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一時帰国③

やっと王都の屋敷が見えてきた。

領地からここまでサナが大変だった。

何故か王都が近づくにつれサナが固まって動かなくなってしまったのだ。

いや、理由は明らかだよね〜。


緊張しているサナを見ていたら、私とアンジュさんも緊張してきてしまった。

もう気持ちは子を見守る親の心境だよ。

兄が何か馬鹿なことをしたら本当に何をするか分からないよ、私たち。



さあ、馬車が屋敷に着いた。

兄のことだからサナが着いたことを知ったら飛んで来そうだ。

まるで飼い主を待つ大型犬のように。


ただ予想に反して出迎えてくれたのはセバスチャンだった。

いや、セバスチャンが嫌なわけではないよ。

嫌なわけではないんだけど……なんか嫌な予感がする。


「セバスチャン……あの、お兄様は今日はお仕事なのかしら?」


セバスチャンは私の問いかけに静かに答えた。


「いえ、いらっしゃいます。ただ、その、今お客様のお相手をしております。」


お客様……か。

もしかして、もしかしなくても……お見合い相手なのかな?

私がセバスチャンに目で訴えかければ、セバスチャンはその通りとばかりに頷いた。


ふう、これはマズイでしょ。

サナには兄のお見合いのことを言っていない。

何だかとても言いづらかった。


「じゃあ、私たちは部屋で休ませてもらいましょう。お兄様のお客様がお帰りになったら知らせてちょうだい。さあ、サナ、アンジュさん、行きましょう。」


この時、兄がどこで見合い相手と会っているかを確認すれば良かった。

そうすれば……いや、遅かれ早かれこうなっていたのか。



私たちが部屋へ向かおうとしていたところ何か騒ぐ音が聞こえてきた。

サナが見てきます、と止める間もなく行ってしまった。

あ、なんかヤバイかも……。

私の直感がそう告げている。

急いでサナを追いかけて音のする方へと向かうと、中庭に出た。


私と、私の後についてきたアンジュさんが中庭に入った時、中庭にはブリザードが吹き荒れていた。

いや、たとえだけど。

でも、そんな雰囲気だった。



兄の腕にお見合い相手と思われる可愛らしいお嬢さんが張り付いている。

そして場所は庭…………。

あれ?なんか前にこれと同じ場面に出会っている。

って、レオン様に婚約破棄を言われた時だよ。

え、縁起でもない。


兄がサナを見つけてとても嬉しそうな顔をしている。

しかし兄とは正反対にサナは無表情だ。

こ、怖すぎる。


だけど兄はサナのその様子に気付かず果敢にも話しかけようとした。

腕にはお見合い相手をつけて。


「サ」


「リカルド様。」


兄の呼びかけをぶった切るようにサナが兄の名前を呼んだ。

呼ばれた兄は非常にニヤけている。

おい!この状況でその顔が出来るって何者なの!

兄の空気が読めないスキルがこんなにももどかしく感じたのは初めてだ。


サナは兄のそんな表情は一切視界に入れず、俯きながら兄に話しかけた。


「リカルド様…………話しとはこのことだったのですね。わざわざ一使用人にそのように報告などされずとも良いのに…………。おめでとうございます。これで旦那様と奥様は一安心ですね。私も心から祝福致します。では、お二人の邪魔になってしまいますので私は下がらせていただきます。」


サナはそう言うと一礼をしてからその場を疾風のように去った。

……………ああ〜〜〜〜。

あまりの速さにあっという間に見失ってしまった。

私とアンジュさんはお互いに顔を見合わせガックリと肩を落とした。


兄は……あ、固まっている。

その腕にはまだお見合い相手がひっついているけど。

兄に文句を言いたいどころだが、まずはサナのフォローだよ。

私がサナを探しに行こうとしたらアンジュさんが話しかけてきた。



「リリーナお姉様、私がサナさんを探します。大丈夫です、アレンやサスケにも手伝ってもらうので。それよりもリリーナお姉様はバ……いえ、リカルド様とお話しして下さい。たぶん自分が何をしてしまったのか分かっていらっしゃらないご様子ですので。」


そう言ってアンジュさんもサナのように風のように去っていった。

みんな動きが凄くなっているよね?

とりあえず、固まっている兄を何とかせねば。

私は兄の側に近づいていった。



兄のお見合い相手が不思議そうに私を見ている。

まあ、そうだよね。

私は兄に聞こえるように大きめの声で話しかけた。


「お兄様!いい加減にして下さい。」


私の言葉にお見合い相手が反応した。


「え?お兄様って……もしかしてリカルド様の妹様ですか?」


「申し遅れました。私、リカルドの妹のリリーナと申します。失礼ですがお兄様のお知り合いの方ですか?」


私の問いかけに


「あ、私はククール伯爵家のエリスと申します。私はリカルド様の……」


エリスさんが何か言おうとしたら兄が動き出した。


「うお!サ、サナはどこだ!」


言いたいことはそれだけか?

突然の兄の大声にエリスさんもビックリして兄の腕を離した。

兄はその隙を見逃さず叫び声をあげながらその場を去っていった。

……って、アレ?

もしかして私、エリスさんと2人っきりなの?

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