貴族事情⑤
「リリーナ様ーー!」
「リリーナお姉様〜〜」
アレン君とアンジュさんの声が聞こえる。
どうやら私のことを探してくれているようだ。
「こちらにいますよ。」
私も二人の声に応える。
やっと合流できるね。
二人が走ってこちらにやって来た。
「リ、リリーナお姉様!な、何でお姫様抱っこされているんですか!?」
ん?
…………私は顔を上げてみた。
あ、リュート様と至近距離で目が合った。
うん、そういえば抱き上げられたままだったよ。
「あの〜〜、リュート様?もうそろそろ下ろしていただけますか。」
「うん?ああ、リリーナ様は軽いので全く気づかなかったです。名残惜しいですが……本当に下りますか?」
リュート様は本当に残念そうな顔でそう言ってくる。
……いやいや、ここで負けちゃダメでしょう。
「はい、下ろして下さい。」
「はあ〜〜、残念です。」
そう言うとリュート様はそっと私を下ろしてくれた。
そこへアンジュさんが飛び込んでくる。
私は慌ててアンジュさんを受け止めた。
「ア、アンジュさん危ないですよ?」
「う〜〜、リリーナお姉様〜〜!あんなに守るって言っていたのにお側にいれずにごめんなさい。」
アンジュさんが涙目で、謝罪してきた。
そんなに気にしなくても大丈夫なのに……心配してくれたんだね。
「大丈夫よ。ほら、どこも怪我もしていないでしょう?さあ、顔を上げて。せっかく可愛くお化粧もしていたのに……。はい、これで少しは良いかしら?」
私はアンジュさんのこぼれ落ちそうになっていた涙をハンカチで拭った。
何故かアンジュさん真っ赤になっている。
「はぅ!リリーナお姉様〜〜、やっぱりお姉様はステキです!」
そのままギュウギュウと抱きついてくる。
このパターンは苦しくなってくるやつか?
私がもうそろそろギブアップしようとした時にアレン君がアンジュさんを引き剥がしてくれた。
ナイス!アレン君。
「アンジュ〜〜、いい加減にしろ!お前がリリーナ様を苦しめてどうするんだよ。すいません、リリーナ様。大丈夫ですか?」
心配そうにアレン君が私を見つめてくる。
「ありがとう、アレン。ちょっとだけ苦しかっただけだから平気よ。それより二人も大丈夫だったかしら?すごい勢いで人の波に乗っていったものね。」
「はい、この国の貴族の人たちって本当に力強いですね。ちょうど俺たちが流された方で、リリーナ様のお祖父様の戦いが始まっていて……さすがにこの国の王が突撃して問答無用で吹き飛ばされたのを見たときはびっくりしましたよ。その後も凄かったですよ。次々と貴族の……しかもお祖父様と同じ年代の人たちが突撃しては吹き飛ばされるという光景が広がっていました。それに、一回じゃ終わらず二度三度と……王にいたっては俺が見ていただけで五回は行ってましたよ。」
この国の人たちっておかしいの?
っていうか、王様って……マゾなの?
あのお祖父様相手に五回って、本当に変だよ。
「そ、それはスゴイわね。ところで、お祖父様とお祖母様はまだみなさんのお相手をしているのかしら?」
「はい、絶賛戦闘中です。リーフィア様も貴族の女性相手に華麗に舞っていましたよ。」
そ、そっか〜〜。
お祖母様も舞っちゃってましたか。
なんか本当に舞踏会じゃなくて武闘会だね。
「リリーナ様だってさっき華麗に三人を相手にしていたよ。」
リュート様がアンジュさんとアレン君に話しかけた。
いや、私のことはいいよ。
「リリーナお姉様に襲いかかった不届き者がいるのですか?!」
アンジュさん落ち着いて。
アレン君、無言で殺気撒き散らすのやめようか。
「はは、大丈夫だよ。リリーナ様の相手になんてなってなかったから。軽く避けられ、投げられ、いいとこ無し。いつも自分たちが中心と思っていた彼女たちには良い薬になったんじゃないかな?」
ふむふむ、リュート様は限りなくあの女性たちが苦手なんですね。
「さて、もうそろそろ中に入ろうか?そう言えばサスケ殿の姿が見えないが、はぐれたままなのかな?」
そう言われてみれば、確かにサスケさんの姿が見えない。
まあ、サスケさんのことだからどこかで高みの見物をしているような気がする。
そんなことを考えていたら、突然目の前にサスケさんが現れた。
たぶんその辺の木にでも隠れていたんだろう。
「もう、いきなり目の前はびっくりしますよ。」
「すまん。ところで、武闘会、終わった、みたいだぞ。」
武闘会って……まあ、事実だからしょうがないか。
「ではそろそろお屋敷に帰れるかしらね。お祖父様たちの方へ行ってみましょう。」
私たちは揃ってお祖父様とお祖母様のところへ向かった。
途中から床に倒れている人が目立ち始めたが、特に騒ぎ立てることもなく周りにいた使用人らしき人たちがせっせと運んでいる。
本当にこれで良いの?北の国。




