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北の国➂

さて、どうしましょうか?

お祖父様とお祖母様は目がヤル気ですよ。

まあ、馬車を取り囲んでいる人数は見えている限りで10人。

このメンバーでこの人数……はっきり言って楽勝だ。

絶対お祖父様1人で片付いちゃうでしょ。


でも、そんな事情を知らないおバカさん達は大声でなんか言っている。


「おい!早く出てこい!もしかしてビビりすぎて出てこれねぇのか〜〜。」


あ、お祖父様が剣に手を……アレン君も腕を振り回している。

アンジュさんもいつも隠し持っているロッドを取り出し、お祖母様は……どうやら高みの見物らしい。

サスケさんはというと、普通に座っている。

私の視線に気がついたのかボソッと一言。


「俺、出る幕、ないだろ?準備、するだけ、ムダ。」


まあ、一理ある。

私は、最近体が鈍っているからちょっとは参加しようかな。

私たちが馬車の外に出て行こうとした時、急に外が騒がしくなった。

何が起きたのだろうと、私たちは急いで馬車を降りた。



馬車の外に出た私の目に飛び込んできたのは…………クマ?

いや、あれは非常に顔が毛だらけだし、なんか全体的に汚れているけど、たぶん人だ。

そのクマ……いや、その人は馬車を取り囲んでいたバカ達を投げ飛ばしまわってる。

すごく力強いようで、バカ達は遠くまで飛んでいっているみたい。

人間ってあんな風に飛ぶんだね〜〜。


クマは……ああ、もう心の中ではクマで良いよね?

クマは暴れまくり、全てのバカを吹っ飛ばした後、こちらにやってきた。

一応バカをやっつけてくれたけど、果たして味方なのかな?


「怪我はないか?」


クマはやっぱり人だったようで人語を話した。

しかもやたらと良い声なんですけど。

声だけ聞くとすごくイケメンっぽい。


「ええ、大丈夫ですわ。通りすがりの方、ありがとうございます。」


お祖母様がクマにお礼を言っている。

対するクマは……お祖母様と隣にいたお祖父様を見て明らかに動揺しているようだ。

だって手に持っていた荷物をドサドサっと全部落としているし、何か言おうとしてはいるが言葉にならないようで、「あーー」とか「うーー」とか唸っている。

もしかしてお祖父様とお祖母様のこと知っているのかな?

もちろんその様子に気づいているお2人は、クマが落ち着くのを待っているようだ。


そして、ようやく落ち着きを取り戻したクマはお祖父様とお祖母様の前で膝をついて頭を下げ始めた。

あ〜〜、たぶんクマは北の国の人なんだね。



「お、お久しぶりです。ま、まさかこのようなところでお会いできるとは……伯父上、伯母上。」


わあ、まさかの身内!

ということは、大叔父様の息子さんということですか?クマは。

いやこの場合、クマ様だね。

お祖父様とお祖母様もクマ様の言葉にビックリしているようだ。


「うん?君はリュートか?……随分雰囲気が違うからわからなかったぞ。」


「ええ、本当に。確か最後に会ったのは10年くらい前だったかしら。」


どうやらクマ様はリュート様とおっしゃるらしい。

この10年の間に姿に変化があったようである、クマ化だね。


「しかし、何故伯父上と伯母上がここに?」


「あら?リュシアンには聞いていないかしら?手紙では知らせていたのだけど、孫娘に北の国を見せたかったから訪問するって。」


「……父上からは何も……というか私がここ一ヶ月ほど家に帰っていないからですね。最近山に暴れ熊や狼の群れの目撃情報が多数あって、それを退治していましたので。もうそろそろ帰ろうかと考えていたところで馬車を囲むアホを見つけて投げ飛ばしてしまいました。伯父上と伯母上がいるとわかっていれば手出ししていませんよ。」


クマ様は本物の熊と戦っていたのね。

私がクマ様を見ていたら、クマ様と目が合った。

顔は毛だらけだけど目はとっても綺麗だ。


「ええっとリュート、この子が孫娘のリリーナよ。」


お祖母様にクマ様へ紹介されたので、私はクマ様の前に行き挨拶をした。


「初めまして、ク……いえ、リュート様。リリーナと申します。」


私の挨拶にクマ様は目を見開いている。

そしてすごい勢いで後ろへ下がっていった。

え、ちょ、ちょっと傷つくのですけど……。

私の表情に気づいたのかクマ様が慌てて弁明してきた。


「あ、いや、リリーナ様は何も悪くないのです。ただ、俺が一ヶ月も山を彷徨い歩いていて、その……姿や匂いが不快に感じるだろうと思って……。気分を害してしまって申し訳ありません。」


クマ様がその大きな体を気持ち小さくして謝ってきた。

何だかちょっと可愛い。


「いえ、大丈夫ですよ。一ヶ月も大変でしたね。お疲れでしたのに助けていただいてありがとうございました。それから私のことは様付けなどしないで下さい。リリーナとお呼び下さいね。」


私にとってはクマ様は……何になるのかな?

伯父様?ではないか……親戚のおじ様になるのかな?


「とりあえずこんなところにずっといるのもあれだし、リュシアン殿の屋敷へ向かおうとするか。リュート、君も乗って行きなさい。」


お祖父様の言葉にクマ様はブンブンと首を横に振った。


「いえ、この姿で一緒には乗っていけません。私は走って行くので大丈夫ですよ。では、また後で。」


そう言うとクマ様はすごい勢いで走り去っていった。

わあ、速い。


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