北の国➇
あっという間に王家主催のパーティーの日になってしまった。
とりあえず、声を大にして言いたいことがある。
「どうしてこんなに露出の多いドレスなんですか!?」
今、私とアンジュさんが着ているドレスは大叔父様が用意して下さったものだ。
もちろんサイズは合っている、だけど問題は別にあった。
何故背中がバッチリ見えているの?
スカートも大きく切れ目が……。
もう、本当に着てみてビックリだよ。
「リリーナお姉様、とってもお似合いです!でも、それでパーティーなんていう男のいっぱいいる場所に行くのは、魔物の巣に仔ウサギを放り込むようなものですよ。……まず、アレンが耐えられるか。」
アンジュさんは自分のことより私のことを心配してくれている。
とてもありがたいが、そういうアンジュさんも相当マズイと思うよ。
「ふふ、2人とも大丈夫よ、とっても似合っているわ。それに、いつも着ているドレスでパーティーに参加する方が目立つわよ?北の国では基本ドレスは露出が多いから。」
そういうお祖母様もとっても素敵に背中がバッチリ見えるドレスを着こなしている。
何だろう、北の国のこの特殊性……。
私とアンジュさんは半信半疑ながらもお祖母様の言葉に従って、このドレスでパーティーに参加することにした。
私たちの着替えを待っている男性陣の前に出るのは少し……いや、かなり恥ずかしいけど。
私たちは、まあお祖母様は違うけど、男性陣の待つ部屋へ勇気を出して入ることにした。
「ひぇ!」
いや、さすがにその言葉はないよアレン君。
部屋に入った私たちの姿を見たアレン君は短く悲鳴みたいな声を上げた。
ちなみにサスケさんも大きく目を見開いていたけど、口をギュッと固く結んで叫び声を止めたようだ。
お祖父様と大叔父様、リュート様はいたって普通である。
「おお、よく似合っていますな。サイズも大丈夫のようで良かった。」
「ええ、ありがとうリュシアン。」
和やかにお祖母様と大叔父様が会話している最中も視線を感じる。
そちらを振り向けば、スゴい勢いで視線をそらされる。
もちろん視線の相手はアレン君なわけで。
アレン君の顔を見ると今まで見たことのないくらい真っ赤っかになっていた。
ええ、わかります、私も恥ずかしいですから。
そんな中リュート様が近づいて来た。
「リリーナ様、アンジュ嬢、とってもお似合いですね。……うんうん。」
リュート様は褒めてくれた、だけど……何故私たちの背中を見ながら頷いているの?
リュート様はナチュラルに背中を見ている。
いや、そんなに普通に見られても恥ずかしいものは恥ずかしいのですけど。
「あ、あのリュート様、さすがにそんなに見られると少し恥ずかしいのですが……」
私の言葉にリュート様は不思議そうな顔をしている。
え?私、おかしいこと言ったの?
そんな私たちのやり取りを見ていたお祖母様が笑いながら助け船を出してくれた。
「ふふ、リリーナ、リュートに悪気はないのよ。リュート、リリーナは北の国は初めてだから背中を見られることに違和感があるのよ。北の国以外の国ではここまで肌を見せるドレスはないから。」
お祖母様の言葉にリュート様が、しまったという顔をしている。
「も、申し訳ありませんリリーナ様、アンジュ嬢。あ、あのですね、北の国では貴族の女性のドレスはこのような物が主流なんです。そして背中を大きく見せて、自分の鍛えられた体を見せるんです。」
……何それ。
露出が多いのは鍛えた体を見せつける為って。
ここまで脳筋の国だとは、ある意味尊敬する。
「そして、先ほどお2人の背中を見て頷いていたのは、お2人とも体は小さく、軽いのに綺麗に鍛えられておられる背中に頷いていたのです。さすがですね。」
これはどうやら褒められているようだ。
私とアンジュさんは顔を見合わせ、そしてリュート様に一応御礼を言ってみた。
「「ありがとうございます?」」
見事に疑問系の御礼が重なった。
でも、確かにそういう理由ならいつものドレスでパーティーに行ったら悪目立ちするね。
恥ずかしいのは我慢するしかないか。
ところでさっきからアレン君もサスケさんも全く喋らないんだけど。
アンジュさんも2人の様子が気になったのかアレン君にまず話しかけている。
『ほら、アレン。あんたもリリーナお姉様のところに行って褒めてきなさいよ。リュート様に負けてもいいの?』
『そ、そんな簡単に近づけるなら、すぐに行くさ!でも……アレはダメだろ。歩く凶器だ。俺専用の凶器としか思えない。いきなり背中もマズイのに……見たか?スカートに切れ目が入っているんだぞ?何なの、俺のこと殺しに来たの?』
『確かにあの殺傷能力はスゴいわ。女の私でも気を抜くと危ないもの。でも、良く考えなさい!このままパーティーに行ったらもっと多くの人にリリーナお姉様のあの姿が見られるのよ?今慣れておかないと、会場でお助け出来ないわ!』
アレン君とアンジュさんが何やら真剣に話し合っている会話はよく聞こえないから、サスケさんに話しかけてみた。
「サスケさん、一言も喋らないですが、どうかしましたか?」
「うん?ああ、えーっと、……似合って、いる?」
褒めてる?疑問系ですけど。




