にはならないわよ。もっとこじんまりとした小競り合いだけ。」
そう言ってお祖母様はお祖父様を見た。
そうですか、原因はお祖父様の存在ですか。
小競り合いというのは、私が巻き込まれたご令嬢方のちょっかいのようなことかしら。
「さて、義理も果たしたことだし帰るか。」
「そうね〜、みんなもお楽しみだったようだし。」
義理って……お楽しみって……。
うん、たぶんいちいち突っ込んでいたらここでは生きていけない。
私たちはお祖父様とお祖母様の後について、王城を後にすることにした。
パーティー会場を歩いていると若い世代の方からの視線をやたら感じるのだけど。
何やらヒソヒソとこちらを見ながら話しているようだ。
『いくら爺さんたち相手とはいえ無傷って……』
『いや、爺さんたちに混じって親世代もいたぞ。それに王も代表権は持っていないとはいえ、かなりの実力だぞ。一体誰なんだ?』
どうやらお祖父様とお祖母様を知らない若い人たちが、戸惑っているようだ。
まあ、見た目強そうに見えないもんね。
『おい、あれ見ろよ』
『うん?あっ、あれは、さっき華麗な動きであの三人をあっという間に叩き伏せた……』
『あんな華奢な、触れただけで折れそうな女性があの三人をだぞ。一体誰なんだ。』
……も、もしかして私のことを言っています?
華奢って……いたって普通の体格ですけど。
うう〜〜、何故か私まで注目されているよ。
「あらあら、もしかしてリリーナも楽しんできたのかしら?熱い視線をいろいろなところから感じるわね。ふふ、もうロックオンって感じかしら。」
お祖母様、勘弁してください。
もうあんな猪突猛進のご令嬢に襲われたくないです。
「リリーナ様はとても鮮やかに頭の足りない方たちのお相手をされていましたよ。それはそれは見事なものでした。やはり『龍神』と『妖精姫』のお孫様ですね。今から大会が楽しみです。」
リュートさま〜〜。
リュート様は先ほどの出来事をお祖父様とお祖母様に報告している。
それを聞いた二人はニコニコしている。
この国ではそういう騒ぎを起こしても問題ないんですね?
むしろ王様が率先して騒ぎを起こしていますもんね。
そんな感じでこの日のパーティーは幕を閉じた。
「ふふ、やっぱりね。」
「ふん、全部無視すればいいだろう。」
一夜明けて、大叔父様のお屋敷にたくさんの招待状やら、手紙やらが届き始めた。
お祖母様は予想通り、お祖父様は面倒くさそうな表情を浮かべている。
「これはこれは……ふむ、八割リリーナ、残りは義兄上、姉上宛みたいですな。ほうほう、リリーナには是非手合わせしたいという内容のものが多いようですね。」
どうやら昨日の三人とやり合ったのが問題だったようだ。
これはもしかして、まぐれで勝ったとでも思われたかな?
「リリーナお姉様に喧嘩を売るなんて百年早いですわ!」
「リリーナ様が戦う前に俺たちが相手をします!」
うん、アンジュさんとアレン君はブレないね。
でも、なんかすごく心強いよ。
「あらあら。アンジュもアレンもそう熱くならないで。大丈夫よ、リリーナの実力は公の場で見せつければ良いのだから。」
と、言いますと?
「そうだな。いちいちこんなの相手にしていたら時間がかかってしょうがない。リリーナ、大会で思う存分暴れても良いぞ?」
あれ?
大会に出るのって、もしかして決定なの?
なんかどんどん外堀が埋まっているような気がする。
「そうと決まれば衣装の準備をせねば。安心しなさい、私がとびっきりの衣装を準備するからね。」
大叔父様が笑顔でそう言ってくれているのだが……衣装ってどんなの?
もの凄く嫌な予感がするのだが。
それより何より、私は参加するんですね。
まあ戦うのは良いんですよ、ただ……ただこの国の貴族のご令嬢は素直に怖いです。




