北の国④
クマ様がすごい勢いで走り去った後、私たちはまた馬車に乗って北の国を目指した。
馬車内では先ほどのクマ様の話題で持ちきりだ。
「さすがリーフィア様の血筋ですね。力強さでは敵わないかもしれません。」
「本当に凄かったですわ。しかもパワーだけではなくスピードもありましたもの。」
双子はしきりにクマ様を褒めている。
たぶん、久しぶりに自分たちよりも強い人を見てテンションが上がっているんだと思う。
「リュートは昔は線が細かったのだけど、リュシアン……ああ、私の弟ね、あの子に似てきたみたい。たぶん今度の大会にも出るんじゃないかしら?」
大会っていうとあの国の代表を選ぶとかいうやつね。
別に代表とかに興味はないけど、面白そうだよね。
ちょっと聞いてみようかな?
「お祖母様、その大会には北の国の貴族しか出られないのですか?」
「あら?リリーナ興味があるの?そうね〜、昔と変わっていなければ国の代表決定戦の他に、一般枠もあるわよ。だって昔その一般枠に出場して初出場でぶっちぎりで優勝したのがあの人だもの。ちなみに優勝すると本人の望むものが与えられるのよ。その時は私との結婚を認めさせてたわね〜。」
何だろう、お祖父様とお祖母様の馴れ初めって舞台向き?
そして、お祖父様ってお祖母様にメロメロだったのね。
力が正義っていうお国柄だもの、一般枠で出場したお祖父様の戦いっぷりにみんな熱狂したはずだよ。
お祖母様の言葉を聞きアレン君が質問を投げかけた。
「一般枠というのは、他国の者でも誰でも参加出来るのですか?」
「ええ、制限はないわよ。結構参加者はいるんじゃないかしら?上位に食い込めば北の国で働き口が見つかると思うし、ただもちろん性格に問題があれば駄目よ。そういうところは厳しいからね。アレンだったらかなり良いところまでいけるんじゃないかしら?」
アレン君はウンウンと頷いている。
もしかしなくても参加するのかな?
いいなぁ〜、私も出ちゃ駄目かな。
私の表情から察したのかお祖母様がこう言ってきた。
「リリーナも出たいの?男女別のものもあるけど、リリーナだったら私と同じで男女一緒のものでも大丈夫よね?良いんじゃない、参加しても。でも、一応覚悟はしておいてね?イロイロと。」
イロイロ……ですか?
そのセリフが非常に怖いんですけど。
「リリーナお姉様が出場なさるんでしたらもちろん私も出場しますわ!リリーナお姉様の敵になりそうな人を片っ端から退治いたします。」
気持ちは嬉しいんだけど、片っ端から退治しちゃったら出場する意味がわからないよ。
出来れば強い人と戦ってみたいし……クマ様とも戦えるかな?
あ、でもクマ様は貴族枠か、残念。
私たちが馬車内で盛り上がっているうちに、お祖父様が爆走したおかげで北の国に無事着いた。
今、向かっているのは大叔父様のお屋敷、お祖母様の実家だね。
クマ様は無事着いたかしら?……って走って去って行ったんだからまだか。
そうこうしているうちに馬車が止まった。
お祖父様が「着いたぞ」と言っている。
「さあ、着いたわ。久しぶりにゆっくりできそうね。」
お祖母様は久しぶりの実家にご機嫌のようだ。
馬車から降りた私たちの元へ、屋敷の方から誰かが近づいてきた。
「姉上、お久しぶりです。相変わらずお綺麗ですね、さすがは『妖精姫』。」
姉上と呼ぶということはこの方が大叔父様、リュシアン様ですね。
そしてさらっと気になる言葉を発した張本人。
はい!『妖精姫』って何ですか?
お祖母様へ向かって笑顔でそう言った大叔父様はお祖父様を見ると、またまた気になる言葉を発した。
「おお、これは義兄上。相変わらずスマートですな。なのにあの強さ、今もお変わりありませんか?『龍神』殿。ぜひ手合わせ願いたいものですな。」
はあ、『龍神』ですか。
ついに来るところまで来たって感じかな。
とりあえず『龍神』はお祖父様が強いからだろうけど、『妖精姫』って。
確かにお祖母様はお綺麗だけど、妖精……かな?
お祖父様とお祖母様と楽しそうに挨拶していた大叔父様とふと目が合った。
すると大叔父様は私の方へと近づいてきたのだ。
「君がリリーナかい?おお、さすがは姉上の孫だ……可愛いなあ〜。うちは子供は男だけだし、孫も男の子ばかりだから羨ましいよ。それに『妖精姫』の孫だ、たぶん可愛いだけではないんだろう?」
「もう、リュシアン。リリーナが驚いているわよ。ビックリさせてごめんねリリーナ。」
「いえ、大丈夫ですわお祖母様。初めまして大叔父様、リリーナです。」
私の挨拶に大叔父様は破顔され、そして他のみんなのにも声をかけ始めた。
「おお、リリーナのお友達かい?みんな細いな〜〜、よし!この国にいる間にしっかり体を作っていってくれ。いっぱい食べて大きくなれよ。」
細いって……普通だよね?
確かに大叔父様はお祖母様に似ず、体が大きくてガッシリしているけど。
北の国にいる間にみんながムキムキになったらちょっと嫌だな。




