サナを守る者
ダミアン様がサナへ攻撃しようとしている。
私は木の棒を手に持ち、サナの方へと向かおうとした。
私の両隣ではアレン君とアンジュさんも同じくサナを助けようとダミアン様を狙っている。
だけど、私たちの手助けなんていらなかった。
だって、サナを守る役目は私ではなかったんだもの。
「……っこの!!サナを泣かせたな〜〜。いい加減にしろ!」
兄が今までよりも速い動きでダミアン様へと突撃した。
ダミアン様はその兄の攻撃を今まで通り木の棒で受けようとしたのだが……
ボキッ
今まで兄の全ての攻撃を受けてきた木の棒が折れた。
兄はそれでも攻撃を止めない。
それまで飄々としていたダミアン様が初めて焦りを見せた。
「え?嘘でしょう、私の武器を折るなんて……」
いや、でも言っても木の棒だからね。
逆にそんなにショックを受けている方がビックリだよ。
「おお〜〜、リカルド殿も本気になったか。たまにはダミアンにも良い薬になるじゃろう。あいつはあまり自分よりも強い者と戦ったことがないからの〜〜。」
「いや、身近にいるでしょう?師匠が。」
アレン君がダン先生に突っ込んでいる。
確かに、どう考えてもダン先生の方が強いよね。
「わしでは駄目じゃ。同世代に負けてみないと今以上は目指せんからの〜〜。」
ダン先生……ダミアン様を何にしたいの?
正直、今のダミアン様の実力があれば騎士団でも五本の指に入るよ。
いや、たぶん兄を抜かせばトップかな?
「お祖父様の友人の孫だから手加減していたが……もうやめだ!これだけサナを追い詰めたんだから、それ相応の報いは受けてもらうぞ!」
兄は、武器を持たないダミアン様に、自身も剣を捨て素手で挑んだ。
兄の拳がダミアン様の頬をかする。
「ちょ、ちょっと待って下さい。今まで手加減してただって?……この私を相手に手加減。」
ダミアン様は兄の攻撃を避けながらブツブツ呟いている。
手加減されていたことがショックのようだ。
その間も兄の拳がダミアン様を狙っている。
「サナが、自分に勝てたら結婚を考えるって言ったって、本当にサナを打ち倒す馬鹿がどこにいるんだ!男だったら女に手をあげるなんて以ての外だろ?男の拳は女を……大事なモノを守るためにあるんだよ!」
兄の渾身の一撃が、ダミアン様のボディーに入った。
「っく!」
堪らずダミアン様が膝をつく。
そのタイミングでダン先生とお祖父様が兄とダミアン様の近くに寄って行った。
「そこまでだ、2人とも。」
お祖父様が2人の間に入った。
「ま、まだ私はやれます!手加減だなんて……私を相手に手加減なんてあり得ない!」
ゴンッ
鈍い音がした。
見ればダン先生がダミアン様の頭に拳を落としている。
「いい加減にせんか。ほれ、負けを認めなさい。今のお前ではリカルド殿にはどうやったって勝てんわ。お前が馬鹿にしていた騎士団の隊長がリカルド殿だ。騎士団の実力は上がってきておる。自分の強さを過信したお前では今に抜かされるぞ。」
ダミアン様は項垂れている。
あの様子では今まで同年代に負けたことなど無かったのだろう。
「ふう、リカルド殿、サナさん、邪魔したの〜。すまんかった。じゃあ、これは連れて帰るから。」
そう言うとダン先生はダミアン様の身体をヒョイっと持ち上げ、暴れるダミアン様に一撃を見舞うと気絶したダミアン様をそのまま抱えて帰っていった。
……ダン先生、恐るべし。
「師匠って、衰え知らず……ですね。」
アレン君もダン先生の後ろ姿を見ながらそんなことを言っている。
全くもって同意見です。
私たちがダン先生とダミアン様のやり取りに見入っている間に、兄とサナの方でも動きがあったようだ。
「なあ、サナ。もう、俺の負けでいいからやめよう。」
兄の言葉にサナが
「え……、で、ですが、決着がつかないと……」
「ああ、結婚のことだろう?俺、やっぱりサナを傷つけてまで結婚を望むのは間違っていると思うんだ。最初はサナの気が済むならって思ったから、勝負をしたけど……はは、俺、サナと真剣に戦うなんて無理だった。訓練だったらいくらでも付き合うけど、サナを絶対傷つけるような勝負なんて無理だ。ほら、俺横腹にサナのムチも受けたしさ。」
「いや、あれはダミアン様が突然来て、それでリカルド様が私を庇われたから……」
「サナ、真剣勝負なら何があってもそれは言い訳にしかならない。俺は負けたんだよ。いや、勝負する前から結果は出てたのか。」
兄はどこか吹っ切れたような顔をしている。
逆にサナが泣きそうな顔で兄を見つめていた。
「あ、わ、わたし、……」
サナが何か言おうとしたところを兄が、サナの頭に手をやりクシャクシャっと撫でた。
「無理すんな。俺は……俺はバカだからな。3日もすれば忘れるさ。だからサナは普通に笑ってろ。」
兄はサナにそれだけ言うと、ダッシュで庭をあとにした。
すれ違いざま兄の目に光るものがあったのは……秘密だ。




