貴族事情
さて、やって参りましたパーティー会場……という名の王宮。
ある意味凄い、自国、西の国、北の国、3カ国のお城にご招待。
私はいち辺境伯の娘のはずなんですけどね。
まあ、そんなことより今は周囲を見回すのに忙しい。
覚悟はしていたはずだった……でも、まだまだそんなもんじゃダメだったと反省中である。
私、アレン君、アンジュさん、サスケさん、もう目が点である。
まず、ここは本当に貴族の人たちが集まっているパーティー会場なんですか?
いや、きっとそうなんだろうけど……けど、どうしても確かめたくなる。
ここでは私たちなんぞ子供みたいなものだ。
だって皆さん背が高い。
私も低いわけではないけど、私より背が低い人などいないのだ。
そしてお祖母様が言っていた通り、女性陣のドレス、皆さんそんなに肌を見せて良いんですか?
と、本気で問いたくなるような姿だ。
絶対アレは下着が見える……いやもはや見せているのだろう。
何より、皆さん、本当にステキな筋肉をお持ちで。
と、言うしかないぐらい鍛えていらっしゃる。
男性も皆さん背が高くがっしりしているが、基本露出が多いのは女性なので視線はどうしても女性にいってしまうわけで……。
アレン君はもう真っ赤な状態がずっと続きっぱなしだ。
サスケさんは……アレは見ていない風を装って、バッチリ見ているね。
その様子に気づいたアンジュさんが、サスケさんの足を思いっきり踏みつけてようとして避けられている。
そこは踏まれてあげようよ。
「じゃあ、まず王に挨拶に行きましょうか。」
大叔父様が私たちを王様の方へと連れて行ってくれた。
その道中、やたらお祖母様の年代の方たちから視線を感じた。
怖くてそっちなんて見れないよ。
私の考えていることがわかったのか、お祖母様が私に小声で話しかけてきた。
『リリーナ、王に挨拶するまではあの人たちも近づいて来ないから安心しなさい。ただ、挨拶が終わった後は……覚悟しておいてちょうだい。』
覚悟って……いやいや無理です。
こうなったら挨拶した後はスッと避けないと。
そう心に決め、王様の前へとたどり着いた。
「妖精姫!」
そう大きな声でお祖母様を呼んだのは、見るからに王様って感じの人だった。
その隣には王妃様らしき人もいる。
王様は勢いよく席から立ち上がりお祖母様の方へ来ようとした。
が、しかしそれは叶わなかった。
何故なら隣にいた王妃様と思しき方が、立ち上がった王様にそれは見事な回し蹴りを決めたのだ。
もちろん王様はその場に倒れましたよ。
正直かなりの異常事態なはずなのに、誰も騒がない。
王様は自力でその場に立つと、何事もなかったかのように王妃様に文句を言う……わけではなく
「うむ、見事な回し蹴り!さすが我が王妃だ!」
と言って賞賛している。
何コレ……私、サスケさん、双子はかなり引き気味だ。
回し蹴りを決めた王妃様は、王様を無視してお祖母様の方へと近づいてきた。
ど、どうしよう、お祖母様まで攻撃されたら。
そんな私の考えは杞憂に終わった。
「リーフィア!久しぶりですね。相変わらず細いわね〜。」
「ふふ、お久しぶりです。そちらも相変わらず鋭い蹴りだわ。さすがですね。」
お祖母様と王妃様は仲良く談笑している。
その傍らでは王様が、どうにかしてそこへ入り込もうと頑張っているが王妃様の鉄壁の防御にそれが叶わない。
その様子を見てお祖父様が遠慮なく笑っている。
何この混沌とした空間は。
「おい……何笑っているんだ。」
お祖母様と王妃様に相手にされない王様は、その様子を遠慮なく笑っていたお祖父様に噛み付いた。
お祖父様は楽しそうにその相手になっている。
「面白いから笑っていたんですよ。相変わらず王妃様に敵わないようですね。」
「ふん!我が王妃が強いのは当たり前だろう。お主こそどうせ妖精姫の尻にひかれておるくせに。」
何だかこちらは仲良く談笑とはいかないようだ。
お祖父様は王様をからかって遊んでいるような節もある。
良いのかなコレで。
お祖母様と王妃様は話がひと段落ついたのか、私たちの方へとやって来た。
「えーっと、……あなたがリーフィアのお孫さんね。ふふ、リーフィアの若い頃に似ているわ。でも、似ているのは姿だけかしら?」
「あら、違いますわよ。リリーナは、ああ、名前はリリーナというのだけど、実力もありますわ。一緒にいるリリーナのお友達もなかなか粒揃いよ。今回の大会に一般枠で出場する予定なの。」
え?お祖母様、出場は決定事項だったんですか?
なんか目立ってしまうとか言っていたような……。
私の思いとは別に話しは進んでいく。
「それは楽しみね。これは妖精姫の再来かしら?今の若者たちは妖精姫の存在を知らないから、大会は大いに盛り上がるんじゃないかしら。もちろん、私たち世代は別の意味で盛り上がりそうだけど。」
そう言って王妃様は周りを見渡した。
いつの間にかお祖父様やお祖母様と同じ世代と思しき人たちが集まっている。
こ、怖いよ〜、その熱い視線が怖すぎます。




