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兄とサナ

兄とサナ、ついでにダミアン様との戦いから3日経った。

兄とサナの関係は何も変わっていない。

むしろ何も起きない。


あれだけサナ、サナ、言ってた兄が何も騒がないのだ。

正直、私やアンジュさん、アレン君は兄が何か変な物でも食べたのではないかと疑っている。

それぐらい、サナに対して何も言わないのだ。


逆にサナが挙動不審なところがある。

兄を見ると何か言おうとしては、結局何も言わずに兄を見つめている。

今までと反対だ。



兄とサナの関係は何も変わらないが、兄とダミアン様の関係には変化が起きた。

ダミアン様が騎士団に入団したのだ。

兄とやりあった翌日騎士団に現れたらしい。

その時のことを兄が教えてくれた。



「……と言うわけで、これからお世話になります。よろしくお願いします、リカルド隊長。」


と、ダミアン様。


「は?何しているんですかダミアン殿。おい、アレク。と言うわけってどういうわけだ?」


兄は一緒にいたアレク様に聞いてみたらしい。


「……今日朝一で手続きが完了していたようです。正直、私も聞きたいぐらいなんですよ。隊長は何故ダミアン殿が騎士団に入隊希望を出したか心当たりあるのではないですか?」


「あ〜〜、心当たりな。……昨日のことが原因ですか?」


兄の言葉にダミアン様は大っきく首を縦にしたらしい。


「そうです!私は今まで同年代に負けたことなどありませんでした。だからこそサナさんの女性ながらあそこまで強い姿に惹かれたのです。しかし、昨日リカルド隊長に完敗しました。今は……今はリカルド隊長しか見えません!」


兄はダミアン様のこのセリフにドン引きしたようだ。

隣にいたアレク様にも警戒人物と認定されたらしい。

ちなみに騎士団にいきなりねじ込んできたのは、お祖父様とダン先生の仕業らしいので兄にもどうすることも出来ないようだ。

なのでここ3日ぐらいはやたら兄が疲れている。

訓練をするのは良いようだが、それ以外でも懐かれたらしい。

何故か副官であるアレク様に対抗心を燃やしているようだし。

うわ〜〜、兄がモテてる……男の人にだけどね。



「俺、思うんだ。リリーナやアレンでも良いんじゃないか?」


兄が疲れが見える姿でそんなことを言う。

いやいや、何だかとても粘着質なようなのでご遠慮しますよ。


「い、イヤだわお兄様ったら。ダミアン様のお相手はお兄様以外には無理ですわ。それに、私にも警戒するお相手はおりますもの。」


レオン様とスミレ様のコンビはまだまだ油断出来ないからね。

そこへダミアン様が来られたら、許容量一気に超えるよ?

まあ、アレン君は1度手合わせしてみたいって言ってたけど、どうかしら。


「はあ〜〜、しょうがない。とりあえず協調性でも学ばせるか。」


「お、お兄様から協調性という言葉が出るとは思いませんでしたわ。」


「リリーナお前な、俺のこと馬鹿にしてるだろう?まあ、普通ならこんなこと言わないけどな。ダミアンは強いんだけど、人と合わせるのが本当に苦手みたいなんだよ。個人なら良いけど、騎士団の一員になったからにはそこら辺はきっちりさせとかないとな。」


な、何だか兄がカッコ良い。

びっくりだわ。


私と兄がそんな話しをしていたら、他に用事があって側を離れていたサナが戻って来た。

すると兄はスッと席を立ち部屋をあとにした。

そんな兄の姿にサナがちょっとだけ悲しそうな顔をしている。

うーん、私に出来ることはないのかな?

こんな2人の姿は見たくないよ。

とりあえず、サナに聞いてみようかな。

おせっかいかもしれないけど、このままじゃ駄目だと思う。



「ねえ、サナ。お兄様のことなんだけど……」


私はそこまで言って、サナを見てギョッとした。

だって、サナが涙を流しているんだもん。


「ちょ、ちょっとサナ。あなた涙が……ああ、もう、ほらこれで涙拭いて。」


私は慌ててハンカチを渡した。

サナは『ありがとうごじゃいます』と涙声で答えた。

泣きながらだから、ごじゃいますになってるよ。


5分ほど経つとようやくサナも落ち着いたようだ。

サナが目を赤くして話し始めた。


「わ、私、自業自得なのに苦しくって……リカルド様に避けられて……それでどうしたら良いのかわからなくなってしまって。」


「サナ、聞きたかったのだけど。あなた、どうしてあんなに勝負にこだわったの?あなたも最初からわかっていたでしょう?お兄様が本気になったら勝てないって。」


「……はい。ですがどうしても、リカルド様に本気で勝負していただきたかったんです。私は……私は貴族ではありません。そんな私がお役に立てることと言えば、身の回りのお世話と戦うこと。領地であれば魔物もおりますから、私でもお役に立てると思いました。私はリカルド様に戦闘でお役に立てることを認めていただきたかったのです。守られているだけの存在なんて嫌だったんです。私は、リカルド様の背中を守れる存在になりたかった。」


サナは今まで溜めていたであろう想いを吐き出した。

兄にはこの想いは届いていないのだろうか?


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